「祭」をテーマにした広告アイデア8選:NEW STANDARD クリエイティブレビュー

2026/09/19
ニュースタ!編集部

こちらは毎月、NEW STANDARDからその月のテーマに沿った広告・コミュニケーション事例を、弊社クリエイティブチームに所属するプランナーがそれぞれ2本ずつピックアップしてご紹介する企画です。業界の様々な事例から、課題を解決するアイデアや表現のヒントを届けることを目指しています。

8月のテーマは「祭」。

お祭りにまつわる様々な事例を、既存の価値に新しい意味を与える「意味的価値」という切り口からご紹介します。同じ「祭り」というモチーフでも、切り口次第でこれほど多様な打ち出し方ができるのか、という発見をお楽しみいただければと思います。

< 事例選出プランナー >

多木裕晶 / クリエイティブディレクター
BBDO JAPAN等を経て、2026年にNEW STANDARDに参画。定量調査やFGIを活用した戦略立案から、ビッグアイデア開発、キャンペーンデザインまでをトータルに手がける。主な受賞歴として、Spikes、ACC、effie、WARC等。

伏見和真 / クリエイティブディレクター
外資系広告代理店数社にてCDやADに従事。2026年6月、NSに参画。飲料/食品/車/エンタメなど多業種のブランディングやコミュニケーション開発を担当。マス広告からデジタル/アクティベーション/PR、PKGまで統合的なCR開発を得意とする。

原美涼 / アートディレクター
広告制作会社にてAD/デザイナーとして従事。2024年にNEW STANDARDに参画。食品/飲食/化粧品など様々な案件を手がけ、アートディレクションの経験を生かしたコミュニケーションプランニング業務を行う。 

竹本凜太郎 / クリエイティブプランナー
立教大学経済学部卒業。在学中より音楽コレクティブを主宰し、コロナ明けの東京における次世代テクノカルチャーの立ち上げやコミュニティ形成、イベントの企画・運営に従事。現場で培ったカルチャーインサイトやコミュニティデザインの知見を生かし、現在はクリエイティブプランナーとしてコミュニケーションプランニングを行う。

多木裕晶(クリエイティブディレクター)のピックアップ事例

01. La Fiesta(Save the Children)

事例概要:
メキシコでは12~17歳の子供31万3,000人以上が既婚または事実上の婚姻関係にあり、その76%が少女で平均で6歳以上年上の男性と婚姻しているという現実を背景に、Save the ChildrenとFCB Newlink Mexicoが制作した児童婚防止キャンペーン「La Fiesta(イツェルの宴)」。伝統的なフィエスタ(宴)の映像を使い、「あなたが宴の一員なら、罪の一員でもある」という強烈なインサイトで、福々しい雰囲気の裏に潜む黙認を段階的に暴いた。

(結婚式に参列することの)意味的価値:
罪に加担している一員として再定義。

プランナーコメント:
映像がかなり強烈。この問題はとても残酷なもので、周囲の呼びかけまでも促した点が大きな一歩なのかもしれない。結婚式という幸せなテーマと、本人の浮かない表情のギャップがなんとも言えない不気味な雰囲気を作っている。そして、彼女を取り巻くドレスメーカーや、メイクアップアーティスト等が映り、本来は彼女の幸せを最高潮にする役割を担うはずが、今回は罪の一員として描くというインパクトのあるアプローチ。

参照:https://lbbonline.com/news/FCB-Newlink-La-Fiesta-Five-Wins-at-Clio-Health

02. 岸和田だんじり祭×レッドブル(Red Bull)

©ONODE inc

事例概要:
300年以上の歴史を持ち企業協賛を一切受け入れてこなかった岸和田だんじり祭で、2022年にオマツリジャパンの仲介により史上初の企業コラボレーションを実現。重さ4トンのだんじりが街を疾走する『やりまわし』のエクストリームな迫力とレッドブルのブランドイメージを掛け合わせ、観覧エリア周辺への幟・提灯・デジタルサイネージ掲出に加え、だんじり×ヒップホップをテーマにした『Red Bull Street Jam』を開催。担い手や来場者へのサンプリング配布、ブース出店による販売施策も展開し、商品売上・取扱店増加と地域貢献を両立させた。

(命懸けの伝統祭りの)意味的価値:
最高に熱い、エクストリームスポーツとして再定義。

プランナーコメント:
歴史ある文化的なイベントは、企業スポンサードとの相性は、基本的にはあまり良くないのではないかと思う。文化は長期的に作り上げられてきたものであり、ビジネスは時に短期的な売り上げを求めなければならない事情もある。しかもRed Bullは外資系企業である為、さらにコラボレーションのハードルは高かったのではないだろうか。

ただ、Red Bullは「エストリームスポーツを応援」というブランドとしても非常に懐の深いポジションを取っているので、今回のような接続がしやすかったことと、それを(だんじり祭りとまではいかないが)ずっと、やり続けていた歴史があるのが大きい気がする。そして「冠」をつける形のブランドメインのスポンサードではなく、支える側としてある程度やりきっているところもスタンスとしては良いと感じた。日本にはお祭りや催し物が多いので、このような展開をするポテンシャルはまだまだありそうである。

©ONODE inc

参照:https://omatsurijapan.com/column/kishiwada-danjiri-case/

伏見和真(クリエイティブディレクター)のピックアップ事例

01. The Taste of Reunion(Cerveza Victoria)

事例概要:
メキシコのビールブランドVictoriaは、死者の日に合わせ、「生者と死者をつなぐ花」センパスチルを使った限定ビールを発売。「The Taste of Reunion」では、そのビールをきっかけに、亡くなった大切な人との“再会”を描くフィルムを制作。死者の日の伝統や食文化を丁寧に描きながら、センパスチルを単なる原料ではなく、大切な人との記憶やつながりを呼び戻す存在として商品体験へ落とし込んだ。

(ビールの)意味的価値:
大切な人との再会を味わうためのツールに再定義。

プランナーコメント:
文化的な意味を、そのまま商品の意味に変えているところが秀逸です。

「センパスチルを使った珍しいビール」で終わらせず、花が持つ「生者と死者をつなぐ」という意味から、“再会を味わうビール”という存在理由までつくっている。 商品開発とコミュニケーションが一つの意味でつながっている点が美しいと思う。

参照:https://www.ogilvy.com/work/taste-reunion

02. Monopol Official sponsor of Carnival’s color.(Monopol)

事例概要:
ボリビアの塗料ブランドMonopolは、国内最大の祝祭「カーニバル」に参加したいものの、大手ブランドのように高額なスポンサー枠を買うことができなかった。そこで、ステージやイベントではなく、祭りに欠かせない「色」そのもののスポンサーになるという発想へ転換。「Official Sponsor of Carnival’s Color」を掲げ、何千人もの人が行き交う黒いアスファルトを巨大なカラフルなキャンバスへ変え、ボリビア文化を祝った。広告を祭りに持ち込むのではなく、塗料ブランドだからこそできる方法で祭りそのものを彩った。

(スポンサーシップの)意味的価値:
単にお金を出すことじゃなく、色を出すことに。(それにより祭りそのものになった。)

プランナーコメント:
「何をスポンサードするか」をずらした視点が秀逸。お金をかけて目立つ場所を買うのではなく、自分たちのブランド資産である「色」と、カーニバルに不可欠な「色」を重ね合わせた。結果として、広告を出すブランドではなく、祭りを成立させる側に回っているのが非常に強いと思った。

参照:https://www.adsoftheworld.com/campaigns/monopol-official-sponsor-of-carnival-s-color

原美涼(アートディレクター)のピックアップ事例

01. Heidden in Plain Sight(Heineken)

事例概要:
酒類の屋外広告が厳しく規制され、配送トラックにも完全なブランドロゴを掲出できないマレーシアで、Heinekenが旧正月という最も盛り上がる祭りの時期に展開したキャンペーン。ブランド名の冒頭にある「Hei」が、広東語で「幸福」を意味し、旧正月の祝いの言葉にも多く使われることに着目。ロゴから「Hei」の部分だけを切り出し、11台の配送トラックに記された「Gong Hei Fatt Choi」などの挨拶の一部として配置した。法律上はブランド広告ではない一方、書体や色からHeinekenを想起できる“隠れた広告”として街を走行。広告費を使わず3,390万人にリーチし、前年の旧正月と比べて販売量も14%増加した。タイトルの「Heidden」も、「Hidden」の中に「Hei」を忍ばせた表現になっている。

(ブランドロゴを出さないことの)意味的価値:
単なる広告規制への対応ではなく、祭りの文化に溶け込むブランドの参加姿勢として再定義。(そして、ロゴに潜む「Hei」を祝いの言葉として具現化)

プランナーコメント:
ブランドが祭りに参加する際は、協賛ロゴや限定パッケージなど、外側から存在感を足す発想になりがちだが、この事例はブランド名の中に潜んでいた「Hei」を発見し、現地の祝いの言葉を完成させる役割を持たせている。祭りを広告の背景として借りるのではなく、ブランド自体を祭りの言語へ変換している点がおもしろい。さらに、規制によってロゴを削った結果、見る人が頭の中でHeinekenを補完する余白が生まれ、フルロゴを掲げる以上にブランドを意識させる表現になっている。広告規制への対応にとどまらず、文化への理解とブランド資産の強さを掛け合わせた参加の仕方だと感じた。

参照:https://www.dandad.org/work/d-ad-awards-archive/heidden-in-plain-sight

02. Project Jupiter(BMW China)

事例概要:
BMW Chinaが2024年の旧正月に展開したキャンペーン。中国では、自分の干支が巡ってくる「本命年」は不安定になりやすく、赤いものが厄を遠ざけるとされている。1916年の辰年に創業したBMWにとって、2024年は自らの本命年。そこで、4人のエンジニアと科学者が「赤は幸運をもたらす」という「Red Luck Theory」を導き出す14分間のモキュメンタリーを制作した。さらに本社や社員、販売店を赤く染め、赤い車の増産や装飾キットまで展開し、すべての人に幸運を広げる企業規模のアクションへと発展させた。

(赤をまとうことの)意味的価値:
単なる個人的な厄よけではなく、幸運と歓びを人々に広げる祝祭のアクションとして再定義。(「Red Luck Theory」として企業全体で具現化)

プランナーコメント:
旧正月広告では、赤や干支を商品に載せるだけになりがちだが、BMW自身を「辰年生まれ」と見立て、祭りの当事者にした点がおもしろい。さらに赤の厄よけを、エンジニアが導き出した「Red Luck Theory」という疑似科学に変換し、伝統をBMWらしい技術とイノベーションの文脈で語り直している。文化を表面的に借りるのではなく、敬意を持って本気で遊ぶ姿勢が、季節装飾を文化への参加に引き上げていると感じた。

参照:https://tbwa.com.cn/work/bmw-project-jupiter/

竹本凜太郎(クリエイティブプランナー)のピックアップ事例

01. Method Coachella Shower Surprise / Method

©︎Method(DESIGNRUSH)

事例概要:
音楽フェス「Coachella」で、シャワー待ちの長い行列に対する来場者のSNS投稿をMethodがリアルタイムで見つけ、その場へ駆けつけたサプライズ施策。一般チケットをVIPへアップグレードする券や、キャンプ場のシャワーを快適に使えるアップグレードを200個以上配布した。フェス会場で生まれた一人の不満を、その場でブランド体験へ変えたことで大きな話題となり、SNS上での拡散にもつながった。

(SNSの)意味的価値:
生活者の声に、その場で応える場所。

プランナーコメント:
SNSを「何が話題になっているかを見る場所」として使う企業は多いが、Methodは見つけた声に対してその日のうちに現場で返事を出している。その距離の近さが面白い。しかも舞台がCoachellaであるため、企業側が用意した企画を一方的に持ち込むのではなく、フェスの最中に実際に起きていた困りごとから企画が始まっている。祭りやフェスは人が集まる分だけ不便やハプニングも起きるが、Methodはそこをネガティブなものとして処理するのではなく、ブランドが参加できる瞬間として捉えている。SNSで反応するだけでなく、目の前に現れて本当に解決してくれる。その一連の行動自体が、単なる日用品メーカーに留まらないMethodらしさを伝える広告になっている。

参照:https://news.designrush.com/method-viral-coachella-activation-sparks-1351-percent-surge-in-impressions

02. 金麦 花火特等席キャンペーン / サントリー

事例概要:
10月に「発泡酒」から「ビール」へ切り替わる金麦を、発売前に全国8か所の花火大会で先行体験してもらうキャンペーン。計240組480名を「金麦花火特等席」に招待し、特等席で花火を眺めながら、新しくなった金麦とおつまみを楽しむ時間を提供した。新商品の登場を広告だけで告知するのではなく、夏祭りの高揚感や記憶と結びつけて体験させた。

(花火の)意味的価値:
新商品の価値を、記憶に残すきっかけ。

プランナーコメント:
金麦がビールになる。それだけでもニュースにはなるが、そこで「花火と一緒に飲んでもらう」という体験までつくっている点が秀逸。商品のおいしさは味だけで記憶されるわけではなく、誰といたか、どんな景色を見ていたか、その時どんな気分だったかにもかなり左右される。特に祭りは普段より少し気持ちが開いていて、記憶にも残りやすい時間。そこに新しい金麦との最初の出会いを置くことで、「新しくなった商品」という情報ではなく、「あの花火の時に飲んだ金麦」として残している。発売前の試飲イベントを商品の説明の場ではなく、思い出をつくる場にしている点が印象的。

参照:https://hanabi.walkerplus.com/topics/article/1400294/

「祭」をテーマにした広告アイデア:まとめ

いかがでしたでしょうか。同じ「祭り」というテーマの中でも、様々なアングルの事例があったかと思います。我々は、既存のものが本来持っていた意味を捉え直すことで、人の行動や社会の意思決定を動かすことができると考えています。

「伝える」のではなく「意味を変える」。それこそが、意味的価値の本質です。

来月もまた新しいテーマで、広告表現のヒントをお届けします。

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