買うものを決めるのはママ? 親子でお互いにレコメンド?「家族単位」のブランド設計の重要性を考える

2026/09/01
ニュースタ!編集部

新しいスニーカーが欲しい、あの化粧品を試してみたい――。
10代の子どもがそう口にしたとき、最終的に「どのブランドにするか」を決めているのは誰でしょうか。TikTokの動画、インフルエンサーのおすすめ、本人の直感……そんなふうに考えたくなりますが、データを見ると少し異なるようです。

米マーケティング専門メディア「Marketing Dive」の記事によると、HarrisXとAllison Worldwideが実施した調査で、α世代のティーン(13〜16歳)のブランド選好に最も強く影響しているのは、「母親(ママ)」だったそうです。さらに、影響は親からの一方通行ではありません。親もまた、子どもから強くブランドを “教わって” いるようです。家庭のなかで、ブランドをめぐる情報と決定が双方向に行き交っている様子が見えてきます。

「家庭内のマーケティング力学」とも呼べる現象を手がかりに、αZ世代のブランドとの向き合い方、そしてマーケティングがどう変わりつつあるのかを考えてみます。

影響力の中心が「母親」である背景

Marketing Diveで紹介されている調査によると、α世代のティーンがブランドを選ぶとき、その選好に最も影響を与えているのは母親(73%)で、父親(58%)がそれに続いています。私たちがつい思い描いてしまう「SNSやインフルエンサーが若者のブランド観をつくっている」というイメージよりもずっと身近で、生活に根ざした存在が中心にいます。

アメリカでの調査ですが、この世代が支持するブランドとして名前が挙がったのが、AmazonとNikeでした。日々の買い物に欠かせないプラットフォームと、世代を超えて愛されるスポーツブランド。家庭のなかで自然に触れられ、家族と共有される“定番ブランド”が、10代の選好の上位を占めている、という結果です。

子どもが親を動かす――影響はお互いに

さらに興味深いのは、影響が逆方向にも強く働いていることです。同記事によれば、調査に答えた親の91%が「子どもに好きなブランドを影響される」と回答したそうです。子どもは親から影響を受けるだけの存在ではなく、家庭の購買を動かす発信源にもなっていることが読み解けます。

・「Sephora」「e.l.f.」:同記事によると、これらのブランドでは、親の購入の約7割が“子ども起点”だそうです。10代が見つけてきたブランドを、親が家庭に取り込んでいく構図です。

・「Amazon」「Nike」:ティーンの選好トップに立つ2ブランドは、家族全体で共有される“共通言語”のような存在です。国内に置き換えても、世代をまたいで支持されることが家庭内での定着を後押しすることが読み解けます。

・母73% × 父58%:影響力は母親が中心ですが、父親も約60%と、その存在を無視できません。役割は違えど、両親ともに子どものブランド選びに関わっています。

これらを読み解いていくと、10代の子どもも家庭の購買を方向づける“マーケティング担当者”の1人のような役割を担い始めている、と捉えることができるのではないでしょうか。

なぜ、ブランドは「家族単位」で選ばれるのか

ではなぜ、ブランド選びがこれほど家庭のなかで双方レコメンドしあい、完結するカタチになっているのでしょうか。
2つの理由が考えられそうです。

ひとつは、情報の“入口”と“決定”が分かれているからだと捉えることができます。新しいブランドとの出会いは、SNSやYouTubeで生まれるかもしれません。けれど、それを「本当に買うかどうか」を後押しするのは母親であり、実際に財布を開くのは父親、というように、発見→推奨→決済のプロセスが家庭のなかで役割分担されていることが読み解けます。購買までのプロセスが、親から子どもへの一方向ではなく、家族というチームの共同作業になっているとも言えるでしょう。特に「発見」については、親子間の情報格差がどんどん少なくなってきていて、特定の領域については子どものほうが詳しい、なんてことも日常的です。

もうひとつは、信頼のありかの変化です。無数の情報が流れ込む時代だからこそ、最終的に人が寄り添えるのは、いちばん近くにいて自分をよく知る存在――つまり家族なのではないでしょうか。SNSが“発見”を担う一方で、“確からしさ”を担保するのは身近な人——この補完関係が、家族単位のブランド選びの土台になっていると捉えることもできます。

リサーチャーの視点:家族の共通言語になる「ブランド」とは

この調査から読み解けるのは「複数チャネル×家族内プロセス」という構図です。発見は各自SNS &情報交換→後押しは母→決済は父、のように購買プロセスのなかに多くの登場人物が関わっています。だとすれば、ひとりのターゲット像に向けて最適な一手を打つ、という発想そのものが効きにくくなっているのかもしれません。

家族間のプロセスのどこか一箇所でもスタックすれば、ブランドは家庭のなかに入っていくことが困難になります。逆に言えば、家族のコミュニケーションに自然に入り込めるブランドは選ばれやすい、とも言えるでしょう。

10代が親に共有したいストーリーやナラティブがあるか、母親が背中を押したくなる安心感があるか、父親が決済に踏み切る適正な価格帯になっているか——そして、家族が共有できる“共通言語”になれるか。問うべきは、個人の心をどう掴むかだけではなく、ひとつの家庭にどう溶け込むか――。ブランドの評価軸が、徐々にそちらへシフトし始めているのかもしれません。

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