Z世代のインサイトからマヨネーズの価値(イミ)を進化させ、未来の食文化を描く
背景
1925年に日本初のマヨネーズを発売して以来、キユーピーは「おいしさ・やさしさ・ユニークさ」を企業理念として掲げ、「愛は食卓にある」(食卓はただ食事をする場所ではなく、人と人との絆を感じる場所である)というメッセージを届け続けてきました。
一方で、時代とともに食習慣や価値観が多様化する中、本プロジェクトにおける若年層へのインタビューでは「カロリーへの配慮から喫食の量やタイミングを控える」といった声も一部で聞かれ、マヨネーズに対する認識のギャップが新たな課題として顕在化しました。
キユーピー マヨネーズ発売100周年という節目に私たちが目指したのは、“これからの100年も愛され続ける存在”としての価値(イミ)定義です。
What is NEW STANDARD?
1|“BDX”を活用したユーザー起点の新しい価値(イミ)創出
本プロジェクトは、「どうしたら、マヨネーズが“調味料”という枠組みを超えて、“愛すべき存在”へと発展し、未来につながる食文化をデザインできるだろうか」という問いからスタートしました。
この問いを解き明かすため、私たちはユーザーインサイトを起点にした価値開発メソッド「BDX」※1を活用し、デザイン思考の「創造的問題解決」と「意味のイノベーション」を融合させたプロセスを基盤に推進しました。また、ユーザー調査における調査手法や評価、検証、分析のプロセスでは、東京大学大学院工学系研究科 柳澤秀吉研究室との共同研究で開発した「インサイト発見マップ」・「メタパースペクティブ構造」・「覚醒ポテンシャル理論(ポテンシャル・コンパス調査)」を導入し、学術的なアプローチを取り入れながら複数回に渡ってターゲットユーザーとの対話を重ね、ユーザーインサイトへと迫りました。
※1「BDX(ブランドデジタルトランスフォーメーション)」:ユーザー起点の価値(イミ)開発メソッド
※2「POTENTIAL COMPASS(ポテンシャル・コンパス)」:コンセプトやデザインのポテンシャルを予測・検証する定性/定量調査サービス


OUTPUT|インサイト発見
・ユーザーインタビューの結果、「疲れたときや頑張ったときは、自分を癒すためにマヨネーズを楽しみたい(味わいたい)」「人前では“マヨラー”と見なされるのが恥ずかしい」「だけど本当は、堂々と“好き”と言いたい」といった、葛藤を孕むリアルな声が浮き彫りに。
・こうしたZ世代のインサイトを活かし、「マヨネーズを食べることは、自分らしさを取り戻す行為である」という、次世代の価値観にフィットするインサイトを特定。
2|新たな枠組みでの価値(イミ)定義
発見したインサイトを次世代に愛される価値へ転換させるため、「意味のイノベーション」と「新しい意味を生み出す理論」を用いてマヨネーズの価値(イミ)の更新を行いました。これは、事物に新しい文脈を付与することで、革新的な新しい価値(イミ)を創造する方法論です。

※意味のイノベーションとは、製品やサービスの意味を革新することで、ユーザーに新しい価値や感情を提供する方法論・手法。
OUTPUT|新しい価値(イミ)
・「マヨネーズ」という“事物”に、Z世代のインサイトから導き出した「個人のエンパワメント(欲望を解放させ本来の力を取り戻す)」という“新しい文脈”を掛け合わせ、次世代につながる価値転換を図った。
・マヨネーズ=「本来の力を取り戻し、笑顔と好きに溢れる食文化を実現するために、マヨネーズがもつ『前向きになれるエネルギーを提供』し、『どんな食生活も包容』することで、心と身体を満たし幸福な時間をもたらす」という新しい価値(イミ)を創出。100周年PJTにおいて、マヨネーズの存在意義と価値(イミ)を次世代向けに進化させた。


3|未来構想 “100年進化し続けるデザインシステム”策定
マヨネーズが「これからの100年も進化し続けるための基盤」として、独自の未来構想メソッドを構築。本システムは、未来の社会・食文化・倫理観などの変化を横断的に捉え、課題を抽出することから始まります。発散と収束を繰り返しながら課題と解決策を導き出す「ダブルダイヤモンド(創造的問題解決)」から着想を得て、100年のタイムスケールで価値を連鎖させる「発展・繁栄のフレーム」にすることで、進化の道筋を構造的に仮説立てる思考設計を実装しました。

OUTPUT|デザインシステム
・1919年から2125年までのマクロ環境(社会・産業・技術)や食文化、人々の感情の変化をリサーチし、「孤食の加速」「人間関係の希薄化」「感覚の鈍化」「テクノロジー依存」といった未来の課題を設定。
・時代ごとの課題に対応する解決策をデザインコンセプトとして打ち立て、「エンパワメント=本来の力を取り戻す存在」としてのマヨネーズのあり方を描き出した。
・マヨネーズが発展していくものとして位置づけ、100年後の価値創造までを視野に入れた持続可能な成長設計をプロトタイピング。

4|次世代コンセプトモデル プロトタイプ
100年後の食卓を想定した3方向の次世代コンセプトモデルを開発。
これらは機能や使いやすさだけではなく、未来の「人々の感情・社会課題・食文化」に対応するコンセプトであり、ユーザーインサイトから導いた“新しい文脈”と“新しい価値”に立脚しています。
OUTPUT|未来を見据えた3つのプロトタイプ開発
A|卵=命の象徴
卵を「命の象徴」として捉え、食材に対する感謝や倫理性を込めた造形。個性の異なる卵をモチーフに、サステナブルな素材の容器で“命の循環”を体現し、命や自然への感謝を育む機会を提供することで、個人の本来の力を取り戻すエンパワメントを促すコンセプトモデル。

B|未来の食卓アイコン
世帯構成の変化による孤食化が進むと考えられている未来においても、コーポレートメッセージ「愛は食卓にある」を継承していく意志を反映。多彩な嗜好性を受け入れ、愛情を分かち合う食卓を創出し続けることで、個人が本来の力を発揮できるエンパワメントを追求したコンセプトモデル。

C|キユーピーの思いやり
容器を「食材が遊びにくる家」と位置づけ、対話によってユーザーの感情と健康を支える設計。XRで可視化されるキユーピーちゃんが「食のパートナー」として接し、心に響くコミュニケーションを通じて人間らしい感覚や心身の健康を支えることで、個人のエンパワメントを後押しするコンセプトモデル。

以上3つの次世代コンセプトモデルは、NEW STANDARDと東京大学大学院工学系研究科 柳澤秀吉研究室との共同研究で開発した定性・定量調査手法「POTENTIAL COMPASS(ポテンシャル・コンパス)」を活用し、未来のコンセプトに対するポテンシャルを予測・ 検証しています。従来の「好意度」や「購入意向度」といった質問だけでは測ることが難しい、コンセプトやデザインが持つ潜在的な可能性を評価することで、中長期的な生活者の受容性を分析することが可能です。
▼詳しく見る
なぜ、既存の調査はイノベーションを見抜けないのか? ブランド戦略を成功に導く「コンセプトやデザインの評価手法」とは。
5|コンセプトムービー
次世代コンセプトモデル「未来の食卓アイコン」をコンセプトムービーとして映像化。コンセプトおよびデザイン開発の背景を踏襲して未来の食卓を想定したストーリーを展開しました。
ユーザーインタビューで得られた「マヨネーズは、自分らしい食習慣や気分を肯定してくれる存在であってほしい」というZ世代のリアルな声に寄り添い、「ありのままに食事を楽しむよろこびや、豊かさを感じてほしい」という想いを映像へと昇華。また、これらを体現するタグラインおよびステートメントも策定しました。
ずっと、うれしい。ずっと、おいしい。
ーパーソナルエンパワメント・フードカルチャーで笑顔と好きであふれる食文化をー

“次世代コンセプトモデル”や、“100年進化し続けるデザインシステム”、そして“コンセプトムービー”は、2025年に開催されたキユーピー社内向けの展示会で発表しました。

Points
1. ターゲットユーザーへのデプスインタビューを通したインサイト発見
Z世代を対象とした複数回のデプスインタビューとプロトタイピングを実施し、ユーザーの深層心理へアプローチ。「マヨネーズで疲れた自分を癒やしたい」「本当は堂々とマヨネーズを好きと言いたい」という葛藤を孕むリアルな声から、「マヨネーズを食べることは、自分らしさを取り戻す行為である」という次世代にフィットするインサイトを特定。
2. マヨネーズの新しい価値(イミ)創造、デザインシステム構築
「デザイン思考」と「意味のイノベーション」をベースとした「BDX」プロセスと、ミレニアルズ&Z世代のスペシャリストとしての当社の知見を掛け合わせ、マヨネーズが提供すべき新たな価値(イミ)を定義。未来を見据えた次世代コンセプトモデルをプロトタイピングすることで、進化の道筋を明確化。
3. 真の“共創”を支えるチームビルディング
ユーザー起点のプロジェクトにおいて不可欠となる強固なチームを構築。コンセプト開発の初期段階から、商品開発、マーケティング、研究、営業の各部門メンバーが参画。部門の垣根を越えた密な連携によって多彩なアイデアを創出し、ワンチームで総意を形成することで、真の意味での“共創”を実現。
What we do?
・How Might We(問いの策定)
・キユーピー マヨネーズの新しい価値(イミ)策定
・ユーザーデプスインタビュー(インサイト発見)
・100周年PJTにおけるキユーピー マヨネーズの価値設計 策定(BI)
・100年進化するためのデザインシステム(未来構想)
・次世代モデル コンセプト プロトタイプ
・次世代モデル プロダクトデザイン プロトタイプ
・ユーザーデプスインタビュー(ポテンシャル・コンパス調査)
・100周年 展示会用 タグライン・ステートメント / 動画 / プレゼンボード / コンセプトモデル立体モック
開発背景にある学術的な裏打ち
感性研究の第一人者 東京大学大学院工学系研究科 柳澤秀吉研究室との共同研究を通じて研究開発。
✓デザイン思考の「創造的問題解決」と「意味のイノベーション」を融合させたNSメソッドを基盤に推進。
L 文脈的意味解釈による「意味のイノベーション」実現のためのデザインプロセス。
✓NEW STANDARD社と東京大学大学院工学系研究科 柳澤秀吉研究室との共同研究により開発した「メタパースペクティブ構造」を活用したユーザーインタビュー複数回通じて、ユーザー起点での新しい価値を創出。
L 生活者やユーザーの認知構造からインサイトを発見するための「メタパースペクティブ構造」&「インサイト発見マップ」を活用したデプスインタビュー。
✓NEW STANDARD社と東京大学大学院工学系研究科 柳澤秀吉研究室との共同研究により開発した「覚醒ポテンシャル理論」をワークショップやデプスインタビューで実践。
L 柳澤秀吉教授が提唱する、自由エネルギー原理を用いた「覚醒ポテンシャル理論」を活用し、ワークショップ形式およびターゲットユーザーへのデプスインタビューでコンセプトとプロダクトデザインを評価。


