企業のブランドやプロダクト、サービスに対して従来とは異なる意味や解釈を与えることで、消費者や社会にとって「新しいスタンダード」となりえるものを提供する──。
わたしたちNEW STANDARDはそんな理念のもと、複雑化する社会のなかで真に「ユーザー起点」のプロダクト開発のあり方を模索してきました。その際に重要なのが、パートナー企業やクライアント、ユーザーと同じ目線に立ち「一緒に最適解を探る」ための姿勢です。
その一環として、NEW STANDARDは電通デジタルと提携し、新規ブランドの立ち上げや既存ブランドの再創造をワンストップで支援するサービス「ブランド デジタルトランスフォーメーション(以下、BDX)」を提供しています。
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広告/クリエイティブ業界におけるブランドのDXを実現するために、企業のブランドアイデンティティをユーザー起点で再定義する「BDX」をはじめとしたさまざまなソリューションにて、スタートアップであるNEW STANDARD、大企業である電通や電通デジタル、両者がもつケイパビリティを最大限発揮することで、クライアントに対する価値創出を目指しています。
そんな2社が関わるプロジェクトは、具体的にどのように進んでいるのでしょう。「BDX」の案件にともに取り組んだプロジェクトメンバーの電通・久保さん(ビジネスプロデューサー)、NEW STANDARDの松本(アカウントエグゼクティブ)、関根(ブランドデザインスペシャリスト)の言葉から見えてきたのは、「信頼構築」と「飛び道具」というそれぞれの強みを武器にした、新しい価値創出のあり方でした。
──電通とBDXを推進するNEW STANDARDとの協力関係について、今日は聞いていければと思っています。まず協業の経緯から教えてもらえますか?
久保: とある大手企業からミレニアル世代向けの新商品開発を依頼され、NEW STANDARDさんを上司から紹介して貰ったのがきっかけです。一般的に電通は、マス的なプロジェクトには強いのですが、若い世代に特化した攻略ということで、これまでのやり方に捉われないプロジェクトに出来ればなと思いました。ミレニアル世代やZ世代の顧客に耳を傾けた商品開発を得意とするNEW STANDARDさんと協業することで、顧客中心のBDXのアプローチと電通のこれまで培ってきた知見が混ざり合うと、良い化学反応が起こるのではないかと考えました 。
松本:NEW STANDARDとしてもこのような機会をいただけて、嬉しく思っています。電通は日本中すべての企業にアプローチできる実績とブランド力を持つ会社なので、その力を借りることで取引できる企業の幅が広がり、より大きな社会的インパクトを生み出せると思ったんです。
──電通とNEW STANDARDはそれぞれどのような役割を担っているのでしょうか?
久保:電通は主にプロジェクトの全体設計や管理を担当しました。プロジェクトの序盤で注力したのは「クライアントさんにいかにこれまでの広告代理店的ではないBDXのアプローチを理解してもらうか」です。これまでのやり方では、ついつい最初から「正解」を出そうという考え方に進みがちなのですが、今回ご一緒したBDXでは最初から正解にたどり着こうとするのではなく、ワークショップなどを重ねることでユーザーの中から正解を導き出します。クライアントさんにはこれまでの進め方との違いを、まずは理解してもらうことが必要でした。
松本:そうですね。アジャイル型でプロジェクトを進めるBDXでは、仮説の検証と再設定を繰り返します。仮説をスピーディーに立案検証できる一方で、アウトプットの具体像がプロジェクト終盤まで見えづらい傾向にあります。そのプロセスによって納品物が変わることもあり、クライアントさんにその進め方を受け入れてもらえるかが懸念でした。プロジェクトを進めてみると、久保さんの調整力やクライアントさんとの信頼関係の構築力が素晴らしく、安心してBDXを進められました。
久保:電通は歴史も長くやらせて頂いている会社なので、クライアントである企業様とのお付き合いも長く、クライアント内の事情やビジネスの構造、円滑なプロジェクト運営などの知見や経験が多く蓄積されています。そういった意味で、クライアントさんとのコミュニケーションでハレーションや誤解を与えないといった部分のケアは我々に任せてもらい、NEW STANDARDさんには「新たな価値の創出」に全力で集中して貰いながらに柔軟にプロジェクトを進めてもらえればと考えていました。
──BDXでは両者がそれまで培ってきた強みが活きているわけですね。
久保: 加えて、NEW STANDARDの皆さんには「飛び道具」になってもらいました。クライアントさんと電通の関係性をいい意味で壊してもらったような気がします。やはり広告代理店とクライアントさんとの関係には、どうしても発注者と受注者という側面もあります。しかし、BDXではクライアントさんも我々もチームメンバーの一員として商品開発の過程にフラットに参加させてもらいました。同じ目線に立ち、密に議論を交わしながらプロジェクトを進めることで、クライアントさんともより本音で話し合えましたし密な信頼関係が構築できたと思っています。
関根:クライアントからユーザーまでを巻き込む共創のアプローチは、NEW STANDARDの強みのひとつだと思います。チームの中で心理的安全性を担保するためのワークショップ設計などにも注力し、そのケイパビリティが最大化できるような仕組みを設計しています。
久保:共創に軸を置いたプロジェクトマネジメントという点でも大きく刺激を受けました。電通ではウォーターフォール型でプロジェクトを進めることがまだまだ多く、デザイナーであればデザインだけを担当するというプロジェクトも多いです。一方でBDXでは、デザイナーが商品企画の段階からプロジェクトに関わるなど、クリエイターが分野横断的に活躍します。チームメンバーが各役職の視点から精力的に議論を交わしている様子が印象的です。BDXを通じてクリエイターの創造性を最大限に発揮できていると感じました。
──プロジェクトを進める上で「もっとこうすればよかった!」と感じた部分はありますか?
関根:よりNEW STANDARDらしさを押し出し、「飛び道具」としての役割を果たせたらと思いました。デザインシンキングを応用したアプローチであるBDXは、従来のマーケティングのアプローチとプロセスが大きく異なります。協業を進める中で電通やクライアントさんのアプローチと衝突を起こさないか、不安なところもあったのが正直なところでした。
久保: 関根さんを不安にさせていたとすると僕の役割がイマイチだったということかもしれないですね(笑)。皆さんがより安心してプロジェクトを進められる環境づくりが今回の僕らの役割の一つだったので、反省します。
それと、逆のことを言っているように聞こえるかもしれないですが、もっと気を遣わずに、時に否定し合うような本気のディスカッションをたくさんしたかったな、とも思っています。「デザインのことだからアートディレクターである関根さんの意見が絶対」とせず、否定的な意見も含め、もっと思ったことを素直にぶつけてみる。ちゃんとお互いが「想い」をもって納得できるまで話し合うことでより強い信頼関係が構築されていくのかなと思います。
関根:たしかにひとつのチームとして動けているからこそ、今後はそうした議論もしていきたいですね。
──今後取り組みたいプロジェクトはありますでしょうか?
久保: 僭越ですが、広告業界全体にはまだまだ古い慣習が多くあるので我々自身のビジネス自体のDX化みたいなことも考えて行きたいなと思います。今回の協業を通じて、NEW STANDARDの分野横断的なアプローチやそれを実現する方法論に感銘を受けました。クライアントさんとの関係性づくりから、クリエイターの創造性の引き出し方まで、BDXの体系的な方法論を広告/クリエイティブ業界全体に適応できれば、ビジネスとクリエイティブの関係をより柔軟にできると思います。
松本:BDXのアプローチを用いることでクリエイターの一人ひとりがプロジェクト全体を俯瞰できます。受注・発注という関係性を超えて、プロジェクトのあらゆるフェーズでクリエイターが創造性を発揮できる。電通との協業を通じてケーススタディとなる事例を増やし、広告/クリエイティブ業界のニュースタンダードをつくっていけたらと思います。