編集者に聞いた17の質問

2021/07/21
ニュースタ!編集部

ニュースタ!編集部が、社内で働くメンバーを紹介していくコーナー。題して「YELLOW BOOK」。
今回は、編集者のラーちゃん。全社員の胃袋を掴む彼に17の質問をぶつけてみたよッ!

平野星良(通称:ラーちゃん)

編集者・料理人

作家の母をもち、国内外の来客で溢れる幼少期を過ごす。鍵っ子で、小学校入学と同時に自ら料理をつくり始める。自称、鉛筆より早く包丁を持った男。学生時代はアメフトと陶芸にのめりこむ。大学は美術専攻。イギリスと台湾への留学を経て、フリーランスの編集者に。マガジンハウスや小学館などで仕事をしながら、友人らと食のマガジン「saji」を創刊。また、祖父母の食欲減衰をきっかけに、老人食に興味を持ち、在宅介護の現場で冷蔵庫の中のもので料理を振るまう経験を重ねる。その後、NEW STANDARD株式会社へ。好きなものは、金魚の尾鰭、窓べに置いたコップにさす光、台所で過ごす時間、あとベリーショートの女の子。類稀なるチャーミングさもつ2児の父。

──NEW STANDARD社での仕事について教えてください。

「編集者として、メディア『TABI LABO』の記事を制作しています。食分野を中心に、編集部で毎月組んでいる特集企画や、クライアントワークの企画や制作など、多岐にわたるプロジェクトに携わっています。」


──さっそくですが、家の中にあるもので、あなたを構成する3つのモノの写真撮ってきてください。

「なかでも断然『らんちゅう』派です。和金型と違って琉金型の子たちは上から愛でて楽しむんですが、らんちゅうは背びれがなくてずんぐりむっくり。頭は肉瘤(にくりゅう)でボコボコ。ちょろちょろ泳ぐ姿がどれほど愛らしいことか。」

「植物なくして生活は成り立ちません。キッチンからリビング、お風呂、トイレ、玄関、庭先。目のつくところグリーンで満たして楽しんでいます。多肉もコーデックスもしましたが、最近ハマってるのがオーキッド。観葉植物と違って育てるのが難しい。そこがまたおもろいんですけどね。」

「海外に行くたびにCookbookを買い込んでいます。レシピはどうでもいいんだな。遠い国の食べたこともない料理を眺めては、食べた気になって楽しんでます。食材の組み合わせや色の使いかた、トッピング。参考になることがたくさん。」


──あなたにとって最も破られたくないルールは?

「一日三食、人生80年ちょいだとして、一生のうちに食べる食事の回数はせいぜい9万回くらい。とうにその半分は過ぎてしまいましたが、いつ何時でもちゃんと食べたい。自炊するとか、コンビニ食で済ませないっていうんじゃありません。誰と、何を、どう食べるか。そこが僕にとっては重要。言い訳のように聞こえるけど、真夜中のラーメンだってね。食は『人生譜』です。ちゃんと食べることは、僕のなかでちゃんと生きることそのもの。この『ちゃんと』ってのがムズカシイんだな。」


──これ聞くと『料理するのが楽しくなる』っていう一曲を教えてください

「ギター1本で弾き語るウォルター・ファーガソンのカリプソ。何言ってるかさっぱりわからないんだけど、よく聴くと英語なんだよね。ギターの弾きかたも英語も独学。いい加減なんだどそれがめちゃくちゃムーディーな旋律で心地よくて。料理もそのくらいがちょうどいい。手順だのグラム数なんてどうでもいいよね、っていう気持ちにさせてくれるのです。」

──よく観るインスタグラムアカウントは?

@rentarof

「植木鉢をはじめとした園芸グッズのブランド『TOKY』の公式アカウント。ここにたまに登場する遮光器土偶の形状をした陶器製の人形「ともだち」がどうしても欲しくてウォッチしまくっているんだけど、なかなか競合が多くて、発売されると秒で売り切れちゃう。」


──東京でオススメしたい料理屋を3つ教えてください

「家族」を意識させる3軒を選んでみました。

「幼なじみのお母さんが一人で切り盛りする小料理屋。8人も入ればいっぱいになるようなガード下の小汚い店なんだけど、物心ついたころからお世話になってるもう一人の母の味。」

「中国東北部の家庭料理の店。東京に暮らす東北部出身の人たちが家郷を懐かしんで大勢でやってくるような店で、大家(みんな)が一堂に介して同じ皿をつつき合う。とにかく大皿で安くて、日本人相手じゃない“現地してる”店。」

「カラブリアのマンマの味が楽しめるイタリアン。常連客はメニューも開かずに『今日は何がおいしい?』と声をかける。食材も調理法もその場で決めるんだよね。そうやって見ず知らずの隣の席に料理をおすそ分けしたりワインもらったりして。みんなが家族のようで、エリオさんの実家で食卓を囲んでいるようなノリが好き。」


──アップデートしたい概念は何ですか?

「社会的概念かと言われたら全然違うでしょうが、どうしても思うところがありまして。地球外生命体や未知との遭遇を追い求めるのもいいけれど、時空を越えて未来からやってきた『タイムマシン』って思う方がロマンチックだしよっぽど現実味がある。宇宙人は未来人である、という持論です。ついでに言えば、人の『欲』は未来よりも過去に遡ることを余計に欲するはず。変えられるかもしれない未来だって発起点はやっぱり『過去』ですし。」


──80名の料理を90分で作る。コロナの収束後、弊社の自炊ランチを再開したときに初めてリーダーを担う人に、一言アドバイスをするとしたら?

「飲食店の厨房経験でもないかぎり、10人前だって料理したことなんてないでしょ。みんな80っていう想像もつかない数に唖然とするんだけど、なんてことはないんです。4人前だったら作れるんだから。そう思えば気もラクになるってもんです。でも、それだけじゃありません。想像つかない量をいっぺんにつくるより、味のバランスも崩れない。」


──他人に言われたことで、一番心に残っていることは?

「フリーランスになるとき、業界の大先輩である母から言われた一言。フリーは仕事に忙殺されるようではいけない。自分から動かず待っていたんじゃ、フリーにチャンスはやってはこない。教訓です。で、もうひとつ。フリーは『お金』も自分でつくりだせなきゃダメだってこともね。」


──これだけは誰しもの舌をうねらせる自信がある、十八番料理は?

ドクダミ入りってのがポイントでして。インドシナ各国を旅して回っているとき各地で食べた生春巻きを再現しようと、いろんな香草を入れてつくりました。行き着いたのはドクダミのあの香り。熱帯モンスーンが爽やかに口内を駆けめぐりますよ。ちなみに、学生時代エスニック料理店のバイトで月に3000本近く生春巻きを巻きまくった時期があります。

──2児のパパとして、あなたならではの教育方針は?

「エーリッヒ・フロム『愛するということ』の文中に登場する言葉です。他人との関わり、人生観、もしかしたら生きる意味みたいなものの根元を説いているように僕には思えます。フロムのこの言葉を自分のフィルターに通して子どもたちに教えています。その甲斐あってステキな子たちです。」


──これまでに一番影響を受けた人は?

「娯楽映画『男はつらいよ』の主人公。実在する人物じゃないけれど、憧れの存在。テキ屋稼業で日本全国を気ままに旅し、毎度各地で出会ったマドンナに恋をする。義理人情にあつく、江戸っ子気質で、惚れっぽい。口は悪いが愛とユーモアにあふれ、家族のことを何よりも想っている。大事なことは理屈じゃないってことを寅さんからどれだけ教わったことか。」


──会社におけるあなたのポジションは?

「自炊ランチ、イベント、週末のキャンプ飯。食に関わるあらゆる相談がやってきます。フツーの料理を紹介してもオモロくないので、とびきりのエッセンスを添えて応えてあげる。それがいいか悪いかは別としてね。お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。」


──死にかたを選べるならどんな方法を選ぶ?

「『人生最期の食事に何食べる?』って質問があるけど、自分が食べるよりも最期も誰かのためにつくりたい。」


──TABI LABOの記事の中で「『料理』ってこれだから面白い!」ってオススメする記事を教えてください。

「手前味噌だけど自分が担当したこの記事。ロシアの3歳の女の子がお母さんの見よう見まねで料理を始めた。結構こなれてるんだけど、まるでまな板の上がサーカスの舞台のように、材料が飛んだり跳ねたりする。そんなことはお構いなし。レシピ通りいかなくたって、ちょっとくらいイビツでもいい。料理って楽しい!てことを彼女が教えてくれますよ。」


──一番影響を受けた本は?

「『どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人か言い当ててみせよう』っていう、食のバイブルにして人間の精神性を突いた名著。なのに何度読んでも頭に入ってこなくて苦労してたら、2,3年まえに玉村豊男の新訳が出てて、これがビックリするほど解釈しやすくなってました。人が同じ食卓を囲むことで人生の歓びを見出し、互いの距離が縮まっていく。『快楽』って身近なところにあるんですよね。」

──スマホで最後に撮った写真は何ですか?

「食事を撮ってインスタアップとかっていうんじゃないんです。オフィス(池尻大橋)近くのそば屋で人気の『スーラータンメン』なんですが、トッピングしてある黒い物体がなんだかわからず、同僚の編集者に『シソの葉の佃煮かな?』と聞いたら『キクラゲだよ』。え、キクラゲってカットする? 思わずパシャり。」



【編集後記(広報/MAYO)】
私が、この会社に入ってよかったと思う理由のひとつが、ラーちゃんの料理に出会えたことです。サクッと作ってくれる料理には、いつも驚きと感動がある。さらに、その一皿から繰り広げられる話が面白くて、どんどん世界が広がっていく。料理こそ、一番身近なメディアであるということを教えてもらいました。彼のおかげで料理の楽しさを知った社員は数知れず。どんなときも、率先して与えてくれる豊かな人です。よッ、チャーミングリーダー!
これからも、NEW STANDARD社のユニークな存在を紹介していきます。

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