MAHAとは?アメリカが回帰を目指す「Real Food」の道

2026/02/04
ニュースタ!編集部

今アメリカでは、「健康革命」を起こそうとする動きが活発です。その中心にあるのは、トランプ政権が最優先事項の一つとして掲げ、ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏が主導する「MAHA(Make America Healthy Again)」という提言です。

これはどうやら、個人のダイエットの推奨や一過性のSNSトレンドではなく、政治的スローガンとしてのMAGA(Make America Great Again)のように、アメリカ社会をより健康的な状態に戻すための、国家政策としての狙いが強いことが読み解けます。

つまり、国家のあり方を根底から変えようとする、いわば「食と健康のパラダイムシフト」だと言えるかもしれません。ホワイトハウスが発表したレポートを基に、その深層を読み解きます。

統計が示す「沈みゆく国家」の現状

「MAHA」が生まれた背景には、アメリカの子どもたちが直面している「慢性疾患の波」があります。レポートでは、世界最高のヘルスケア支出を誇りながらも、国民がますます不健康になっているという矛盾を浮き彫りにしています。

・加速する慢性疾患の連鎖:子供の40%以上が何らかの慢性疾患を抱え、糖尿病、肥満、非アルコール性脂肪肝が、若年齢層で急増しています。
・国家の防衛能力への影響:若者の約4分の3が健康上の理由(肥満やメンタルヘルスの問題)で軍への入隊資格を喪失しており、これが「国家安全保障の危機」として明文化されました。
・経済的損失:慢性疾患による生産性の低下と膨れ上がる医療費(Medicaidなど)は、アメリカの経済成長を圧迫し、持続不可能なレベルに達しています。

慢性疾患を招く、4つの構造的要因

さらにレポートでは、この危機を招いた要因を「運動不足」などで片付けるのではなく、環境と産業構造の複合的な問題として分析しています。

01. 超加工食品(UPF)と「失われた栄養」
現代の食品供給網は、日持ちやコストを優先するあまり、微量栄養素を削ぎ落とした「超加工食品」が拡張しています。
現代のアメリカにおいて、子どもたちが摂取する総カロリーの約70%は、添加物や糖分が極限まで配合された「超加工食品(UPF:Ultra-Processed Foods)」によって占められているとのこと。
こうした食生活が深刻な健康被害をもたらしており、とくに飲料やスナックに多用される高果糖液糖(HFCS=High-Fructose Corn Syrup)などの「精製糖」が代謝異常を誘発していると指摘 。レポートでは、この精製糖の過剰摂取こそが、現代における糖尿病パンデミックを引き起こしている主要な要因であると特定しています。

02. 環境化学物質の「累積負荷」
グリホサートなどの農薬、マイクロプラスチック、PFAS(永遠の化学物質)、そしてフッ化物など、日常生活のあらゆる場面で曝露する合成物質が、内分泌系を乱し、発達障害や自閉症スペクトラムの増加に寄与している可能性にも言及しています。

03. デジタル依存による「脳と体の乖離」
スマホやSNSの長時間利用が、睡眠の質を悪化させ、子どもたちから外遊びの機会を奪っています。これが身体的衰退だけでなく、若年層の孤独感や深刻なメンタルヘルス危機(うつ・不安障害)に関係していると分析。

04. 医療の過剰化(Overmedicalization)の功罪
レポートでは、症状を薬で抑え込むだけの「Sick-care(病気管理システム)」を批判的に捉えています。ADHD治療薬や抗うつ薬、抗生物質の過剰処方が、腸内フローラを破壊し、長期的な健康を阻害しているという視点を強調。

「コーポレート・キャプチャー」という病理

なかでもMAHAが強く問題視しているのは、科学と規制が「巨大産業の利益」によって歪められている現状です。

・規制当局の機能不全:FDA(食品医薬品局)の元幹部が製薬業界の重職に就くリボルビングドア(回転ドア)人事により、本来国民を守るべき機関が産業界の利益代弁者になっていると指摘。
・バイアスのかかった研究:アメリカの食事ガイドライン策定に関わる専門家の多くが、食品・製薬企業から資金提供を受けていたという事実を指摘し、科学的根拠の透明性を根本から問い直しています。
・補助金制度の歪み:穀物の大規模生産に偏った農業補助金が、結果として安価な不健康食品を量産させ、本来最も健康的であるべき「Real Food(本物の食べ物)」を割高にしている、という構造的問題を突いています。

MAHAが目指す新たな指針

MAHAの提言は、以下の3点に集約されるのではないでしょうか。

1:「何を食べるか」から「どう加工されたか」:ブラジル・サンパウロ大学の研究者らのNOVA分類を例に挙げ、加工度を基準とした新しい食品ガイドラインへの刷新。
2:農業と健康の再統合:小規模な農家を支援し、化学物質に頼らない再生農業(Regenerative Agriculture)を推進することで、質の高い栄養を国民に手頃な価格で提供。
3:学校給食からの改革:全脂乳(Whole Milk)の復活や、添加物・着色料の排除など、国の公的プログラムから「脱・超加工食品」を徹底する。

日本/日本食へのインパクトと、期待や警戒すべき点

MAHAが掲げる「本物の食べ物(Real Food)」への回帰は、日本市場に対してもポジティブ・ネガティブ両面の大きな変化をもたらすことが予想されます。

<ポジティブな側面:伝統的日本食への追い風>
MAHAレポートでは、日本の食事ガイドラインが伝統的な食文化に根ざし、中庸や多様性を重視していることを肯定的に引用しています 。
・価値の再発見:魚、発酵食品、未精製の穀物といった日本食の基本要素が、UPFを避けるための「世界標準の最適解」として再評価される可能性があります。
・輸出機会の拡大:添加物や農薬への規制がアメリカ内で厳格化されることは、厳密な品質管理を行う日本の農水産物にとって大きな輸出チャンスとなります。

<ネガティブな側面:供給網の再編とコスト高>
一方で、アメリカが「自国の農家が生み出すホールフード」を最優先する姿勢は、日本にとってリスクも孕んでいます 。
・輸入コストの上昇:アメリカがUPFの原料となる安価な穀物輸出を減らし、自国消費や高品質な農産物へシフトすれば、米国の食糧供給に依存する日本の食品産業はコスト増に直面します。
・外圧の懸念:以前、アメリカの食肉業界が食事ガイドラインの内容に圧力をかけたように 、MAHAの基準が新たな「非関税障壁」として、日本の加工食品に対して厳しい添加物規制を突きつけてくる可能性も否定できません。

リサーチャーの視点

これまで「個人の自由」や「自己責任」とされてきた健康に関するトピックが、外交などと同様に、アメリカという大国の「国家的生存戦略」の中心へと躍り出た印象を受けています。
MAHAが投げかけているのは、「便利で安価な工業的ライフスタイル」への決別とも言えますし、人間が進化の過程で慣れ親しんできた「自然な環境」を取り戻すための挑戦とも捉えることができます。
また、これはアメリカ一国の問題でもありません。伝統的な日本食という「本物の食べ物」の資産を持ちながらも、UPF(超加工食品)依存が進む日本にとって、MAHAは未来のヘルスケアやフードビジネスのあり方をアップデートさせる強力な指標ともなるでしょう。

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