ここ数年、解説記事やSNSでも目にする機会が増えている「ロンジェビティ(Longevity)」というキーワード。直訳すると「長寿」という意味ですが、富裕層やセレブたちが実践する最新科学に基づいたバイオハックなども注目される一方、「ロンジェビティ(Longevity)」という価値観自体は、MZ世代の間でも身近なライフハックとして溶け込みつつあるようです。
ただの長生きではない「ロンジェビティ」の意味
今のトレンドにおける「ロンジェビティ」は、ただ「寿命を延ばす」ことだけではありません。心身のパフォーマンスをいかに健やかに長く維持し続けるかという「健康寿命を伸ばす能動的なライフスタイル」を意味しています。
「アンチエイジング」が老化に抗うという守りの姿勢だったのに対し、「ロンジェビティ」は、より自分の健やかさを最大限に引き出す攻めの姿勢とも言えるかもしれません。それが一部の富裕層のものだけではなく、誰もがアクセスできるものであると認識されたのが現在地です。
ロンジェビティでは、ハイテクと伝統が融合する
では具体的にどのような現象が起きているのでしょうか。SNS上でも、以下のような投稿が増えているようです。
・東洋の知恵と現代科学の融合:
TikTokで盛り上がりを見せるトレンドの1つが、中国の伝統的な薬膳や養生、呼吸を意識した身体技法を現代的にアップデートしたスタイルです。「いいものはいい」と、ジャンルや国を超えてさまざまな方法がシェアされています。
・バイオハッキングの日常化:
スマートウォッチやスマートリングで心拍変動や睡眠の質を管理し、自身の健康を最適化するトレンドです。朝の冷水浴や光の調整で体内時計を整えるといった、科学的エビデンスに基づいたセルフケアを実践する人も増えているようです。
・キャリア・ロンジェビティへの投資:
キャリアへの向き合い方にも影響が出ており、数十年先を見据えながら複数の専門性を掛け合わせる働き方が主流になりつつあります。テクノロジーを使いこなし、年齢を重ねても価値を生み出し続けるために、「学び直し」をライフサイクルに組み込む必要性が高まっているのです。
・ロンジェビティ・レジデンスの登場:
ロンジェビティは、住空間の変化にも影響しています。空気清浄システムや昼夜のリズムを整える照明、瞑想スペースなどを装備し、住んでいるだけで健康を維持できるマンションなど、都市部の感度の高い人たちのあいだで注目されています。
ロンジェビティとセルフラブの関係とは
ロンジェビティのトレンドの根底からは、「最後に頼れるのは自分である」というインサイトも捉えることができます。
結婚や出産といった従来の「幸せのパッケージ」が絶対的な価値観ではなくなり、組織や国による保障も期待しにくい時代のなかで、自分の身体と時間は唯一無二の資産とも言えます。「長く生きることになるのなら、不自由な体で過ごすのはリスクが高い」という合理的な感情がロンジェビティにつながっているのではないでしょうか。
つまり、老後や将来の不安に備えて誰かのために身を削るのではなく、一生を心地よく完走するために自分を最高の状態に整える。ロンジェビティは、「最後まで自分らしく、自由で、機嫌よくあり続ける」ための究極のセルフラブとも言えるかもしれません。
リサーチャーの視点:健康維持は、よりクリエイティブな活動へ
従来の健康促進は、どこかストイックで、我慢が必要なものというイメージがありました。でもここ数年で主流となりつつある「ロンジェビティ」という価値観は、よりクリエイティブで、言ってしまえばもっと自分勝手でいいものという捉え方になってきました。最新の科学的なエビデンスも、古くから伝わる薬膳も、すべては「自分が心地よく生きていくため」のオプションです。
MZ世代が、20-30代のうちから健康意識やウェルビーイングな働き方を重視するのは、決して彼らが真面目すぎるからだけではないでしょう。それは「何歳になってもお気に入りの服を着て、好きな場所へ旅行をし、新しいことにワクワクできる自分でいたい」そんなピュアでワガママな願いを叶えるための価値観が「ロンジェビティ」に込められているのだと感じます。


