2026年の今、タイムラインには最新のAIトピックや不安定な世界情勢に関するニュースが溢れています。そんな中でふと目に飛び込んでくる「2016」というキーワード。
「2026 is the new 2016」
「back to #2016」「#2016vibes」
といったキーワードと共に、10年前のフィルターや10年前のヒット曲、そして10年前の「空気感」を求める動きが広がりつつあります。なぜ彼らは、今のように生成AIもなかったあの頃にこれほどまで魅了されるのでしょうか。
急速に「正解」が浸透する世界で渇望されるもの
2026年、私たちの生活は良くも悪くも “くまなくデザイン” されています。聴く曲も、着る服も、入るレストランも、会うべき人でさえ、AIによって強化されたアルゴリズムが「正解」を提示してくれます。そんなノイズのない日常は確かに快適ですが、一種の渇きが生まれているのも事実です。
最短の正解は得られるけれど、失敗が許されない空気は増している、と感じる人も多いでしょう。その反動として彼らが手を伸ばしたのが、まだSNSが遊び場で、どこか無邪気で、少しだけ雑だった2016年の空気感でした。
再生される2016年のアンセム
象徴的なのは、2015年にリリースされた大ヒット曲、Major Lazer & DJ Snakeの「Lean On (feat. MØ)」の再燃です。どこかエキゾチックなメロディラインに乗せて、当時のダンスを再現する投稿が増加しています。クリエイターのGabi Baileyも2016年のフィルターやファッションで、「あの頃のバイブス」を表現しています。
TOMORROW X TOGETHER(TXT)も、同じく2015年にリリースされたジャスティン・ビーバーの「Sorry」と共に2016年風フィルターで動画を投稿しており、日本のZ世代トレンドにも影響を与え始めています。
彩度をあえて高くフィルターにした写真や、あの時代ならではのEDM的な高揚感が溢れる音楽、Snapchatの犬フィルターを思い出す遊び心、など。そこには、まだSNSに窮屈さがなく、ただただ楽しんでいる雑多なエネルギーがあるのかもしれません。
ちょっとダサくて、ちょっとカッコいい「デジタル青春時代」
リバイバルにはスタイルの模倣という側面が大きいですが、今回は「精神的な避難」という意味も含まれているように感じます。2016年は、まだSNSが個人の日常を切り取る純粋なツールであり、今の社会のように分断や過度な自己演出が加速する手前の、いわば「デジタルにおける最後の青春時代」でした。コロナによるパンデミックにも突入する前です。
AIが日進月歩で進化し、効率化してしまう2026年において、当時の「だいぶ荒削りだけど、でも楽しかった」空気感は、何物にも代えがたい贅沢として映っているのかもしれません。正解を求めるだけではなく、その瞬間の高揚感に身を任せる「実感の回復」こそが、このトレンドの本質だと言えるのではないでしょうか。
リサーチャーの視点:正解よりも、自分の感情への正直さ
「Lean On」のコメント欄で多くの共感を集めている「after school, summer, listening to this. no worries, no pressure, no certain viruses outside. just enjoying the song」というコメント。
2026年の私たちは、あまりにもスマートになりすぎたのかもしれません。「Lean On」のイントロが流れた瞬間に広がる無根拠なワクワク感は、私たちが本来持っている「ただ楽しい」という感覚を思い出させてくれます。
いかに自分の感情に正直になれるか。
2016年のリバイバルは、そんな「Great Cultural Reset」へのプロローグなのかもしれません。

