来春にD2C事業の立ち上げを予定しているNEW STANDARDでは、2019年7月にD2C視察ツアーを実施。ニューヨーク、サンフランシスコ、ロスアンジェルス、シリコンバレーをまわってきました。Glossier、Away、Showfields、Everlane、Allbirdsなどの注目ブランド/リテールのほか、現地のウェルネス/ウェルビーイング系のプロダクトを扱う店舗も訪れています。その現地レポートと、視察を通じて代表の久志が感じたことをお届けます。
アフターインターネットの時代に最も重要なのは、CX(顧客体験)だ
久志:2011年、Netscapeを開発したことでも知られる投資家のマーク・アンドリーセンは「Software is eating the world」と言いました。ハードウェアからソフトウェア産業に主戦場が移り、それが徐々にリアル社会を飲み込んでいくと。今ではその状況を「アフターデジタル」と呼んだり、雑誌『WIRED』では「ミラーワールド」という特集が組まれたりと、インターネットがリアル社会を飲み込みつつあります。
その筆頭がUberやAirbnbなどのシェアリングサービスであり、D2Cなどの新興ブランドの店舗です。Uberはアプリひとつで都市のなかで人と車両の動きを再編しました。店舗をもたずにデリバリーのみでサービスを提供するゴーストレストランも、この顕著な事例でしょう。
インターネットによるリアル社会のリ・デザインを前提としてD2Cブランドを考えたいと思います。D2Cブランドの店舗を訪れるなかで感じたのは、どんなCX(顧客体験)を提供したいかが最も重要になるということ。例えば、ニューヨークにあるミレニアル世代向けのD2C製品が集まるShowfieldsは「没入型シアター方式」とも呼ばれています。そこでは、店舗はモノを売る場所ではなくなり、販売員はディズニーランドにおけるキャストのような存在になっています。
D2Cブランドの特徴のひとつに、製造がコモディティ化し、販売や顧客との接点が最も重要になっている点が挙げられます。これまでの製造業はモノづくりに始まり、最後に販売やマーケティングを行なう方式でした。しかしD2Cブランドではそれが逆転し、注力しているのはマーケティングやクリエイティブを通じた体験価値なんですね。つまり「なにが本当に欲しいのか?」というユーザーのインサイトやニーズから出発し、どのような体験価値を提供したいのかを考えた上で、最後に製造を行っています。ユーザーがCXそのものを商品と捉えている今、あらゆる接点でCXコンセプトを体現した体験を提供する「CX=商品」とした考え方へ移行する必要があります。そのCXは、AmazonGOのように人が介在しないことで利便性を高めるという価値もあれば、Glossierのように店舗に並ぶことですらコンテンツになる体験もあります。
そういったD2Cブランドは単に「イケてるスモールブランド」ではなく、ハイブランドやマスプロダクトを置き換えていく可能性も秘めていると感じました。インターネットとファイナンス、そしてクリエイティブの力が長い間かけて築き上げてきたブランドにどう立ち並んでいくのかワクワクしっぱなしだった視察ツアーでした。旅での学びを糧に、NEW STANDARD社ではD2C事業の立ち上げ真っ最中です。今後の詳細はコーポレートサイトの「NEWS」や「ニュースタ!」に掲載していく予定です。お楽しみに。
[訪問先店舗リスト] ※一部抜粋
・Allbirds(スニーカー)
・AWAY(スーツケース)
・Bonobos(メンズアパレル)
・Glossier(コスメ)
・Cuyana(アパレル)
・Everlane(アパレル)
・Leesa(マットレス)
・Casper(マットレス)
・Stance(ソックス)
・Peloton(フィットネスバイク)
・Taylor Stitch(アパレル)
・Ritual(サプリメント)
・Warby Parker(アイウエア)
・Showfields(没入型シアター方式店舗)