5月下旬。NEW STANDARD代表取締役で、東京大学大学院工学系共同研究員を務める私、久志尚太郎は、デザインの国際カンファレンス「DESIGN2024」に初参加し、現在進めている研究内容について発表してきました。
友人たちに私が研究に取り組んでいることを話すと大概びっくりされるのですが、我々NEW STANDARD株式会社は2023年4月より東京大学と共同研究契約を結び、私自身も研究者として、平日の朝や土日は研究活動に没頭する日々を送っています。
「このままでは起業家として通用しない、楽しめない」
周りからは「なぜ研究者に?」とよく聞かれるのですが、私は2018年頃、起業家としての強烈な危機感や課題感を抱いていました。それは、学術研究を実践していたり、アカデミア発の技術シーズへの理解がなければ、今後起業家として通用しなくなるのではないか、と考えていたからです。
とはいえ右も左もわからないので、コロナ禍の経営の傍ら、研究者になるためにイギリスの大学院にオンラインで通ったり、周囲の研究者に相談に乗ってもらったり、とにかく先行研究を読み漁ったり、実務を通じて実証を繰り返したりしながら、悶々とした日々を過ごしていました。
そのなかで、我々NEW STANDARDは2023年に電通ベンチャーズ、Sony Innovation Fund、TOPPAN(旧:凸版印刷)、京都芸術大学 Art & Biz ファンドから出資を受け業務提携を結んだわけですが、ソニーの担当者である松島弘さんや杉上雄紀さんのご紹介で、現在の共同研究者として日々二人三脚でやりとりさせていただいている東京大学の柳澤秀吉先生と出会うこととなります。NEW STANDARDの業務領域であり私の研究領域でもある「デザイン思考」や「意味のイノベーション」に関する実務や研究内容を「非常に面白い」と評価いただいたことが共同研究が始まったきっかけでした。
当時私は博士課程のための担当教授を探していたのですが、NEW STANDARDで取り組んでいる内容がそのまま研究対象だったので、柳澤先生と協議の上、博士課程ではなく共同研究という形で研究を進めることになりました。もちろん私は研究者の前に経営者なので、研究を当社のビジネスの発展に直結させることを責務として取り組む必要があります。「共同研究という当時の選択は正しかった」と、いま振り返っても思える成果が実業でも研究でも少しづつ花開いているのは、本当に嬉しいかぎりです。
今後のさらなる発展可能性を見出せた「DESIGN2024」への参加
さて、今回私が参加した「DESIGN2024」は、デザインや工学などを中心に、最先端の研究理論や成果を探求する国際会議で、2024年の5月下旬に開催されました。
主催者である「Design Society」はイギリスに拠点を持ち、デザインに関する学術的研究と実践を推進する、国際的なデザイン学会です。Design Societyは、工学、美学、人間工学、心理学、社会学など、デザインに関連する多様な分野からのアプローチを統合し、研究者や専門家が知識を共有し、議論するためのプラットフォームを提供しています。
2年に一度開催される国際会議「DESIGN」は、そのレベルの高い発表内容はもちろんのこと、世界各国から研究者や実践者が一堂に会し、幅広い交流ができることも魅力のひとつです。参加者たちはデザインの最先端に触れ、最新の研究成果や実践例に基づくセッションやディベートを通じて新たな知見を深めることができるのです。
我々NEW STANDARDと東京大学柳澤先生との共同研究の内容は「Innovation of meaning: Design-driven study based on the interpretive theory of new meaning」。
本研究には、デザイン実務とデザイン研究を行き来する研究方法が用いられ、NEW STANDARDの実務がそのまま研究対象になっています。おかげさまで発表を聞いてくださったデザインやデザイン思考に関わる研究者からの評価は非常に高く、改めて我々の理論や方法論に大きな自信を持つことができました。
また国際会議で発表したことで、改めて日本人としての強みを自覚でき、今後さらに独自の理論としての発展可能性を見いだせたことも今回の大きな収穫でした。
今回発表した理論や方法論をベースにクライアント様へソリューションなどを提供しているのですが、それだけにとどまらず、AIツール開発などにも研究を活かしています。今回のDESIGN2024でも、デザインとAIやジェネレーティブAIに関する研究も多く、改めて今後ますます注目される分野だと感じました。この分野でも、NEW STANDARDの取り組みはかなり先進的で面白い取り組みをしている、と確認できたことも大きな収穫でした。
クロアチアで開催された4日間のカンファレンス
「DESIGN2024」は、クロアチアのドブロクニクという街で開催されました。アドレア海の真珠と呼ばれ、映画『魔女の宅急便』の舞台とも噂されるヨーロッパの美しい古都です。海沿いのリゾートホテルがその会場となっていて、ゆったりとした時間の流れとは裏腹に、驚くほどの数の発表が4日間かけて行われました。
正直、途中途中で日本とのWEBミーティングを挟むこともあり、私自身は国際会議だけに集中することはできなかったのですが、写真を通じて、その空気感をみなさんと少しでも共有できたら幸いです。
2024年は、11月に台湾で開催される感性工学会の国際会議「KEER2024」でも、NEW STANDARDの実務をベースとした研究内容を発表予定です。今後も当社クライアント様のビジネスに貢献すべく、研究や実務に尽力していきたいと思います。
今後も我々の研究内容は、メディアや書籍を通じてみなさんにお届けしていく予定ですので、ぜひ楽しみにしていてください。
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