イミ消費——。
モノ消費、コト消費とつづき、現在の消費価値観を表すコトバとして定着してきたこのキーワード。イミ消費は、2018年頃からホットペッパーグルメ外食総研エヴァンジェリストの竹田クニ氏が提唱した考え方で、商品やサービスの持つ「社会的な価値や文化的な価値を重視した消費行動」だと言われてきました。
ちょうどサステナビリティやSDG’s、エシカルといった言葉への注目が増していた時代背景もあり「イミ消費≒環境保護やフェアネスな消費」と捉えている人も多いのではないでしょうか。もちろん「イミ消費」を捉える上でそれらの側面がひとつのファクターではあるものの、パンデミックを経験し、VUCAと呼ばれる不確実性の高い時代を生きる私たちにとって「イミ消費」はさらに多様化、そして細分化しているように感じます。
ここでは、今後「イミ消費」をどのように捉えていくべきなのか、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。
「◯◯消費」の変遷
まずは、「◯◯消費」という言葉の変遷を大まかに振り返りましょう。
1970〜80年代に浸透した「モノ消費」ですが、その言葉の通り「モノ」に重きを置いた消費行動です。テレビや家電、クルマといった新しいモノや珍しいモノが価値基準になっているのが特徴です。モノ消費からの派生系として、よりブランドやデザインにこだわる「記号消費」という言葉も生まれました。そこには自己の欲求を “記号” で満たしているという傾向が読み解けます。
1990年代以降になると「コト消費」が台頭します。モノ消費との対比として、旅やグルメ、アクティビティなど、より“体験” に関わる消費がクローズアップされるようになりました。それまでの「所有」を求める価値観から、自己の「充足感や経験」が重視されるようになったのです。
そして2000年代に入り、現在の価値観にも繋がる「イミ消費」の時代へ入ります。モノを買う場合も、コトを体験する場合も、いずれもその背景から汲み取れる環境保全や地域貢献、フェアネス(公平性)、健康など「消費を通じて自分自身がどうありたいか」を指標とする傾向が強まったのです。
そこに至るまでの社会状況を振り返ると、東日本大震災(2011年)、SDG’sの潮流(2015年)、コロナによるパンデミック(2019年〜2020年)があり、多くの人にとって価値観がドラスティックに変化するのも当然でした。徐々に「自分のお金を使うからには、ちゃんと意味(イミ)があるものに」というコンテクストが醸成されていったのです。もちろん、景気の落ち込みも影響を及ぼしたことでしょう。その中心にいたのが、ミレニアルズやZ世代といった若年層です。
細分化し続ける、イミ消費
上記が一般的に捉えられているイミ消費までの大きな流れである一方、さまざまに多様化・細分化している側面も一部紹介します。
身近なところで言うと「レンタル、シェア、サブスクリプション」などは、一見モノ消費に見えるコト消費だと言われており、かつ「脱・所有」というイミ消費的な側面も併せ持っています。
また、2000年代以降を「トキ消費」や「ヒト消費」と定義する声もあります。「トキ消費」は、コトの消費だけに止まらず、その場その時でないと消費できないライブ感や非再現性、参加性、貢献性などを重視する消費傾向のことです。
一方「ヒト消費」はインフルエンサーやYouYuberなど「ヒト」を起点にした消費行動のこと。推し活などもその一環と言えるでしょう。それらは「応援消費/推し消費/物語消費」などと表現されることもあり、具体的にはクラファン(クラウドファンディング)やスパチャなどの投げ銭がイメージしやすいのではないでしょうか。
さらに、ここ数年で聞かれたものを加えると「エモ消費」「チル消費」「デトックス消費」「バズ消費」「ネタバレ消費」「ウェーブ消費」など、ミレニアルズやZ世代の価値観やモーメントを起点に、さまざまなキーワードと結びついていることが分かります。
イミ消費は、よりパーソナルへ
2018年の提唱当初は社会正義やソーシャルイシューとしての「イミ」を軸に捉えられてきた「イミ消費」ですが、振り返ってみるとパンデミックをきっかけに急速に「自分にとっての本当の心地よさとは何か」や「自分の人生や日々のパフォーマンスに繋がるものは何か」といったように、自己と向き合うパーソナルな側面が強くなっていきました。
それは、従来の消費と比べると、“自己投資”の意味合いが強いのかもしれません。
環境問題やセルフケア、フェアネスなど、いずれも「自分が大事にしたいもの」への投資的価値観だと言えますし、クラファンや推し活、投げ銭なども消費というより投資的価値観だと言えるのではないでしょうか。
このように細分化され、多様化した「イミ」を正しく捉えることはさらに難易度を増していくことでしょう。
イミ消費時代のKSFとは
「イミ消費」は、 個々の価値観やプライオリティが消費傾向に表れるようになった結果、スモールマス化を遂げます。分かりやすくコミュニティとして存在しているものもあれば、本人たちですら自覚なく緩く価値観を共有しているトライブもあるでしょう。
つまり、ひとことで「イミ消費」と言っても、その意味はユーザーごとによって微細に異なり、インサイトを正しく捉える必要性が増しているのです。
上記は、NEW STANDARDが捉える「イミ消費」に含まれる主な消費傾向をまとめたものです(2024年1月現在)。
今後さらに新しいキーワードと紐づく消費が増えるはずですし、そのときユーザーには「どんなインサイトがあるのか」を筋よく発見することが求められてきます。
NEW STANDARDでは、独自の「インサイト発見インタビュー」メソッドを活用し、ミレニアルズやZ世代の潜在的な欲求やニーズを捉え、ビジネスやブランドの変革をサポートします。詳しくは下記よりご連絡ください。