NEW STANDARD社、ビジュアルアイデンティティ刷新のプロセス公開

2019/10/23
ニュースタ!編集部

2019年8月1日、NEW STANDARDは株式会社TABILABOから正式に社名を変更。コーポレートリブランディングの全貌を公開しています。連載を締めくくる第四弾では、VI(Visual Identity:視覚)が生まれたプロセスを解説します。
今回は、代表の久志尚太郎、創業初期のTABI LABOに参画したデザインチームの白鳥、柴田、VI策定のプロセス設計に携わったD4Vの高橋 亮さんにその全貌を語ってもらいました。

VIとは一般的に、「存在」を認知・区別・記憶させるものです。そして次の役割を持っています。
・ 第1印象を形成し、ブランドを認識しやすくする
・ ブランド連想を記憶に定着させる
・ ブランドに対する愛着を創り出す

私たちは今回のVI策定において、ロゴマーク、グラフィックエレメント、カラーパレット、使用フォント、そしてそれらのデザインシステムまでを定めることにしました。
まず、NEW STANDARD社の新しいVIを紹介させてください。

ロゴタイプの文字が一部隠れている部分は「まだ見ぬ世界」があることを表現し、社会の可能性と力強さを示そうとしています。

「この世界は、もっと広いはずだ。」というステートメントを体現したグラフィックエレメント。広がり続ける世界を表現した有機的なデザインは、NEW STANDARDの普遍的でユニークな価値観・世界観を体現しています。

熱狂の火種は多様な価値観や仲間の数だけ無限にあると考えています。ローンチ時は個性豊かでビビッドな4種のカラーパレットを採用。イメージを決めすぎずに、拡がり続ける印象を与える色の組み合わせを検討しました。
今後、目的に応じてカラーパレットを増やすことができる拡張性のあるデザインシステムを採用しています。

非言語だからこそ
ロジカルなプロセスを

今回のコーポレートリブランディングプロジェクトは、自分たちの手でアイデンティティを創りあげるために、自社のチームで実施しました。
「CI(Corprate Identity)=MI(Mind Identity:理念)+BI(Behavior Identity:行動)+VI(Visual Identity:視覚)」と定義した上で、MI、BI、VIを連動させ、統一されたアイデンティティを創る──。それは決して簡単なことではありませんでしたが、プロジェクトに残された期間はたった3ヶ月。その期日内でリブランディングを完遂するためには、チーム内での徹底した議論と認識の共有が鍵となりました。

とりわけ非言語のコミュニケーションを担うVIにおいては、抽象化と具体化を往き来しながら言語化しずらいデザイナーの制作プロセスを共有し、感覚で判断するのではなくロジカルな議論に導く場やプロセスの設計が重要でした。

VI策定プロジェクトにおいて特に重要だった次の4点を、プロセスに沿って解説していきます。

◼️ プロジェクトメンバーの共通理解の醸成
◼️ 既成概念を超えたデザインコンセプトの設定・デザインシステムの実装
◼️ VI策定の議論を導くプロセスデザイン
◼️ 創業当初からいるデザインチームが手掛けること

まずは、
「入り口」をデザインする

本プロジェクトは、自社チームで行なったとはいえ、経営・コーポレート・広報PR・デザインのバックグラウンドが異なるチームで構成されていたため、最初は共通言語が存在しませんでした。なので、相互理解の上で建設的な議論を行うことが難しい状況でした。

ビジュアルに落とす際の認識の齟齬がおこらぬように、白鳥と柴田はVI策定を始める前から共通理解を丁寧に醸成していきます。非言語のものを創るからこそ、言語化して共有することを意識して次の4つを行いました。

① MI策定からデザイナーが参加し、議論を共有する
② メンバーに「VIは社会にとってどうあるべきか」をプレゼンテーション
③ 代表の久志に「100の質問」をぶつけ、会社の向かうべき先を理解する
④ ムードボード(アイデアやイメージを切り貼りしたもの)を作成し、具体と抽象を行き来しながら、ビジュアル情報を言語化する

代表の久志に訪ねた「100個の質問」から一部抜粋


白鳥:プロセスのなかで重要だったのが、代表の久志への「100個の質問」でした。久志が考えている会社の新しいビジョンを理解するべく、リブランディングに関わるメンバーが質問を書き出して、その一つひとつに久志が回答するというMTGを行ったんです。そのMTGを経て、久志ひとりが見ていた遠いビジョンに対して、共通の理解が生まれていったと思います。

会社の価値観を体現する
デザインコンセプト

VI策定は、MI(Mind Identity:理念)からデザインコンセプトを導き出すところから始まりました。

ステートメントに基づき、ムードボードを作成。
ムードボードに集めたグラフィックを分類・構造化し、想起される言葉を抽出する。これを繰り返し、核になる考え方の検証しました。

ムードボードの中から一部抜粋

その結果生まれたのが、「EXPANDING=拡がり続ける」というデザインコンセプトでした。

MIに含まれる要素を抽出して優先度を比べるのではなく、ビジュアル自体が「この世界は、もっと広いはずだ。」というMIの有様をそのまま体現する──既成概念を超えたデザインコンセプトを設計しました。

久志:検証の過程でMIに記述されている言葉の一部をもとにしたキーワードが抽出されていたのですが、あまりしっくりこなかったんです。たとえば、焚き火や煙、熱狂の火種といった言葉です。確かに大事な要素だけれど一部でしかない。しかし、最終的にEXPANDINGが提示されたときはすぐに良いと思いました。なぜなら、拡張し続けるというのは、NEW STANDARDが新しく掲げる価値観そのものを表現しているからです。

感覚的に判断させない
議論を導くプロセスデザイン

次に行ったのは、ビジュアルの構築でした。
コンセプトをビジュアルとして具現化した4方向10案のロゴマークと、それが社会に出たときに想定されるタッチポイントに展開したデザイン案を壁一面に配置し会議室をギャラリー化。プロジェクトメンバーによる初見での投票を行ない、議論を実施しました。

ビジュアルは感覚的に判断しがちで、好みが分かれやすいもの。それをロジカルに議論するためには、導線や場所、プロセスの設計が欠かせませんでした。

白鳥:つくるよりも決定するプロセスが難しかったですね。人間には好みがあるから、好みの判別ではなく、いかにフラットに自分たちの会社にふさわしいビジュアルを決められるかを考えました。そのための場の設計として、会議室に入った時は誰とも喋らずに投票するとか、ロゴ単体ではなく、それが他の企業のロゴと並んだときなどの社会に出たときにどう見えるか検証しやすい導線を用意しました。

白鳥:コンセプトに基づき4つの方向性を出しましたが、議論で重要だったのは「どの案がいいと思ったか」ではありません。「EXPANDING=拡がり続ける」というコンセプトを、どの抽象度で伝えるべきかという観点から議論を行なうことでした。フレームで切り取る<方向性B>は静的で限定的な印象を与え、世界が拡がり続けるという概念を伝えるには適していないと判断し、このタイミングで不採用にすることにしました。

次に、残った3つの方向性の中で1案ずつに絞った計3案のブラッシュアップを行い、より業務の日常のタッチポイントであるコーポレートサイトや名刺などに落とし込み議論を行ないました。その場の設計で意識したことを、高橋さんは次のように話します。

高橋:ブランディングには2つの重要な観点があると考えています。直感的な第一印象と、その後の知ることで好きになっていく印象です。両方を検証するために、初見で良いと思うかどうか、UXのさまざまなタッチポイントのなかでどのような印象を与えるのか、という2つを検証する導線を用意し議論できたのが良かったと思っていますね。

最終的に<方向性A>に決まり、微調整を行ないました。特にロゴタイプの見え方は細部の細部まで検証しています。具体的な案に至るまでに重要だったのは、ロジカルなプロセスを積み重ねることでした。

久志:僕は最初に提示された12案を見たとき、現行のデザインが最も良いと直感的に感じました。なぜなら、EXPANDINGの解釈と可能性を感じたからです。しかし、それを言語化し、あらゆるものを検証し、ロジカルなプロセスを経て結果的に今のデザイン案にたどり着いたのが良かったと思っています。そのプロセスを経たからこそ、VIが自分たちのアイデンティティになっていきました。CIにおいては、MI、BI、VIが三位一体なのだから、単にかっこいいもの、目立つものではなく、コーポレート・アイデンティティたりうるかが最も重要だったわけです。そのなかでの位置づけも明確で、会社のメンバーも理解できるものに仕上がって非常に満足しています。

創業当初から存在する
デザインチームが手掛ける意義

NEW STANDARDには創業初期からデザインチームが存在し、白鳥も柴田も社員番号ひと桁のメンバーです。会社や事業、カルチャーを一緒に創り上げてきたメンバーだからこそ、コーポレートリブランディングプロジェクト全体と連動しながら、大切にしてきた価値観を昇華するVIの策定ができました。しかし、創業当初からいるからこその難しさもあった、と柴田は語ります。

柴田:わたしたちは創業初期から会社の成し遂げてきたことを見てきたし、会社のあるべき姿を共有している人間です。代表の久志が言わんとしていることを、これまでの経験から立体的に解釈した上で議論を展開できるという利点はありました。しかし、共通言語をもっていることが、リブランディングする、新しいものを生み出す際に邪魔になることもありました。どうしても固定観念に縛られ、客観性を失いがちな部分もありましたから。

久志:だからこそ今回はプロセスへのアドバイスをしてくださる方として高橋さんに入っていただきました。僕たちはつくる人が集まっている会社なのでつくることはできても、そのプロセスに客観性を担保することは難しい時もあります。メンバーが高橋さんとコミュニケーションをとるなかで、細かい軌道修正や発見を得られているのは良かったかなと思いますね。

世界を拡げ続ける
アイデンティティをもって

新しいVIにおける一番の挑戦は、デザインコンセプトである「EXPANDING=拡がり続ける」という概念をいかに体現するデザインにするかということでした「完成することがない、ある意味いつまでも未完成で拡がり続けられるという概念や、それを実現できる仕組みとして拡張性のあるデザインシステムを採用することで、世界が拡がり続けるさまを体現し続けるVIを実現しました」とアートディレクターの白鳥は振り返ります。

久志:ロゴタイプ、グラフィックエレメント、カラーパレット、そのどれもが自分たちらしいと強く感じられるものになったと思っています。MI、BI、VIが三位一体となりCIとして機能する。それによって事業や企業価値がアップデートされていきました。好き嫌いの主観的な判断をされがちなビジュアルこそ、言語化し、ロジカルなプロセスで自分たちにふさわしいものに仕上げていくことが大事だったんです。そのおかげで、経営や事業を統合し象徴するにふさわしいVIが完成したと思います。

企業がリブランディングを行なう際、VIは変化したことを認識させる重要な要素です。私たちの新しいアイデンティティを企業に関わる全ての人に伝えていくために、今後VIを様々な場所に展開していきます。
今回のコーポレートリブランディングを通して、改めて自分たちの想いと向き合い、アイデンティティを再定義し、目指すべき姿を新たにCIとして定めました。理念、行動、視覚ーーーこれらを三位一体の核とし、可能性を信じ行動する人で溢れた社会を目指して、私たちはムーブメントを起こし新しいスタンダードを創っていきます。

※新しいCIはこちらのページからご覧いただけます。

>>vol.1:全貌<<
メディア企業からムーブメントカンパニーへ。
CI策定の全貌公開!
>>vol.2:MI<<
立場や役職に関係なく“同じ景色”を見るための
企業アイデンティティのつくりかた

>>vol.3:BI<<
企業で働くクリエイターをどう評価する?
VALUESと評価制度が連動する組織デザイン

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