「SDGs」は、バズワードやCSRの延長線ではない。時代のアイデンティティだ

2019/12/23
久志尚太郎

久志尚太郎(NEW STANDARD 代表取締役):2019年は、15年9月の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)を上場企業が経営に取り入れ始めた「SDGs経営元年」でした。では、2020年はどうなるでしょうか。SDGsが企業やブランドのコミュニケーションを通じて、僕らの生活に浸透する年になると考えています。

カウンターの価値観が時代の中心に躍り出た

SDGsに内包される目標は、ここ最近になって提唱され始めたものではありません。例えば、1960年代のヒッピームーヴメントやカウンターカルチャー。一見破壊的に思えるものの、彼/彼女らが謳っていたのはLOVE&PEACE。それはサスティナブルな地球環境の実現や、フェイクファーなどによる動物愛護を目指したものでした。

しかし、当時はインターネットなどの情報環境がなく、若者は声を大にし社会に中指を突き立て、カウンターの姿勢を示す以外の方法がありませんでした。その価値観が約50年たち、メインストリームに躍り出てきたのが21世紀だと考えています。なぜなら、当時から訴えられてきた考えをもたなければ、地球はこのままでは持続できないと気づいてきたからです。

SDGsは2001年に策定されたMDGs(ミレニアム開発目標)の後継として採択されました。この目標とともに育ったのがミレニアル世代・Z世代であり、ミレニアル世代以降の感覚からSDGsは生まれたとも言い換えられるかもしれません。それは地球を破壊してまで経済活動を行うのはダサいとか、動物を苦しめてまで革製品を使うのはおかしいというような価値観です。

SDGsはバズワードでもCSRの延長線でもない

それだけ重要な考えにも関わらず、日本人の多くはSDGsをCSRやCSVの次として位置づけている。今こそ企業経営やブランドのアイデンティティの中心にSDGs的な価値観を置いてくべきだと考えています。

しかし、日本の管理職の平均年齢は47歳というデータがあるのですが、大企業のなかでアジェンダセットをしている人々にはこの価値観はなかなか理解されずに、日本独自のローカルルールが存在しています。例えば、上司が帰るまで職場から出られないとか。
SDGsを筆頭にグローバルルールが見えてきたなかで、日本がローカルルールにしがみつくのか、グローバルルールに基づいて世界の変化の担い手になるのか。それは、2020年以降の日本の課題だと考えています。

その変化の担い手になるべく、僕らは企業のブランドアイデンティティを新しい基準で捉え直すフレームワークを開発しクライアント企業を支援しています。その際に重要なのは、Howを真似することではありません。グリーンウォッシュという言葉があるように小手先のマーケティング施策だけでは生活者はそれに気づいてしまう。ブランドアイデンティティの根幹にSDGsの価値観を入れ込むことが重要です。

SDGsはバズワードでもCSRの延長線でもなく、時代のアイデンティティなんです。僕らが生きる社会の課題はシンプルではなく、簡単に解くことができません。だからこそ、SDGsに内包される複雑な課題を複雑なまま捉えること。そして、そのアジェンダに対して複合的にアプローチしていく必要があると考えています。

いままではその価値観がオルタナティヴであることの苦しみがありました。しかし、SDGsの登場で、かつてヒッピーたちが抱いていた思想が社会の中心に位置づけられた時、また別の苦しみが生まれるでしょう。その価値観が浸透してきたことには感慨深いものもありますね。

久志尚太郎

代表取締役 / Creative Director

1984年生まれ。中学卒業後、米国留学。16歳で高校を飛び級卒業後、起業。帰国後は19歳でDELLに入社、20歳で法人営業部のトップセールスマンに。21歳から23歳までの2年間は同社を退職し、世界25ヶ国を放浪。復職後は25歳でサービスセールス部門のマネージャーに就任。同社退職後、宮崎県でソーシャルビジネスに従事。2014年TABILABOを創業、2017年社内組織BRAND STUDIO(ブランドスタジオ)を設立、2019年5月NEW STANDARD株式会社へ社名変更を発表。

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