α(アルファ)世代の説明をするとき、最もよく使われる表現が「スマホもAIも、生まれたときから当たり前にあった世代」というような言い方です。たしかにその通りなのですが、これだけではやや曖昧で、肝心のところが見えてきません。彼らはスマホやAIで何をし、どのような行動をしているのか。
たとえば推しの選び方、お金の使い方、言葉づかいなど、一つひとつはバラバラの事象ですが、注意深くその文脈(コンテクスト)を見ていくと、どこか似たような共通点が見えてきます。
<参照>
α世代とは? AIネイティブな「アルファ世代」の8つの特徴(ニュースタ!)
「2歳から16歳まで」——そもそも、α世代とは誰か
まずα世代は、概ね2010年〜2020年代半ばにかけて生まれた世代のことで、Z世代の次の世代にあたります。名前の由来は、アルファベットのX・Y・Zを使い切ってしまったため、ギリシャ文字の最初の「α(アルファ)」から数え直したかたちです。
日本でおよそ1,000万人以上が該当しますが、見落とされがちなのが年齢幅の広さです。2026年のいま、α世代のいちばん上は16歳(高校1年生)、いちばん下は2歳前後ということになります。「α世代はAIネイティブ」とは言え、それが高校生の話なのか幼児の話なのかで、意味はまるで変わってきます。
α世代という1つのくくりの中でもそれだけの年齢の開きがあり、かつこの15年で起きたテクノロジーの進化のスピードは凄まじいものがあります。
AIは「調べる道具」から「話相手」へ
生成AIの使われ方について、NTTドコモ モバイル社会研究所の調査などによると、若年層のあいだでも学習や検索の補助としてAIを利用する割合が年々増加しています。用途のトップは「調べもの」や「勉強のサポート」であり、彼らにとってAIはまず「検索の延長」として浸透しています。
ただし、使い方は子どもによって二極化しています。民間調査によると、生成AIを日常的に使う子がいる一方で、小学生の過半数は「まだ使ったことがない」と回答しており、「α世代=全員がAIを使いこなす」というイメージは、実態と少しズレています。
面白いのは、使い道が「調べもの」だけにとどまらなくなってきたことです。10代向けの意識調査では、AIを日常的に使う層の一部に、AIを「否定せずに話を聞いてくれる第三の相談相手」として捉える動きが出てきています。対人関係の悩みが強まる思春期において、精神的なリスクを冒さずに本音を吐き出せる受け皿になっているという兆しです。
「推し」は、アイドルから”身近な人”へ
彼らの「推し」は、もうテレビの中のスターだけではありません。10代向けエンタメ調査によると、推しの対象は「アニメ・漫画のキャラクター」が根強い人気を誇る一方で、「配信者(YouTuber)」や「VTuber」が従来の国内アイドルを脅かす規模で支持を集めています。
人気の中心にいるのは、小学生に長年支持されるHikakinGamesなどのゲーム実況者や、毎日配信でコメントを拾ってくれるVTuberたちです。遠くで輝く憧れより、毎日画面越しに会える「距離の近さ」が好まれる傾向にあります。推し活の中身も、特別なライブ参戦より、日常的な配信視聴と手元に置けるグッズ購入が主流です。「非日常のイベント」より「日常のコミュニケーション」こそが、α世代のエンタメ文脈なのです。
「男らしさ」「女らしさ」は家庭では消え、学校に残る
内閣府の世論調査では、「男は外で働き、女は家庭を守るべき」という固定的な性別役割分担に反対する人が全体の6割を超え、若い世代ほどその傾向が顕著です。いまの親世代の家庭では、「男の子らしさ」「女の子らしさ」の縛りは確実にゆるんできています。
一方で、学校の現場ではまだ制度や慣習が追いついていない場面も見られます。男女別の名簿や整列、ジェンダーによる持ち物の色の固定観念など、家ではフラットなのに学校に行くと性別を意識させられるという“小さなズレ”が、日々の学校生活のあちこちで顔を覗かせます。
変化は「家庭」から先に進み、「学校という仕組み」があとに残されている——そのギャップのなかで育っているのもα世代の特徴です。
「元気なのに、しんどい」という静かな矛盾
子どものメンタルヘルスに関しては、注視すべきデータがあります。UNICEF(国連児童基金)の報告書(レポートカード)の国際比較では、日本の子どもは「身体的健康」でトップクラス評価を得ている一方、「精神的ウェルビーイング(心の健康)」では下位に沈むという歪な構造が指摘されてきました。
国立成育医療研究センターの調査でも、多くの子どもたちが日常的なストレスやネット依存のリスクを抱えていることが報告されています。手元のデバイスは、退屈を消し世界とつながる道具であると同時に、他者との比較疲れや依存を生む諸刃の剣です。
こうした背景から、海外では子どもを守るための規制の潮目が変わりつつあります。欧州などでは、一定年齢未満の児童に対するSNSやAI機能の利用制限について法的な議論が本格化しています。AIを精神的な拠り所にする流れと、それを安全性の観点からコントロールしようとする規制の流れが、いま正面からぶつかりはじめています。
言葉の源泉が、テレビでも友達でもなく「アルゴリズム」に
もうひとつ、世代の特徴が見えやすいのが「言葉」です。ベネッセコーポレーションなどの小学生の流行語調査を見ると、SNSや動画プラットフォームのショート動画から爆発的に広まったワードが上位を占めています。イタリアンブレインロットや「エッホエッホ」などは記憶に新しいのではないでしょうか。
特徴的なのは、その多くが「意味」ではなく「音・リズム・シュールさ」で消費されている点です。上の世代の流行語は、テレビ番組や芸人のネタなど、前後の文脈や意味を持って広がりました。しかしα世代の言葉を運んでくるのは、TikTokやYouTube Shortsのレコメンドアルゴリズムです。
意味を介さず、タイムラインに流れてきた心地よい響きがそのままミーム化して広がっていくため、親世代には「子どもの言っていることの意味がわからない」という断絶が生まれやすくなっています。
ミレニアルズ親世代は「禁じる」のではなく「並走する」
これまで、新しいメディア(テレビ、ゲーム、スマホ)が登場するたびに、親はまず「禁止」や「制限」で身構えてきました。しかしAIや最新デジタルツールに対しては、いまの親世代であるミレニアル世代(デジタルネイティブ世代)は、「頭ごなしに禁止するより、リスクを教えた上で使いこなせるように育てるべきだ」という価値観を持っています。
一方で「自分で考える力が弱まらないか」「回答は正確なのか」「人と関わる時間は減らないか」という心配する価値観も持ち合わせているのがミレニアルズです。「使わせる。ただし、思考力と対人性は削らないように」といった条件つきの受容です。取り上げるのではなく、隣で一緒に付き合う。親がそばでAIの使い方を確かめ、課金の際はルールを決め、取り上げずに一緒に観る、触る、体験する。デジタルの進化をきっかけに、”並走する”子育てが、少しずつ広がってきています。
2026年現在のα世代まとめ
α世代を「AIネイティブ世代」のひと言でまとめてしまうと、おそらく大事な文脈(コンテクスト)を取りこぼします。そして、これはテクノロジーだけの話でもありません。
このようにα世代を見ていくと、一見ちぐはぐなものが、同じ子の価値観のなかに同居していることに気づきます。たとえば、YouTubeを見てAIに宿題を手伝ってもらいながらも、大谷翔平選手に憧れる(実際、2026年の調査では小中学生男子のなりたい職業で「野球選手」は1位、「サッカー選手」は2位になっています。YouTuberなどの動画投稿者は3位)といったような、矛盾とも取れるリアリティがそこにはあります。
私たちは時代の変化を経験してしまったので、どうしても「ネットの世界」と「現実の世界」を分けて考える癖がついてます。でもα世代は、その境界線が少しずつ溶け、グラデーションになっているのです。AIもゲームも野球もサッカーも等しく「自分の日常」の一部です。
α世代を理解するというのは、彼らを便利なラベルでくくることではなく、ここまで見てきたような、同居する複数の文脈(コンテクスト)を、矛盾のまま受け止め、理解していくことなのだと思います。
主な出典:総務省統計局 「人口推計」、内閣府 「男女共同参画に関する世論調査」、NTTドコモ モバイル社会研究所 「小中学生のICT利用状況調査 / 子どもたちの生活とICTに関する調査」、第一生命保険 「大人になったらなりたいものアンケート」、国立成育医療研究センター 「コロナ×こどもアンケート」および子どものメンタルヘルス・生活習慣に関する継続調査、UNICEF(国連児童基金) イノチェンティ研究所 報告書「レポートカード(Report Card)」シリーズ、ベネッセコーポレーション 「進研ゼミ 小学講座」小学生の流行語・意識調査、欧州議会(European Parliament) 児童・青少年のデジタル安全および保護に関する決議・プレスリリース

