α世代(アルファ世代)は、2010年以降に生まれた、デジタルネイティブの進化系「AIネイティブ世代」だと言われています。
そんな彼らを区分する2010年という年は、iPadやInstagramがローンチした年でもあり、α世代のことを「iPad Kids」や「Glass Generation」などと表現することもあります。
デジタル&テクノロジーに対するリテラシーは、文字通り「生まれながら」にして身につけているため、今後の消費行動や職業観にも大きな影響を与えることでしょう。ここでは、そんなα世代を理解するための8つのポイントを紹介していきたいと思います。

01.
AIは特別なツールじゃない。日常生活の初期装備
α世代にとって、AIは「後から登場したテクノロジー」でもなければ、「学習して使いこなすもの」でもなく、SiriやAlexaのように「願えば叶えてくれる魔法」として日常生活のなかに初期装備されています。
検索して情報を探す、アプリを操作して作る、といった従来のプロセス(過程)を“面倒なもの”としてショートカットし、「で、何ができるの?(結果)」を最短距離で求める傾向が顕著な世代であるとも言われます。
また、誰もが瞬時にクリエイターや発信者になれる環境にいるため、創造のハードルは極めて低いですが、その反動として「待つこと」や「退屈な時間」への耐性は低く、即座にフィードバックを求めて改善していくなど、エンジニア思考の高い世代とも言えるでしょう。
>プロセスを超え「結果」を創造する世代

02.
親(ミレニアルズ)とは親子関係を超えた「ワンチーム」
多くのケースで彼らの親世代であるミレニアルズは、デジタルリテラシーが高く、新しいカルチャーにも柔軟です。そのため、親子関係は上下関係というよりも、フラットな「チーム」に近くなっています。
アニメ、ゲーム、アイドル、キャラクターなどを親子で一緒に「推す」ことも日常であり、親がかつて愛した90年代や2000年代カルチャーを子が新鮮に感じる「レトロブームの再生産」も起きています。また、それらのコンテンツに触れやすくなった背景には、YouTubeやTikTok、配信サブスクリプションサービスの影響も大きいでしょう。
このような関係性の中で、消費の決定権は「親の経済力」×「子の情報収集力・審美眼」がセットになった、チーム戦で行われるのが大きな特徴です。
>レトロや推し活を親子で共有する「ニコイチ」消費

03.
不確実な世界に対する「早期警戒アラート」あり
物心ついた時には、パンデミックや戦争、気候変動などのニュースが日常にあったため、Z世代と同等かそれ以上に世界に対する漠然とした不安を抱えやすい世代です。
一方で、学校教育のおけるSEL( Social and Emotional Learning=社会性と情動の学習)などを通じて、自分の心を守る術を学んでおり、メンタルヘルスへの関心は非常に高いと言えるでしょう。
ミレニアルズやZ世代と比べても、自分の感情を言語化して伝えたり、ストレスの原因から早めに距離を置く「デジタルデトックス」の必要性を理解していたりと、精神的な健康管理に対して早熟で合理的な判断を下す傾向が強く、リテラシーの高さを感じさせます。
>メンタルヘルスへの高いリテラシー

04.
消費者から「稼ぎ手(アーナー)」へ
α世代の1つの傾向として、金銭感覚における「稼ぐ/収益を得る」ことの多様化も注目すべきポイントです。例えばRobloxで自作のゲームやアイテムを作って通貨を得たり、親の不用品をフリマアプリで売ったり、SNSや配信によって両親とともにビジネス化していたりと「何かを創り出して対価を得る(クリエイターエコノミー)」の原体験が急速に低年齢化してます。
労働やお手伝いの対価として定額のお小遣いをもらうだけではなく、自分の創造性やスキル、情報発信が価値(お金や評価)に変わるというアーナー(earner)的価値観を、Z世代以上にシビアかつ肌感覚として持っています。
もちろん、すべてのα世代が実際にマネタイズを実現しているわけではありませんが、幼いうちからそれらを「当たり前の選択肢」として保有している世代だと言えるでしょう。
>お小遣いは「もらう」だけではなく「稼ぐ」感覚も


05.
メタバースはゲームではなくもう1つの「生活圏」
α世代にとって、マインクラフト、フォートナイト、 Roblox、などのゲーム空間は、彼らにとって単なる遊び場ではなく、学校外の「放課後のたまり場(サードプレイスのような居場所)」としても機能しています。
そこで着用するアバターのスキン(服やアイテム)にお金を使うことは、ゲームを有利にするためではありません。「友人にどう見られるか」という、現実世界のファッションと同等の「身だしなみ」や「アイデンティティ表現」としての価値をも持っています。つまり、デジタルアイテムは物理的な所有物と同じリアリティを持つのです。
一方で「ゲームで体験した釣りを、実際にやってみたい」「ゲームで体験した野菜づくりを、実際にやってみたい」のように、デジタル体験がアナログ体験への動機となるケースも多いのです。
>バーチャルの「身だしなみ」も現実と同じくらい大事

06.
見るだけのコンテンツは退屈。インタラクティブな欲求
幼い頃からタップをすれば目の前の世界が動き、スワイプすれば次の展開へ進むデバイスで育ったα世代(iPadなどのガラススクリーンにちなんでGeneration Glass/Gen Gと言われることも)は、テレビのように「一方的に流れてくるだけの受動的なメディア」に退屈さを感じる傾向があります。
例えば、動画を見るだけでなくコメントで参加する、ゲーム実況を見て自分もプレイする、Mod(改造データ)でゲーム自体を作り変えるなど、自分が「介入できる余地」が残されていないコンテンツには心からの熱狂しない傾向にあると言えるでしょう。
もう一歩踏み込むと、一方的に「視聴者」としてだけ楽しむコンテンツと、「参加者」として楽しむコンテンツを明確に選別しているとも捉えることができます。
>参加・介入できる余地のあるコンテンツが好き

07.
「多様性」はあえて語るものではない
ミレニアルズやZ世代を経て、多様性に関する価値観は大きく変化を見せつつあります。社会の変化も相まって、α世代にとって人種やジェンダー、家族のあり方などの多様性は、空気のように当たり前の「初期設定(デフォルト)」になってきたと言えるでしょう。
そのため、企業や大人が「私たちは多様性を尊重しています」と声高にアピールすること自体には、やや「わざとらしさ」や違和感を持ってしまう傾向にあります。
彼らがインサイトレベルで求めているのは、表面的なスローガンではなく、「実態として全員に公平であるか(フェアネス)」という、よりシビアで本質的な倫理観なのです。
>自分らしさの押し売りよりもフラットな「公平性」

08.
デジタル完結型への「飽きと反動」
α世代は、視覚と聴覚だけでも完結するスクリーンの中の世界に慣れ親しんで育ってきたからこそ、その反動として「触覚」「嗅覚」「味覚」といった身体的な感覚を強く求める傾向にあります。
例えば、ずっと触っていたくなるスライムやスクイーズの流行もその傾向が読み解けますし、リアルな音感を楽しむASMR動画や、カプセルトイのようにハンドルを回すアナログ感など、デジタル体験だけでは満たすことのできない「フィジカルな実感」への渇望が、さまざまな事象として表れています。
Z世代から続く、体験型イベントの人気の高まりや、ライブでしか得られないリアルな迫力は、 Generation Glassと呼ばれるα世代にこそ刺さるものがあると言えるでしょう。
>アナログ回帰やライブ型イベントなど「五感」への強い飢え




