NEW STANDARDでは現在、社内メンバーの持ち回りによるオンライン勉強会の開催を通じて、ナレッジシェアリングの仕組みを強化しています。
BDBS(BUSINESS DESIGN & BRAND STUDIO)、MEDIA、PRODUCTという3つのスタジオに部署が分かれつつ、三位一体の事業推進が求められるなかで、この仕組みはどのように組織の基盤をつくっているのでしょうか。
外部パートナーの浅井さん、NEW STANDARD代表の久志、執行役員/事業統括の野間、執行役員の河合が語りました。
三位一体という
NEW STANDARDの
独自性を強化するために
──今回のコロナ禍以降、NEW STANDARDではオンラインでの社会勉強会を盛んに行なっていますよね。どんな意図で始まったものなのでしょうか?
久志:会社として成長させる上で、NEW STANDARDのコアバリューは何かを考えて、それを整理しました。最上位にはNEW STANDARD独自のフレームワークがあり、BUSINESS DESIGN & BRAND STUDIO(以下、BDBS)、MEDIA、PRODUCTの3つのスタジオや事業が紐付いています。
それらのスタジオが三位一体になって存在することが自分たちの独自性であり事業成長のレバーだと思っていたのですが、これまで構造として説明できていませんでした。
そこで、三位一体を実現するためのコミュニケーションのプロトコルや仕組み、構造化を進めるなかで、社内トレーニングを通じて3つのスタジオをつなげることが重要だと思ったんです。
野間:それから、事業役員陣が中心になって社内トレーニングのプログラムづくりを始めました。当初は優秀な人材を入れれば事業が伸びると思っていましたが、そんなことはなかった。事業戦略を見直した際に、BDBS、MEDIA、PRODUCT STUDIOが近い距離でつながっていることが一番の強みであると考えました。縦で分かれている部署間をどう細い糸でつなげるかを模索するなかで、まずはお互いの部署について知るための勉強会を始めることにしました。
河合:初回の勉強会は、BDBSが広告事業を行なうにあたってメディア『TABI LABO』の現状を知るというテーマで実施しました。前週の人気記事を取りまとめて、その記事を書いた背景や、PVが伸びた要因を分析したものを共有してもらうライトなものでした。
──そこからどのように社内トレーニングの仕組み化をしたんですか?
浅井:試行錯誤のなかで、必要なトレーニングのコンテンツを設計していきました。「ベース」トレーニングでは、例えば動画ディレクターに動画ディレクションや撮影現場の取り回しについて教えるという専門領域の話ではなく、クリエイティブワークのためのロジカルシンキングや、チームで協働するための質問力などを伝えています。
また、「共創のための横断理解」トレーニングは、メンバーが交代制で自分たちの知見を社内に共有する場にしています。メンバーの相互理解やアウトプットするトレーニングも兼ねていますね。たとえば、PMのメンバーがPMの技術を伝えるなどの勉強会を開催しています。
そして「専門性に活かせる領域別」トレーニングとして、クリエイティブワークに活かせるグローバルトレンドを共有する内容も存在します。この3つを改善しながら、週に1〜2回は開催していますね。
社内の隠れたヒーローに
光を当てる
──勉強会の開催は、NEW STANDARDという組織にどのような価値が生まれましたか?
浅井:個人と組織にスキルとセンスが循環することが価値だと思っています。個人の生産性を高めれば、当然ながら個人にスキルやノウハウが溜まります。しかし組織として強くなるためには、個人に依存せずに組織としての蓄積が重要ですよね。その際に、組織が縦割りになっているとナレッジシェアが起きにくい。横断的な情報共有が、新しい化学反応やブレイクスルーを生むことを支援したいんです。
河合:スキルの共有も重要ですが、各メンバーがどういう仕事をしているのか、どんなパーソナリティなのかを知れることも大きいですね。以前に比べるとメンバーの数が増えたり、専門分化が進んだりしたことで効率的になったものの、三位一体という強みが薄まってしまっていた。だからこそ各メンバーの熱量や思いを知ることで、一緒に仕事をするモチベーションが変わりますし、信頼しあえる関係をつくれる。それが日々の業務でのコミュニケーションに活きたという実感はありますね。
──それは働き方がオンラインベースになったからこそ、相互理解が減ったという側面が大きいのでしょうか?
浅井:必ずしもそうではないと思ってます。勉強会がオンラインでの開催になったことで、場所の制約もなくなりましたし、フラットに気軽に参加できるようになったと思います。オンラインだと、質問もしやすいじゃないですか。
──たしかに。ながら聞きなどで自宅から参加するなど、柔軟な参加方法がありそうですよね。
野間:今日どうしても言いたかったことがひとつあるんですけれど…(笑)、トレーニングはトレーナーとトレーニーの関係になりがちですけれど、社内の隠れたヒーローたちがトレーナーとして皆に知見を共有することで「すごいね、◯◯さん」と社内からの見え方が変わることこそが、ぼくは価値だと思っています。
いまの持ち回り型の研修だと、色んなヒーローが生まれますから。最後のあとがきで、自らの言葉で共創の大切さを説いてくれたメンバーもいて、思わず目頭が熱くなりましたね。
河合:ほかにも講師として準備するメンバーが「自分たちが皆に提供できるものは何だろう?」と考えて、クリエイティブ領域の語りづらい・体系化しづらいことを言語化・共有したりする過程で、自分の強みに気づけたり、自己認知が深まったりしていますよね。自分の仕事について誰かにプレゼンする場って、仕事のなかでは少ないじゃないですか。それを社内でやれるとアットホームでやりやすいし、緊張もしにくい。アウトプットのトレーニングになりますし、発表に対する反応が自信につながっていくと思います。
属人化と標準化を
行ったり来たりする
──今後、どのように社内トレーニングの場をブラッシュアップしていく予定でしょうか?
浅井:振り返りと実践ですね。学んだことを振り返って、自分の型にしていくこと。そして、実践を通じて活かすことが重要だと思っています。言い換えるとすれば、個人のリーンスタートアップのレールをひいていくのが大事かなと。
野間:属人化と標準化のサイクルの舵取りをしていければ、と思っています。この半年間は、各メンバーの属人性によってバラバラになっていたスキルやノウハウを集め、まずはテーブルの上に並べる作業だったと思っています。次のフェーズでは、標準化を突き進めていきたいですね。そして「あいつは面白いキャリアだよね」とか「わたしたちとは違う武器をもっているよね」とか、そのうえでの属人化ができるとよいと思います。そのサイクルがまわっていくと、社内に新しいヒーローが生まれていくのではないでしょうか。
久志:これらの実践を通じて、「いまだったら上場しても大丈夫かも」と思えるようになったのは大きいですね。まだ道半ばではあるものの、強い組織をつくっていければと思っています。