私たちの社会はいま大きな変化を迎えており、気候変動やパンデミックなど、さまざまな課題を世界規模で共有しています。従来の「当たり前」が通用しない中、より良い世界や社会を構築するための、新しい基準や価値観が生まれています。その新しい基準や価値観を生み出す中心にいるのが、まさにZ世代やミレニアルズです。
そんなZ世代やミレニアルズの生の声を起点に、国内外でいま生まれている新しい基準や価値観を紹介する「ニュースタンダードセミナー!!」の第三回が、5月25日にオンラインで開催されました。
セミナーでは、「大人」と「レトロブーム」をテーマにセッションを行い、Z&M世代のリアルボイスを引き出しました。今回はそのセミナーから「レトロブーム」のパートを、ダイジェストでお届けします。
Z世代とミレニアルズから生まれる
新しい基準や価値観を知る
【今回のセミナーの登壇者】
ゲスト:
木伏美加 様(株式会社電通 ソリューションプランナー)
久志 尚太郎 (NEW STANDARD株式会社 代表取締役)
浅井 康治(NEW STANDARD株式会社 執行役員/ストラテジックプランナー)
金沢 桃花(NEW STANDARD株式会社 Social Media Planner)
湯瀬 胡桃(NEW STANDARD株式会社 Social Media Planner)
ピォー 豊(NEW STANDARD株式会社 Planner)
キーワードは
「サステイナブル」と「過去への憧れ」
ここ数年、Z世代やミレニアルズを中心に「レトロ」に注目が集まっています。Y2Kファッション(2000年頃に流行したファッション)やフィルムカメラ、レトロ居酒屋が流行するなど、ひと世代前のカルチャーが盛り上がりをみせています。
レトロブームは過去にも幾度か起こっており、その時代を生きる人々の価値観を色濃く反映してきました。1980年代にはビデオデッキの普及を背景に、過去の映像を懐かしむ人々が現れました。また、2000年代にはバブル崩壊後の景気後退により、バブル前の時代を懐かしむ声が多く聞かれるようになりました。
では、今回の流行の背景には、Z世代やミレニアルズのどんな価値観や新しい基準があるのでしょうか?
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レトロブームを捉えるためのキーワードの1つに「サステナビリティ」があります。意味消費の文脈にあるように、人々は商品の持つ社会的・文化的価値(=意味)に共感して、選択するようになりました。そんななか、Z世代やミレニアルズは環境に配慮したリメイク商品やジャンク品を好んで購入するようになってきています。
たとえば、株式会社モノファクトリーの展開するブランド「REMARKET」は昭和レトロ感溢れる懐かしい家電や雑貨といったリユース商品として注目を集めました。「使い方を創造し、捨て方をデザインする」をコンセプトに掲げており、跳び箱からソーラーパネルまで使われなくなった素材を家具として展示・販売する「THROWBACK」や、リサイクル工場に持ち込まれた廃棄物を新しい素材とみなして販売する「マテリアルライブラリー」を展開しています。
参考記事:おぅ、懐かしい。「昭和レトロ」な家電・雑貨が並ぶ「REMARKET」の特別出店(TABI LABO)
また、デジタルネイティブであるZ世代やミレニアルズは「アナログで手触り感あるもの」にエモさを感じています。
ヴィンテージスタイルのフィルムカメラ「Jollylook」は米国Kickstarterで約4千万円もの支援金を集めました。ファインダーを取り出し、シャッターを押して撮影、プリントアウトは手巻き式と、Jollylookでの撮影には多くの手間がかかります。しかし、Z世代やミレニアルズはこの手間にこそ価値を感じており、3手間かかるからこそ撮影した写真に愛着が湧くといった声も聞かれます。
参考記事:3手間かかるからこそ楽しい「レトロな紙製インスタントカメラ」(TABI LABO)
さらに、レトロブームの背景には、不確実性の高いVUCA社会の中で、Z世代やミレニアルズが「シンプルで生きやすかった時代」へ憧れを抱いているのではないかという意見もあります。古き良き時代に触れる行為こそが、今の時代の息苦しさを打ち壊してくれるという価値観が根底にあるのかもしれません。
参考記事:いまさら聞けない。なぜこんなにもレトロブーム?(TABI LABO)
ここからは、実際のセッションの中からZ&M世代のリアルボイスを聞いていくことで、レトロブームの背景について深堀りしていきます。
「レトロ」を通じて
生まれる前の時代を体感する
木伏(M世代):レトロの良さは「均一的ではなく、キレイすぎないところ」にあると思います。今の時代、写真撮影ひとつとってもスマホで超高画質な写真が撮れてしまいます。私たちの周りにはキレイなものが溢れているからこそ、フィルムカメラで撮れる写真のような「手触り感あるもの」に惹かれます。
湯瀬(Z世代):木伏さんの答えにも近いのですが、「昔の時代の不便さを体感できること」に惹かれます。フィルムカメラやレコードなど、いま流行っているレトロコンテンツは、そのほとんどがデジタルで代替できますよね。それでも、そこに少しの不便さがあるからこそ、モノに愛着が湧いたり、昔の世代の生活を感じられたりという良さがあります。
金沢(Z世代):たしかに昔の時代を体感できるのはレトロの魅力ですよね。私は「生まれる前の時代へのリスペクトと憧れ」を持っていて、だからこそレトロに惹かれるのかなと思っています。今の時代の根幹をゼロイチで作ってきた世代がいて、その世代ってスゴくない?というのが根底にあるんですよね。
豊(Z世代):僕も昔の世代が作った世界に住んでいるという感覚があって、金沢さんの話に共感できます。その時代を経験したことはないのだけど、親世代から話を聞いたり、映画などを見ていく中で、なんとなく過去の時代のイメージが形成されて、そこにリスペクトやノスタルジーを感じるのも面白いですよね。
浅井(M世代):過去の世代とのつながりという点では、「歴史に裏打ちされた安心感」がレトロの魅力かなと思います。ある時代に一世風靡したからこそ、安心して流行に乗れる感覚があります。流行の根底には、レトロコンテンツには歴史に裏打ちされたファクトがあるという安心感が大きく関わっていると思います。
「レトロ」×「○○○」で
流行りそうなものは?
金沢(Z世代):「レトロ×携帯」です。私の周りではよく、デコメとか着メロの懐かしさが話題になります。スマホって便利で使いやすいけれど、情報量が多くて疲れるよねという共通の感覚があって、デジタルデトックスのようにもう少しスローなコミュニケーションがしたい欲求があると思っています。だからこそ、昔の折り畳み携帯がリバイバルしたらブームになるのではないでしょうか。
湯瀬(Z世代):「レトロ×最新」が流行ると思います。私はレトロ雑貨が好きで、よく買うのですが、ヴィンテージ品ってデザインが素敵でも機能面が劣化していたりと、不安な要素があるんですよね。なので、見た目はレトロだけど、機能は最新なものがあれば、私としても嬉しいです。
木伏(M世代):「レトロ×テレビ番組」です。最近のテレビ番組って、最新技術を使ったり、台本が緻密に組み立てられていたりで、すごくクオリティが高いと思うんです。ただ、クオリティの高さゆえに人々を遠ざけている側面もあるのかなと感じます。それに比べて昔のテレビ番組ってアドリブ感があって、その手触り感が人々を惹きつけていたと思うんです。そんなレトロなテレビ番組が戻ってきたらブームになるのかなと感じます。
豊(Z世代):僕は「レトロ×スポーツ」です。海外だとスポーツの世界で「スローバック」だったり「トラディショナル」という言葉が流行っています。これは過去の著名選手をリスペクトし直そうというムーブメントで、レトロユニフォームのリバイバルが積極的に行われています。僕自身も、競技の歴史を作ってきた偉人たちに感謝を示すのはとてもかっこいいと感じていて、日本でもこれから流行るのではと思っています。
浅井(M世代):「レトロ×日本語」がブームになったら面白いと思います。僕はマーケティング分野で仕事しているのですが、略語だったりカタカナだったり、新しい言葉が次々に生まれていて疲れてしまうんです。僕は日本語が持っている細やかさがすごく素敵だと思うので、そんな表現力が戻ってきたらいいなと思います。例えば、「エモい」も「いとおかし」と全く同じ表現だと思っていて、そういう言葉を面白がりながら使う人が出てくれば、面白いですよね。
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【開催決定!】第四回ニュースタンダードセミナー!!(7月27日/オンライン開催)
第四回目となる今回は、電通デジタル(コマース部門コマースプロデュース事業部)デジタルプランナーの志村 美咲さんをゲストパネリストにお招きします。自社ECとECプラットフォーム問わず、コマース全体のコンサルティング売場(EC)を中心とした顧客体験設計と構築・運用に特化した電通デジタルのデータや視点を、NEW STANDARDの視点と掛け合わせて皆さんにお届けします。