人生の充足感を高め、新しい価値をつくるには「学び直し」が必要だ──リスキリング、リバースメンタリングをいま考える

2022/12/19
ニュースタ!編集部

学び直しを意味する「リスキリング」や、若手が上司に助言をする逆方向(リバース)の人材支援活動である「リバースメンタリング」が注目を集めるなか、そもそも何を、いかにして学ぶべきなのでしょうか? その「楽しさ」に立ち返りながらも、いまの時代に求められる「学び」への向き合い方について、NEW STANDARD代表の久志尚太郎がまとめました。

大学院の学位は必要?

以前、某大学の教授の方と話をするなかで「日本人は総低学歴社会である」と明言されたことに衝撃を受けました。

日本は、世界のなかでも最も大人が勉強しない国の一つと言われており、OECD(経済協力開発機構)のデータによると、日本は「25歳以上の短期高等教育機関(技術的・職業的スキルを学ぶ短期教育期間)への入学者の割合」が先進国の中で最下位。

トップのスウェーデンやニュージーランドに比べて1/10以下の割合です。大学の偏差値や学部に注目が集まるものの、修士以上の進学率が低く、修士や博士を重んじる諸外国との意識の違いが鮮明に出ていました。

そうした潮流の一方で、進化人類学者のピーター・ターチンは「大学院の学位を持つ若者が過剰生産されていること」で、雇用数に対して高学歴者が増えてしまい満足に職につけなくなる状況を「エリート過剰生産」の理論と名づけています

修士や博士への進学率が低い一方で、大学院の学位をとったとしても職につけない。そんな矛盾を抱えた社会のなかで、私たちは何を、いかにして学ぶべきなのでしょうか?

「学び直し」が
人生の充足感を高めてくれる

私は、日本の生産性や一人あたりGDPが低い理由、DXが進まないのは、大人が学習しないからだと考えています。そのような危機的状況を国も理解してるからこそ、成長産業への労働移動を促す「リスキリング支援」に今後5年間で1兆円の予算を投じる計画を岸田内閣は2022年10月に示しました。加えて、科学技術の根幹を担う博士人材の支援についても、様々な場面で協議されるようになりました。

「ユーキャン新語・流行語大賞2022」の候補にも選ばれた「リスキリング(新しくスキル(技能)を付ける/学び直しを意味する言葉)」ですが、人々はキャリアアップのためだけではなく、その「学び直し」に別の意味を付与しているようです。

例えば、エン・ジャパン株式会社が運営する『ミドルの転職』における調査では、35歳以上のユーザーを対象に「リスキリング」についてアンケートを行ない、1,668名から回答を得るなかで、「仕事で必要性を感じて自発的に始めた」が81%を占めました。その目的は「新しい仕事への挑戦」「キャリアの市場価値向上」「将来の起業・副業・転職のため」となっています

こうしたキャリアアップを目的とした学び直しがある一方で、学ぶことは個々人の充実感や⾃信にもつながっているそうです。コクヨグループでオフィス通販を行う株式会社カウネットの「<ウィズコロナの時代>これからの生活様式(学び編)」と題した調査では、学ぶことによる変化について、「楽しみが増えた」が47%で約半数を占めています。次いで「自分の世界が広がった」34%、「自信につながった」23%。つまり、学ぶことが人生の充足感へとつながっていることがわかります

つまり、自分の世界を広げ、人生を豊かにするという意味でもリスキリングの重要性は増しているわけです。

リバースメンタリングの実践

このような世の中の潮流を踏まえて、NEW STANDARDでも「学び直し」を支援するためのいくつかのサービスを提供しています。

例えば、「リバースメンタリング」という考え方があります。若手が上司に助言をする逆方向(リバース)の人材支援活動の仕組みを意味するもので、学び直しの新しいアプローチのひとつとして注目を集めています。

その取組の一環として、ビジネスナレッジの定額制動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」では、注目のZ世代リーダーとグロービス講師が学びを交換する新しいスタイルの動画学習コンテンツ「学び交換」を共同で開発しました。

関連記事:RELEASE|“Z世代ビジネスパーソンの学び”を応援する動画学習コンテンツを、「GLOBIS 学び放題」とNEW STANDARDが共同開発

Z世代へのマーケティング・企画UX、イノベーション創出などのいくつかの視点でコンテンツを提供しており、「GLOBIS 学び放題」はMBAの基礎からデザイン思考、そしてリバースメンタリングまで幅広い視点での価値創造のアプローチを学べるものになっています。

もちろん、こうした動画学習にとどまらず、社内で若手と先輩社員の役割を変え、相互の学びを促す新しい制度の導入や研修といったアプローチも有効でしょう。ほかにも、「メタバースを使ったことがない人がメタバースの事業に取り組んでいる」という声も聞くように、自身が生活者としてZ世代に支持されるサービスをまずは使ってみることも重要です。例えば、「BeReal」のようなSNSを使ってみたり、TikTokに投稿したりすることで、デジタルネイティブの感覚が身につき、遊ぶように学ぶことができるはずです。

Z世代とのリバースメンタリングや対話を通じて、新しい基準や価値観を学び、VUCAと呼ばれる変化の激しい現代において、日々変化する社会状況をキャッチアップし、自身をアップデートしていくことがこれからより重要になっていくはずです。

「つくる」を支援する

「学び直し」という観点でもうひとつ重要なのが、新しい基準や価値観を学ぶだけではなく、それを踏まえた価値創造に取り組むことです。

例えば、未来学者のアルビン・トフラーは1980年の著書『第三の波』にて、生産活動を行う消費者を意味する「プロシューマー」という言葉を提唱しましたが、人々がつくること・表現することにも「学び直し」はとても重要だと考えています。

ノーコード開発ツールの登場や、生成AIの勃興、あるいは消費者の側でも「修理する権利」が注目を集めるなど、生活者は単なる消費者から生産者、つくる人へと変化しつつあります。そんな時代において、新しい基準や価値観を学ぶことは「自分は何を表現したいのか?」を発見するためにも有効だと考えています。

つくり手の強い動機を起点としたイノベーション創出を「意味のイノベーション」と呼びますが、NEW STANDARDも「デザイン思考」や「意味のイノベーション」の理論を組み合わせ、自社を「意味(価値)」の解釈者として定義し、クライアント企業やブランドが新しいスタンダードを生むことを支援しています。

関連記事:「パーパス」策定のために、企業やブランドは「新しい意味」を発見する必要がある──久志尚太郎(NEW STANDARD CEO)

自分の世界を広げ、「これをつくりたい」という動機を発見する。その起点となるのが、新しい基準や価値観を知るための「学び直し」なわけです。

楽しく、新しい自分と出会い直す

現代において「学ぶ」ことを多角的に説明してきましたが、わたし自身も現在経営者をしながらも英国の大学院に通っており、2023年4月からもNEW STANDARDと大学の共同研究というかたちで研究活動も続けていく予定です。学び直すこと自体がキャリアアップにつながるだけではなく、「学ぶ」こと自体が楽しく、新しい自分と出会い直せる機会だと思っています。

NEW STANDARDでも「この世界は、もっと広いはずだ。」というパーパスを掲げていますが、リスキリングやリバースメンタリングを通じて新しい基準や価値観を知ることで、自身の捉える世界が広がっていくのではないかと考えています。

だからこそ、ビジネスパーソンが新しい基準や価値観を学び、それを事業やブランドの価値の再定義に活かす支援をこれからも続けていきたいと考えています。VUCAの時代においてそうした取組に関心のあるクライアントの方はぜひご連絡ください。


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