ミレニアルズ及びZ世代に関する調査・研究をおこなう「NEW STANDARD THINK TANK」が、いま注目するZ世代に関するキーワードを解説していく本連載。第8回でご紹介するキーワードは「レトロテック」。2022年「Y2K」や「平成ギャル」という言葉が注目され、レトロブームが巻き起こりました。2023年はそのレトロブームの派生として、テクノロジーと掛け合わせた「レトロテック」というキーワードが盛り上がりを見せています。レトロは“懐かしさ”や“可愛さ”という文脈だけではなく、セルフケアの観点としても支持されています。今回は「レトロ」に関する新たなトレンド、「レトロテック」について紐解きます。
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「レトロテック」とは
「レトロテック」は、古い技術や製品を現代風にアレンジし、再び注目を浴びるようになった製品のことです。例えば、アナログカメラやレコードプレイヤーを現代のデザインと融合させた製品が近年注目されているのもレトロテックです。また、古い携帯電話(ガラケー)やデジタルカメラを使用する人も増えています。
「レトロテック」の具体的な事例
>> “あえて”低画質を楽しむ「デジカメ(コンパクトデジタルカメラ)」
アメリカのZ世代を筆頭に「デジカメ(コンパクトデジタルカメラ)」が注目されています。デジタルネイティブ世代であるZ世代にとって、古いデジカメの画質の甘さ荒さ、いわゆる“アナログ感”は新鮮で「味」になっています。
また、昔のデジカメを使用することで、過度に盛れない「=リアルさ」に繋がっているのがポイントです。最近では過去の写真を見返すと、どれも“加工後の写真”であるという事象がTwitterなどで話題になりました。以前のキーワード記事「エフォートレス」でもご紹介したように、「 強めのフィルターや加工修正した写真 →自然光を生かした、ナチュラルな写真へ」、「映えを意識した、完璧な写真を投稿→あえてブレた写真や、画質の悪い写真、“カメラを気にしてない風“の写真へ」と、よりリアルな“映え”が現代では求められているのです。
あえて画質の悪いデジカメ、低ピクセルのカメラをリサイクルショップやメルカリで購入する人も増えています。TikTok上では、「 #digitalcamera 」のハッシュタグ動画は約3億回の視聴数を突破するほどの盛り上がりを見せています。(2023年3月時点)
また、デジカメで撮影した写真をSNSに投稿することがZ世代の間でブームとなっているため、デジカメの需要がさらに急増していると言えます。
現在、SNSでエンゲージメントを集めている投稿の傾向を見てみると、とくにZ世代のあいだでは「飾らない投稿や人柄」に魅力を感じる傾向があります。Twitterでは、デジカメで撮る写真が“逆に盛れる”という声も多数上がっています。
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>> SNS疲れや脱アルゴリズムをさせてくれる「ガラケー(burner phone)」
デジカメをはじめとしたレトロテック製品が注目されているもう一つの理由として挙げられるのが、スマホ・SNS疲れです。スマホの使用によるストレスからの解放とレトロテック製品のトレンドは関係しているのでしょう。
デジカメと同様、あえて「ガラケー(burner phone)」を使用するのがZ世代の間でブームに。2022年に日本で注目されたキーワード「Y2K」や「平成ギャル」といったキーワードをきっかけに、“平成”のカルチャーが“令和”で再ブームを起こしています。日本だけでなくZ世代の間では、ガラケーをデコって(デコレーションする)持ち歩くことや、そのガラケーで写真を撮ることなどがデジカメと同様に新しい楽しみ方になっています。
アメリカのZ世代では、 夜の外出時など感傷的になりやすい時間帯やシチュエーションでは、スマホを手放すようにしている人も増えていると言います。スマホは気軽にネットやSNSを利用できるいい面もありますが、その反面で神経質な気持ちになる要因やアンチコメントなど、悪影響な事柄が起きやすい要素も詰まっています。近年でもスマホ依存を打ち消すアプリやサービスなどのリリースは増加していますが、自分で制限解除できたりと制御しにくい面も。
その点、レトロテック製品は物理的にSNS疲れや脱アルゴリズムをさせてくれるアイテムです。加えて、写真撮影やメール送信などの基本的な操作しかできないところも魅力なのでしょう。デジカメやガラケーをはじめとしたレトロテック製品を使うことは、レトロで可愛いという観点だけでなく“セルフケア”という観点も含んでいるといえます。
また、韓国のZ世代の間では「Galaxy」から発売されている折りたたみスマホ「Galaxy Z Flip」を“デコる”のがブームになっています。ステッカーやキーホルダーなどをつけて、オリジナルにカスタムすることで世界にひとつの自分だけのスマホが作れると人気です。レトロに最新テクノロジーを掛け合わせたアイテムも今後増えていくのではないでしょうか。
「レトロテック」3つの注目ポイントまとめ
1. 両親のガラクタや過去の自分のガラクタを再利用して楽しむ傾向に
2. 古いデジカメの画質の甘さや荒さ、基本的な操作しかできないガラケーのいわゆる“アナログ感”はZ世代的には新鮮で「味」になっている
3. レトロテックは、「Y2K」や「レトロ」の意味価値に加えて、できることが限られていたり繋がれないことがセルフケアの文脈としても支持されている
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