マジックアワーのように、
そっと心を満たすホワイトビールの開発
アサヒビール株式会社が展開する『ASAHI WHITE BEER』はマジックアワーのように、そっと心を満たすホワイトビールです。
ユーザーとの双方向コミュニケーションにより、ブランドアイデンティティを育むことを目指しており、「何気ない日常の中で、ASAHI WHITE BEERとともに心が満たされる瞬間」を描いたWEB-CMの展開や「#エモ味(み)」というキーワードで心動かされる瞬間を発信するSNS施策を実施しています。NEW STANDARDは本ブランドのコミュニケーション戦略の策定に伴走。キャッチコピーの作成やWEB-CM企画・制作を担当しました。
さらに、NEW STANDARDは『ASAHI WHITE BEER』のブランド開発・パッケージデザインという上流部分についても一気通貫で支援を実施。一連のプロセスでは、ユーザー起点でのプロダクト開発や顧客体験設計を支援する「BDX(ブランドデジタルトランスフォーメーション)」のアプローチを採用しています。
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ビール離れが進む若年層にも手にとってもらえるようなブランドとは何か──。そんな問いを掲げながら、ASAHI WHITE BEERはビールの新たな意味(イミ)を探ることで生まれた商品。
今回の記事では、一連のプロセスの中でもコミュニケーション設計・プロモーション制作フェーズについて、ビジネスプロデューサーの松本 興人、CXデザイナーの古賀 力丸、ブランドデザインスペシャリストの関根 千恵とともに掘り下げていきます。
「エモさ」や「主人公感」という
ビールの新たな価値 (イミ)
ブランド開発からコミュニケーション設計まで、プロジェクトを推進する上での軸となったのが「あるがままでいられるから充足感を感じるエモいビール」というビールの新しい価値 (イミ)です。
これは、NEW STANDARDがケイパビリティ(専門領域)として掲げているZ世代やミレニアルズへのリサーチから導かれたビールの新しい価値(イミ)でした。対象となるユーザーへのインタビューで明らかになったのは「ビールを飲むことで、心がほどけて自分が “自分の人生の主人公” であることに気づける」というインサイトです。
Z世代やミレニアルズからは「嗜好品や趣味を通じて自分のご機嫌取りをしている」「新しいモノ・コトを日々に取り入れることで自己充実感を保つようにしている」などの声が挙がり、そこから見えてきたのはZ世代やミレニアルズは嗜好品を楽しむ時間や趣味を通じて、自身の気持ちと向き合う時間を作ったり、自分の心を満たすようにしているという気づきでした。
さらに、内閣府の若者(15〜29歳)の意識調査によると、日本は諸外国に比べて自己を肯定的に捉えている方の割合が低く、その傾向は年々高まっているといいます。自己肯定感を題材した書籍の出版・自己肯定診断コンテンツも相次いでおり、Z世代やミレニアルズは自己肯定感を高めたいと思っている傾向にあります。
これらのインサイトを踏まえて、今回のターゲットを「自分らしく一生懸命に生きようとしていて、ビールを楽しむきっかけをさがしている人」に設定。心を動かすビールという提供価値を策定しました。
松本: 若年層のアルコール離れが業界の課題となるなかで、彼/彼女らが共感できるビールの新しい価値 (イミ)を探ることから本プロジェクトは始まりました。Z世代やミレニアルズは、商品の機能的な価値だけでなく消費によって引き起こる社会やライフスタイルの変化を重要視しています。
これまでビールは、「キレ・コク・味わい」が訴求されたり、一杯目はビールというように同調圧力的なプレッシャーを感じる飲み物だったと思います。NEW STANDARDはビールの従来のイメージを払拭するべく「趣味や嗜好品を通じて、自分の気持ちに素直になって心を動かす体験がしたい」という若年層の欲求に注目することで、「エモさ」や「主人公感」というビールの新たな価値 (イミ)を策定しました。「イミ消費」の時代に求められるのは、ユーザーの共感を生む商品(サービス)の情緒的価値を探求することであるはずです。
ユーザーとの共創を起点に
4本のWEB-CMを展開
コミュニケーション設計・プロモーション制作フェーズでは、「何気ない日常の中で心を満たされるビール」という情緒的価値を訴求・定着させるべく、ユーザー個々人の物語に注目した施策を展開していきました。
従来のマーケティングではテレビCMや街頭広告を展開する企業からの一方向的なコミュニケーションが主流です。しかし、NEW STANDARDではユーザーが自由かつ主体的に個人の記憶や体験のエピソード(物語)を語る共創型のブランドコミュニケーションを実施。ファンを”ブランドの伝道師”として位置づけることで、長期的にブランドロイヤリティを高める戦略です。
4人の出演者をフィーチャーしたWEB-CMでは、それぞれの主人公が「何気ない日常の中で、『ASAHI WHITE BEER』とともに心が満たされる瞬間(=マジックアワー)」を描き、様々なひとの「心が満たされる瞬間」に寄り添うビールであることを伝えました。Z世代やミレニアルズからの支持を受けるアーティスト「Sano Ibuki」による『プラチナ』をタイアップソングとして使用しています。
WEB-CMを作成するにあたって大切にしたのは、Z世代やミレニアルズの価値観や世界観を解像度高く再現すること。30秒という短い時間でユーザーの共感を生むためには、ターゲットユーザーの行動様式や心情を深く理解した情景描写が重要です。
そのために、プロジェクトメンバー全体が参加する「自分だけのマジックアワーを見つけるワークショップ」を実施したり、徹底したユーザーヒアリングを行ったりして、ユーザー目線を獲得することを目指しました。
関根: クライアントやユーザーとの共創のプロセスは、WEB-CMのクオリティを高めるだけでなく、プロジェクトメンバー全体で『ASAHI WHITE BEER』に対する共通認識を育むことにつながりました。デザインシンキングやサービスデザインにて重要視される共創のアプローチの真価は「高解像度でのユーザー理解」の「ステークホルダー間の円滑な合意形成」にあります。人々の価値観が目まぐるしく変化する現代において、共創の重要性は益々高まっているのではないでしょうか。
このようなプロセスを経て生まれたのが、次の4本のWEB-CMです。
■コンセプトムービー(WEB-CM)
「ふたりだけのマジックアワー」 篇
「仲間と過ごしたマジックアワー」 篇
「偶然出会ったマジックアワー」 篇
「誰かに見せたいマジックアワー」 篇
WEB-CMでは『ASAHI WHITE BEER』により心が満たされる瞬間を一人称視点と三人称視点を使い分けながら描くことで、それぞれの「主人公感」を設計しています。前述した「ビールを飲むことで“自分の人生の主人公” であることに気づける」というインサイトに基づいた演出です。
さらに、主人公にはZ世代やミレニアルズのインフルエンサーを起用。当事者(ターゲットユーザー)だからこそ再現できる表情や声色の絶妙なニュアンスを再現することを目指しました。
古賀: ブランドコンセプトや時代性を考慮して、プロジェクトに最適な動画フォーマットを模索しました。カメラの動きからレンズ、動画サイズに至るまでをユーザーインサイトから得られた根拠に基づいて製作することで初めて情緒的価値や新しい意味が伝わるはずです。
双方向コミュニケーションで
ブランドアイデンティティを育む
「思わずエモくなる瞬間」や「誰かに見せたいエモい景色」といった心動かされる瞬間を「#エモ味(み)」というキーワードで発信するSNS施策。発売日に複数のインフルエンサーにPR動画を投稿してもらいました。
同時多発的なインフルエンサーによるUGC(ユーザーの手で作成されたコンテンツ)の拡散で、企業からの一方向なコミュニケーションだけではなく、ユーザーを巻き込みながらブランドを育成することを目指しました。
松本: ブランドアイデンティティを浸透させるためには、ユーザーを巻き込んだコミュニケーション施策が重要です。N=1に寄り添ったプロモーションにより、ブランドのコアファンを獲得する。ユーザーとの双方向コミュニケーションを設計することで、ブランドの価値が伝搬するチャネルをつくるとともに、ブランドの情緒的価値をユーザーと育むことができたと考えています。
複雑化する社会のなかで真に「ユーザー起点」のプロダクト開発や顧客体験設計を実現するためには、ブランド開発からコミュニケーションに至るまでプロジェクトの各プロセスで顧客やクライアントに寄り添う姿勢が求められていくはず──。
そんな考えのもと、NEW STANDARDでは、今後もBDXというソリューションのさらなる改善とクライアント企業への提供を続けていきます。生活者とともに「新しいスタンダード」になるブランドや商品を開発していきたい方は、ぜひNEW STANDARDにお声掛けください。
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