ミレニアルズ及びZ世代に関する調査・研究をおこなう「NEW STANDARD THINK TANK」が、いま注目するZ世代に関するキーワードを解説していく本連載。新しい価値(イミ)を象徴するキーワードの意味や事例からZ世代の価値観をわかりやすく解説します。
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大森健史氏の著書『日本のシン富裕層 なぜ彼らは一代で巨万の富を築けたのか』で話題となった、新しい時代の象徴の一つである「シン富裕層」についてご紹介します。
「シン富裕層」とは
「シン富裕層」とは、日本の経済社会において新たな富裕層のカテゴリーを指す言葉で、親から家業や資産を受け継いだわけでなく、ここ数年で財を築いた人々のこと。
2000年のインターネット普及、2010年のスマートフォン普及によって、株の取引や投資がしやすくなったこと、あるいは2017年ごろの仮想通貨の取引の一般化、YouTubeの普及によって「シン富裕層」が勃興しました。
大森健史氏の著書『日本のシン富裕層 なぜ彼らは一代で巨万の富を築けたのか』によると、「シン富裕層」は贅沢な生活や高級品の所有よりも、自己成長や社会貢献に注力する傾向があります。
以前、ニュースタンダードキーワード!!でもラグジュアリーの進化・多様化についてご紹介しましたが、「シン富裕層」は、従来の富裕層が求めるラグジュアリー「=金銭的な豊かさ」から、ニューラグジュアリー「=精神的な豊かさ」を価値観として持っていると言われています。自分が手に届かない「モノ」を手に入れることや所有することをラグジュアリーだとするなら、自分の心理や健康に「善い」ものや、他人や社会のために「善い」ことを実践する、さらにそこに加えて「意味ある」消費をする「ニューラグジュアリー」を取り入れているのが「シン富裕層」ではないでしょうか。
>> 「シン富裕層」5つのタイプ
大森さんの本では、「シン富裕層」は、次の5つのタイプに分類されています。
1「ビジネスオーナー型」:自分の実力で企業を経営し、その資産で不動産投資などをして資産を増やします。従来タイプの富裕層と言えますが、資産形成方法によっては“シン富裕層”にも重なります。
2「資本投資型」:開業医や一流企業勤めのサラリーマンなど、一般の平均より高い給与を元手に株式や不動産、暗号資産等に投資するタイプ。自宅の購入を「投資」と捉え、売買を繰り返すことで資産を急拡大させた人もいるようです。仕事が激務な場合が多く、早期リタイアを考える人も。
3「ネット情報ビジネス型」:YouTubeやオンラインサロンなど、これまでのようにテレビやメディアなどを利用せずに自分自身で稼ぐことができるようになった「シン有名人」とも言えるでしょう。通信環境の改善やスマートフォンの誕生をはじめとしたデバイスの進化、SNSや販売プラットフォームの浸透などが重なり、少ない元手でも効率的に事業を展開することが可能になり、このようなタイプの「シン富裕層」が台頭してきました。
4「暗号資産ドリーム型」:暗号資産で数億円から数百億円の資産を手にした人たちを指します。2017年から普及した、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)で投資をすることで、資産を得た人々です。その中でも、投資の知識を持つ人と、持たずに知人などに聞いた情報で資産を得た人に分かれます。
5「相続型」:従来型の富裕層のタイプです。相続した資産を運用します。
「シン富裕層」について、5つのタイプ分けでご紹介してきましたが、共通して言えるのは、「シン富裕層」はモノに執着がないことが多く、見た目では“富裕層かどうか”は分からない人が大半だということ。
また、ネット環境があれば場所を選ばず仕事ができる場合が多く、海外移住なども驚くほど気軽に決断できるそうです。
「シン富裕層」の具体的な事例
>> 「独立インフルエンサー型」のシン富裕層
実際に、「シン富裕層」にはどのような人物がいるのでしょうか。身近に感じる人物としては、シン有名人とも言われる、「インフルエンサー/YouTuber」がいます。先ほどご紹介したシン富裕層4つのタイプの中では、3.「独立インフルエンサー型」に分類されます。例えば、YouTube登録者数が1,000万人を超えるYouTuber「HIKAKIN」や「はじめしゃちょー」などがシン富裕層として挙げられるのではないでしょうか。
他にも、これまでは芸人としてテレビで活躍していたが、現在はメディアなどを利用せずに個人オンラインサロンなどを利用して自分自身で稼ぐという点では、キングコング西野亮廣なども例として挙げられるでしょう。
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>> 売上高がバブルの最盛期を越える「伊勢丹新宿店」
伊勢丹新宿店が「バブル越え」の過去最高売り上げを記録したニュースを目にした人もいるのではないでしょうか?
百貨店大手の三越伊勢丹ホールディングスが、5月9日に発表した2023年3月期(2022年度)連結決算によると、売上高は4874億円(前年比116.5%)。営業利益は296億円で、コロナ前の2018年度(292億円)を上回ったといいます。
伊勢丹新宿本店の総額売上高は、3276億円と過去最高を記録。細谷敏幸社長は決算会見で、「過去1度だけ、3000億を超えた年が1991年のバブル期です。それ以降はずっと2000億台の2500億円程度。それが今回大幅に上回る数字でした」と、バブル期の1991年(約3000億円)を超える好調ぶりと語っています。
その顧客の中心には、「シン富裕層」がいると言います。
富裕層・超富裕層の純金融資産保有総額と世帯数は、2013年以降は一貫して増加を続けており、それはコロナ禍でさらに加速しています。
伊勢丹新宿本店は、30〜40代の「新富裕層」を中心に超富裕層・富裕層を取り込んでいます。2021年度の上位顧客5%の買い上げシェアは50.9%に上昇し、外商購買額シェアも増加しています。2月の売上高では、高級品の購買意欲が高く、時計・宝飾・ハンドバッグに加え、ラグジュアリーブランドの春物衣料も好調だったと発表しています。
東洋経済オンラインによると、伊勢丹新宿本店が富裕層を取り込むことに成功した理由の一つは、個人外商改革と言われています。同社は2022年4月から外商統括部を本格稼働。三越と伊勢丹の暖簾で分けるのは止め、場所や店舗にとらわれない外商サービスを強化しました。具体的な施策として、AIを活用した営業の強化、接客の場を店舗の外へ拡大、これまで百貨店が扱ってこなかった商品供給体制の構築、プラチナ顧客数の拡大を推進しました。
また、駐在員によるパリコレのファッションショーへのアテンド、海外での挙式やオートクチュールのオーダーなど、店舗外の新しい顧客体験価値の提供もトライアルで実施。さらに、旅、投資、自動車購入、プライベートジェットのチャーターなど、外商の品揃えを拡充しました。これらの施策は日本橋三越外商部で先行している事例で、そのノウハウを伊勢丹新宿本店にも広げているといいます。
「シン富裕層」3つの注目ポイントまとめ
1. 「シン富裕層」とは、親から家業や資産を受け継いだわけでなく、ここ数年で財を築いた人々
2.「シン富裕層」が生まれた要因は、ネットビジネスの進化と暗号資産(仮想通貨)の出現
3. 贅沢な生活や高級品の所有よりも、自己成長や社会貢献に注力する「ニューラグジュアリー」なライフスタイルを追及している
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