ミレニアルズ及びZ世代に関する調査・研究をおこなう「NEW STANDARD THINK TANK」が、いま注目するZ世代に関するキーワードを解説していく本連載。新しい価値(イミ)を象徴するキーワードの意味や事例からZ世代の価値観をわかりやすく解説します。
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※2024年3月30日に公開した記事に追加・加筆修正しました
イマーシブ(immersive)とは?
イマーシブ(immersive)とは「没入感」を意味します。ユーザーニーズが多様化する現代において、「モノ消費」から「コト消費」への移行が進み、体験そのものに価値を見出す人が増えています。VRゴーグルで楽しむメタバース(仮想空間)をはじめ、デジタル技術を活用した展覧会やアトラクション施設など、「没入感」をテーマにした新たな体験型サービスが話題を集めています。
オンラインからリアルまで広がりつつあるイマーシブは、エンタメ業界やプロダクトを超えて、体験型コンテンツを好むZ世代の消費行動を捉える上で重要なキーワードになりつつあり、TikTokでハッシュタグ #immersiveは、約40億回閲覧されています(2024年3月現在)。
非日常を求めるZ世代の心理とは?
昨年Z世代の間でトレンドとなった、絵画の世界に没入できる「immersive museum 」(イマーシブ ミュージアム)は、SNS映えはもちろん、プロジェクターを活用した映像技術による「没入感」や「非日常」を味わえると、体験型おでかけスポットとして注目を集めました。
2023年にJTBコミュニケーションデザインと伊藤忠ファッションシステム株式会社が共同調査した「令和的非日常 Z世代における生活価値観・消費傾向から読み解くこれからの旅行スタイル」によると、Z世代には「デジタル化により他者といつでもどこでも繋っている状態や日々のタスクに追われることからくる疲れから心理的に距離を置き、他者に気を遣うことなく自分らしくありたい= “快放されるひととき”を得たいというニーズ」があるといいます。

エンタメ業界のイマーシブ事例
テーマパーク:イマーシブ・フォート東京
2024年3月にお台場にオープンした、世界初のイマーシブ・テーマパーク「イマーシブ・フォート東京」は、完全没入型体験のみで構成され、アトラクションは全12種類。
その中の「ザ・シャーロック(THE SHERLOCK) ーベイカー街連続殺人事件ー」は、19世紀ロンドンを舞台に、シャーロック・ホームズの事件を体験するウォークスルー型シアター。ゲストは事件の真相を追いながら自由にストーリーに参加でき、訪れるたびに毎回違う結末を体験し、非日常の世界への没入感を味わえます。
@immersive_fort_tokyo 2024年3月1日OPEN #イマーシブフォート東京 #人生全とっかえ ♬ オリジナル楽曲 – イマーシブ・フォート東京
参照記事:東京・お台場に来春誕生、世界初の「イマーシブ・テーマパーク」で完全没入体験!(TABI LABO)
NET FLIX:NETFLIX BITES Vegas
2025年2月20日、Netflixがラスベガスに没入型レストラン「NETFLIX BITES Vegas」を期間限定でオープン。人気作品の世界観を料理で体感できる、イマーシブなダイニング体験を提供しています。
2023年に成功を収めた「NETFLIX BITES Los Angeles」の実績を踏まえ、Netflixはリアル空間での顧客体験を重視する姿勢を見せています。さらに、作品世界に没入できる体験型アミューズメント施設「Netflix House」を2025年にオープン予定であり、イマーシブ体験への注力を強めています。
参照記事:Netflixが仕掛ける没入型レストラン「NETFLIX BITES Vegas」(TABI LABO)
Apple:Apple Vision Pro
2024年2月にアメリカで発売された「Apple Vision Pro」は、デジタルコンテンツと現実の世界をシームレスに融合する空間コンピュータで、様々なイマーシブ体験を提供します。
発売に合わせて提供を開始した、Appleのオリジナルコンテンツ「Apple Immersive Video」は、空間オーディオでキャプチャされた180度の3D/8Kで撮影されており、場所や瞬間、ストーリーの中心への没入体験を提供しています。
化粧品・トイレタリー業界のイマーシブ事例
株式会社マンダム:Levätä
2024年12月2日に発売されたヘアケアブランド「Levätä(レバタ)」は、現代人の頭の疲労感やモヤモヤを解消するために開発された商品。フィンランド語で「休息」を意味するこの商品は、心地よいハーバルスパの香りと温冷感が特徴のシャンプーとトリートメントを展開。さらに「瞑想シャンプーメソッド」を取り入れることで、まるで瞑想をしているかのような安らぎを感じられ、日常のバスタイムをイマーシブな休息体験へと変えてくれます。
参照記事:忙しい現代人の疲労感を“頭”からいやす!? 新ヘアケアブランド「Levätä(レバタ)」が気になる(TABI LABO)
rom&nd:ロムアンドのおうち
日本で5周年を迎えた韓国コスメブランド「rom&nd」が、2024年12月23日から2025年1月2日までファン参加型のポップアップイベントを開催。このイベントでは、コタク(コスメオタク)のためにロムアンドの世界に入り込める「ロムアンドのおうち」を提供。ロムアンドの商品体験ができるミッションや限定グッズなど、ロムアンド尽しな特別な空間を提供しました。
参照記事:Z世代を熱狂させる「推し活」戦略! 韓国コスメ「rom&nd」 限定イベントに見る時代の変化(TABI LABO)
伊勢半:暗闇の中のルージュ店
伊勢半グループの「キスミー フェルム」が、視覚を閉ざした状態でルージュを体験するイベント「暗闇の中のルージュ店」を2025年3月27日~30日に期間限定で開催。このイベントでは、暗闇の中で感覚を研ぎ澄ませることで、新商品「ルージュアクト トリコタッチ」の質感や香りをより深く感じられるように設計されています。
参照記事:見えない感覚を呼び覚ます。暗闇のルージュ体験で「最高のひと塗り」(TABI LABO)
食品・飲料業界のイマーシブ事例
マクドナルド:WcDonald’s
「イマーシブ」は、ブランドプロモーションにも影響を及ぼしています。米マクドナルドは、アニメによく登場する、マクドナルドをパロディにした架空のハンバーガーチェーン「WcDonald’s」(ワクドナルド)の世界を楽しめる、イマーシブなキャンペーンを発表。
日本のアニメーション制作会社スタジオぴえろと提携して、初の公式ワクドナルドアニメとしてコンテンツ制作するだけでなく、3月9日から2日間、ロサンゼルスの店舗にて「WcDonald’s Immersive Dining Experience」を実施。360度プロジェクションマッピングと没入型テーブルプロジェクションで、現実世界でワクドナルドの世界を体験できる「没入型ダイニング体験」を提供します。
コカ・コーラ:K-Wave Zero Sugar
コカ・コーラは、K-popファンをターゲットに、初めてK-popファンになった時の興奮を再現したフレーバー「Coca‑Cola® K-WAVE Zero Sugar」を期間限定商品として発売。Stray Kids、ITZY、NMIXXのK-POP グループと オリジナルソング「Like Magic」を制作し、ミュージックビデオに自分の声や名前、顔を埋め込み、カスタム作品をダウンロードしてソーシャル メディアで共有できる「immersive AI experience」(没入型AI体験)を提供予定です。
K-POPカルチャーの影響力とイマーシブな仕掛けを通じて、ライフスタイルブランドとしてのコカ・コーラの認知度をさらに高め、推しとのつながりをさらに深める”没入体験”を価値と捉えてファンダムコミュニティへアプローチする優れたプロモーション事例として注目を集めています。
参照記事:推しに沼ったあの興奮を体験できる、コカ・コーラ限定フレーバー(TABI LABO)
イマーシブ(immersive)のキーポイント
・イマーシブとは、ユーザーの五感に訴えかけ没入を可能にする新たな体験型サービス
・他者といつでもどこでも繋がるZ世代は、イマーシブ体験で非日常を味わう
・イマーシブ体験はユーザーの記憶に残る体験を生み出すため、ブランドプロモーションにも活用されつつある
What’s NEW STANDARD?
STANDARD:情報やメッセージの伝達を中心としたプロモーション
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NEW STANDARD:サービスや製品を通じて体験の深化を追求したプロモーション
