ミレニアルズやZ世代の生の声を起点に、国内外でいま生まれている新しい基準や価値観を紹介する「ニュースタンダードセミナー!!」の第11回がオンラインで開催されました。
今回のセミナーは、TikTok×クリエイターで課題を解決 -スモールマスから生まれる新たなマーケティング- というテーマでお届けしました。特別ゲストに、TikTokプロモーションのエキスパートである株式会社Nateeの朝戸太將さんや、人気動画クリエイターのほのぴすさん、ウンパルンパさんもお迎えし、ファンダム(ファン起点のモメンタム)とともに形成されるスモールマスコミュニティの背景や、価値観の細分化が進むこれからの時代のマーケティングのあり方についてお話いただきました。
(前編「多くのクライアントが誤解しがちな「ショート動画」本来の強みとは?」はコチラから)
ここでは、ほのぴすさんやウンパルンパさんのクリエイター2名と、NEW STANDARD社のZ世代リサーチャーも加えたリアルボイスセッションの一部をご紹介します。ファシリテーションは同じくNEW STANDARD社の執行役員 浅井が担当しました。
【登壇者】
「大事にしているのは、離脱させない工夫、ストーリー性、コメントコントロール」
ほのぴすさん(以下:ほのぴす):まず、ショート動画のプロモーションに限らず冒頭2〜3秒以内のアイキャッチが大事だと言われて、もちろんそれも大事なんですが、私はそれ以上に「離脱させない工夫」を意識しています。それが1つめですね。アイキャッチはある意味で視聴者様を惹きつけるためのエサだと思うんですが、その後の紹介する商材とどれだけ関係性があるか、が重要だと思います。
@noponopisu2
ほのぴす:2つめに意識しているのが、ストーリー性です。クライアントさんが伝えたいメッセージや訴求ポイントは色々あると思うんですが、それをそのまま読み上げるのではなく、クリエイター自身の言葉や表現で翻訳して、さらに言葉だけではなく、視覚、聴覚、画面から取り入れられるすべてを用いて動画の中で表現する、それを考えるのが私のお仕事だと思っています。
3つめに意識しているのが、動画のなかで紹介した「商品やサービス」に対してどれだけ注目してもらえるか、ということです。どういうことかと言うと、再生数やリーチ数、いいね数などはすごく分かりやすい指標で、ここに成果基準を求めるクライアント様が多く、もちろんそれもめちゃめちゃ大事です。ただそれ以上に、たとえば100件コメントがあったとして、商品に対してのコメントがどれくらいついているのか、を大事にしています。「ほのぴす可愛い」などのコメントではなく、必ず商品やサービスに関するコメントに返信をするようにしています。最初に私がどのコメントに返信するのかはその後のコメントを流れを作るうえでもとても重要ですし、これを意識する前と後では商品に対するコメントの数が大きく変わりました。とくにTikTokはコメントを見る風習がありますし、そこから保存やシェアなどの行動に繋がっていくので重要視しています。
NEW STANDARD(以下:NS)浅井:ありがとうございます。このお話を聞いたうえで改めてほのぴすの案件動画を見てみると、さまざまなロジックが凝縮されているんだなと感じます。そこにさらにほのぴすさんらしいアウトプットの安心感も担保されていて、お仕事を頼む人たちにとってもすごく分かりやすいんじゃないでしょうか。ここで1つ質問が来ているのでご紹介させてください。「TikTokはX(旧Twitter)と並び、アンチコメントが発生しやすいイメージがあるのですが、アンチコメントを回避する際に意識されていることは?」とのことですが、ほのぴすさんいかがでしょうか。
ほのぴす:たしかに企業様の公式アカウントだとアンチコメントが来るのはあまり良くないのですが、私のアカウントであれば、それをアンチコメントと捉えるか、議論を巻き起こすコメントと捉えるかで話は変わってくると考えています。議論を巻き起こすコメントはめちゃくちゃありがたくて、それによって動画のコメント数が増えますし、再生数や視聴率も伸びるので、私自身はそれほどアンチコメントをネガティブに捉えていません。基本的にコメントの流れは上位に出てくる「いいね」が多い内容につられていくので、先ほどお話ししたように自分が上位に出したいコメントや、いい意味で議論を巻き起こしてくれそうなコメントにリアクションをすることで、80-90%はコントロールできるんじゃないかなと感じています。初動の仕掛けが大事だと思います。
NS浅井:なるほど。そうなるとコミュニティのなかで濃い議論も生まれますし、方向性が作られていくというのはおもしろいですね。ノイズではなくポジティブに捉えて流れを作っていくことが大事なんですね。
ほのぴす:私自身、アンチコメントのおかげで伸びたクリエイターでもありますし(笑)、議論を生み出したコメントを引用して動画にすると通常よりエンゲージも高くなります。ユーザーにとっては受け入れられやすくなる基盤にも繋がると思います。私はそういうコメントもすべて保存していて、積極的に活用しているんです。
「つい言いたくなるワードを起点に、共感や親近感を生み出していく」
ウンパルンパさん(以下:ウンパルンパ):ほのぴすさんの非常に分かりやすいお話のあとでプレッシャーなんですが(笑)、僕が意識していることは「ワード」ですね。たとえば僕は「なんすかー」や「いやもうやーれーよ」というフレーズをよく使うんですが、とくに中高生にはそういった脳裏に焼き付いて離れないようなワードが刺さると感じています。イベントや街で会うと「あのセリフ言って!」となりますし、理想は僕のモノマネを学校の教室でしてもらうことです。いかにそういうフレーズパターンを作っていけるかがα世代には大事なポイントになっていくかなと思っています。
@unparunpa1028
僕の動画は学校を舞台にした先生や部活の顧問、生徒などの「あるあるネタ」が多いんですが、やはり「共感」という感情は好きになってもらうための近道なのかなと思うんです。大人でも「昔こうだったな」と懐かしく思えるし、α世代にとっては今まさにドンピシャの学校生活で起こりうる内容で、共感しやすい。この共感を大切にしていくのは、企業のプロモーション動画にも通ずる部分だと考えています。
ウンパルンパ:最近、とある企業さんのプロモーション案件で、学校にサプライズ潜入するという非日常的なシチュエーションを仕掛けました。これを見ることによって「もしかしたら自分の学校にも来るんじゃないか」「あれ、どこの学校だろう」「いきなり来たらおもしろいな」など、同世代の子たちが親近感を持ってくれたり、教室で話題にしてくれることもあるので、とても相性がいいパターンだなと感じました。そんなに何度も使える手法ではないのですが、学校という日常のなかに「特別感」を感じてもらうことで、α世代を惹きつけたり、盛り上がりに繋げていけるのかなと考えています。
NS浅井:どうしても企業目線になると「商品を説明したい、理解してもらいたい」となりがちなところですが、どう共感してもらうのか、どう捉えてもらうのか、が大事というのがおふたりの話から繋がってきてとても興味深いですね。
「クリエイターのみなさんの、交渉フォーマットに注目しています」
NS金沢:私が最近注目しているクリエイターはkiyoshiさんという方で、マッチングアプリあるあるを投稿されているんですが「絶対そんなあるあるないでしょっ!」という「逆あるある」を投稿しているんですね(笑)。キャラクターが立っていて話し方も独特なので、フィードで流れてきたときについ見ちゃうんです。マッチングアプリあるあるというフォーマットだけど、マッチングアプリをやったことない方でも楽しめるようになっているのが新鮮だなって思います。
@kiyoshi_tinder
NS金沢:あとは、プロモーション系で注目しているのが「交渉シリーズ」です。クリエイターの方が企業に出向いて、商品の値引きなどを交渉するフォーマットですが、コンテンツのなかで商品の認知拡大や購買も促しながら、フォロワーの方が手軽に買えるようになっていたり、いつも見ているクリエイターなら信頼もできるしと、とてもうまい型になっているなと感じます。現在は美容系の商材でこのフォーマットをよく見ますが、どの業界や商材でも応用できるのではないでしょうか。
「ものづくり系クリエイターとプロモーションの可能性に注目!」
NS高田:私が最近気になっているのが、20代の男性クリエイターで、joeandoさんという方です。ハンドメイドの洋服を制作しているクリエイターさんで、もともとはパートナーが「セットアップが欲しい」って言ったら「分かった」と言って、布から買って、全部サイズを測って、デザイン画も描いて、イチから作る、みたいなほのぼのとした動画をあげていた方なんですが、最近では音楽アーティストとコラボして、彼らのライブ衣装を作る、というような投稿もしているんです。
@joeando
NS高田:動画内にそのコラボアーティストも出演されていて、「つくってくれる?」「もちろん」みたいな交渉のやりとりから、その衣装でステージに立つところまで動画で見れるので、とても楽しくチェックしています。見ている側としては、そのアーティスが初見であったとしても興味を持つきっかけになりますし、逆にアーティストのファンの方がjoeandoさんの動画を見ることもあるでしょうし、理想的なコラボの関係性が出来上がっている印象です。こういった、ものづくり系のクリエイター×プロモーションという形も根強いコアファンを起点に広がりますし、ここにアーティストなどを掛け算することで2倍〜3倍のウェーブになるのではないかな、と感じました。
<Q&Aの一部をご紹介>
ここでは、参加者のみなさまからいただいたご質問にクリエイターさんから回答をいただきましたので、その一部をご紹介します。
Q:同じショート動画でもTikTokとInstagramとTouTubeショートで使い分けるべきポイントや構成などはあるのでしょうか?
A:簡単にまとめると、Instagramは情報、TouTubeショートはエンタメ、TikTokは情報+エンタメです!(ほのぴすさん)
Q:コメントが紹介商品についてのものになっているかを重視しているというお話は非常に良いなと思うものの、リーチや再生数といった定量的なデータと比べて、クリエイターの価値をクライアントに認めさせるのが難しくなるのでは? と思うのですが、どうやって解決していますか?
A:私の場合は保存数、シェア数を重視しています。特に保存数はわかりやすい指標で、クライアント様にもご説明しやすいかと思います。(ほのぴすさん)
Q:フォロワーやファンの声はどのように参考にしたり、クリエイティブに取り入れたりしますか?
A:動画に対するコメントは参考にしますが、動画の視聴者は外部リーチが多くファンではないことがほとんどなので、大きく動画のクリエイティブに取り入れることは少ないです。視聴者にとって「言語化できていないが潜在的に気になっていること」を動画にすることが多いので、あくまでも動画のフックになるものがあれば活用する程度にとどめています。動画ではなく、Instagramのフィードやストーリーではファンとのコミュニケーションの一環として頻繁に取り上げており、ここでコアなファンと関係の構築をしています。(ほのぴすさん)
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前編では、「多くのクライアントが誤解しがちな「ショート動画」本来の強みとは?」をご紹介しています。ぜひ合わせてご覧ください。
※本記事では、セミナーの内容を一部編集してまとめております。