Z世代(Generation Z、GenZ)は、1990年代中盤〜2000年代に生まれた、新たな価値観をリードする「ソーシャルネイティブ世代」だと言われています。世界的にはZ世代の人口比率の高まりから、これからの消費を担う世代として注目されています。そしてZ世代については、いわゆる年齢論や世代論のみで語るべきではなく、さまざまな価値観におけるこれからの新しいスタンダードを生み出すトライブとして捉えていくことが重要です。ここでは、そんなZ世代を理解するための16のポイントを紹介していきたいと思います。
01.
ソーシャル&メタバースネイティブな世代
物心ついた頃からスマホやSNSが身近な存在であったZ世代は、一般的に「ソーシャルネイティブ世代」だと言われています。Twitter(現X)、Instagram、TikTok、BeReal、YouTube、LINEなどが彼らのコミュニティ観を形成していくための起点になったことは間違いありません。
さらにZ世代のネットワーク形成の起点はSNSだけにとどまらず、フォートナイトやeスポーツ、メタバースやVRにまで広がりを見せました。学生時代からオンラインゲームで遊び、Zoomで授業を受けるなど “つなぎっぱなし” がスタンダードな彼・彼女らにとっては、メタバースのような三次元仮想空間もその一環であり、当然ひとつのコミュニティとして成立しているのです。
また、イマーシブ(没入感)をテーマにしたアミューズメント施設や、広告プロモーションが増えていることからも、Z世代のオンライン・オフラインがグラデーション化していることが読み解けるでしょう。
>Z世代は「リアルとネット」「日常と非日常」がグラデーション化
02.
さまざまなシーンで時間対効果(タイパ・タムパ)を重視
Z世代は、コストパフォーマンスよりも、タイムパフォーマンスを大切にする“タイパ(タムパ)” 志向が強いと言われています。例えば、”ググる”(ブラウザ検索)より、“タグる”(SNS検索する)のように、自分がほしいテイストに合った情報や、仲間に出会えるSNS検索に “タイパ” は欠かせません。TikTokやストーリーズのショート動画、切り抜き動画はスタンダードとして浸透し、そこで気になったものを後でじっくり時間をかけてフル視聴する、といった行動傾向も特徴的です。
“タイパ” を大切にする傾向は、買い物や食事、旅行や移動、働き方まで多岐に広がっています。BNPL(Buy Now Pay Later)のような後払いサービスも広がり、購入できる金額が貯まるまで待つのではなく、欲しいと感じたときに購入する傾向も強くなっており、これらも“タイパ”志向の現れと言えるでしょう。
さらに、コンビニジムやスリープテック、オンライン診療、AI就職活動など、テクノロジーと連動しながら様々な形で“タイパ”が日常生活に浸透している点も注目です。
>買い物や食事、旅行、 移動、働き方など多様化するZ世代のタイパに注目
03.
サステナブルで懐古主義的な傾向あり
90年代や2000年代初頭のカルチャーにノスタルジーを感じるZ世代。「Y2Kファッション」や「古着」はひとつのスタンダードになり、2026年までに古着市場は現在の約2倍となる8兆円規模まで成長していくと予測されています。
今よりも確実性が高く、よりシンプルだった時代への憧れやノスタルジーとともに、ファッションが与える環境負荷を考慮した、サステナビリティの発想も影響しているでしょう。Z世代は他の世代と比べて最もサステナビリティに関心を持つ世代ですが、エクストリーム層と無関心層で意識は二極化しているとも言われます。しかし多くのZ世代はブランドよりも持続可能性を重視して購買の意思決定を行うというデータもあり、持続可能な消費者行動が浸透している世代です。自分にとってGOODな選択肢が、結果的にサステナビリティにつながるように、無駄なく長く愛用できるマイボトルやマイバック、さらにはフードロスへの配慮など、知らず知らずのうちにサステナビリティな生活が浸透しているのです。
>無駄なく愛用できる古着やマイボトルは、もはやZ世代のスタンダードに
04.
健康食も、ギルティフードも好き。大事なのは食体験のメリハリ
10代の頃から、食に関するグローバルなトピックやヘルシーな食事の情報に触れてきたZ世代。SNSやYouTubeを通して得た、糖質やタンパク質、オーガニックや食品添加物などへの予備知識も高く、健康や美容を意識したバランスのいい食事を求めることが特徴的です。
一方で、SNS上で見る “ギルティフード” と呼ばれるような背徳感のある食事にも関心が高く、一風変わったスナックフードをSNSでシェアしたり、チートデイには思い切り食べるなど、メリハリをつけていることも興味深いポイントです。
また、コロナ禍というかつてない状況を体験しているからこそ「せっかくの外食機会は楽しむ」「目の前の人とのコミュニケーションを大切にする」という考えも強く、食事ならではの “体験” や、その場でしか味わえないような特別なコミュニケーションを重視する傾向もあります。
>高い健康リテラシーとギルティフード文化のフシギな共存が特徴的なZ世代
05.
トクる、AIチャット、SGE。多様化する検索にもアジャスト
ミレニアルズが「ググる、から、タグる(Google検索からInstagramのハッシュタグ検索へ)」と変遷した世代であるとすれば、Z世代はさらにそこから「トクる(TikTokを活用した検索)」へと情報収集の方法を変化させた世代です。
Instagramにおける発見タブの活用「タブる」はもはや日常的なSNS習慣となり、 Pinterestを自分の趣味やインテリア、ファッションなどの主要検索プラットフォー ムとして使うZ世代も増加しています。
また、TikTokでの検索は「受身型検索」とも言われ、検索ページにあらかじめ複数のキーワードが表示されるシステムで、ストレスを感じる前に自然と検索結果を見てしまう、という設計になっています。
また、ChatGPTやMicrosoft Bingなどの生成AIチャットが検索行為そのものに革命を起こしており、GoogleのSGE(Search Generative Experience)は、新たな 「ググる体験」とも言われ、日進月歩で進化しているのです。
>多様にプラットフォームを行き来し、素早く情報 を精査するZ世代
06.
リアル、ナチュラル、エフォートレス。自然体への共感
ミレニアルズにとってのSNSパートナーが「Instagram」だったとしたら、より等身大でありのままの姿が求められる「BeReal」や「TikTok」、さらには「ライブ配信」などがZ世代にとっての新たなパートナーと言えるでしょう。そこには、加工が強すぎる“映え”フィルターや、修正しすぎたコマーシャルフォト、釣りと言われるように誇張されたタイトルコピーなどへの反動が背景にあると言われています。
SNS上では、オーセンティック(本物の、信頼できる)、エフォートレス(頑張りすぎない、肩肘張らない)といったキーワードが感じられるインフルエンサーが、より共感を集める傾向が見られます。
これらは、恋愛観やデート観にも同様の傾向が見られ「お互い自然体で、楽しく過ごせること」を求める傾向にあり、デート代の支払いに関する価値観や、デートスポットを選ぶ際にも影響を及ぼしています。それらは、デーティングウェルネスという言葉が注目されたことからも読み解くことができるでしょう。
>加工や頑張りすぎは△。Z世代には「エフォートレス」な姿が理想的
07.
K-POPだけじゃない。アジアカルチャーへの親近感
映画やドラマ、音楽といったエンターテインメントはもちろん、新興SNSや食文化、 美容、聖地巡礼を兼ねた旅行など、さまざまなシチュエーションで「アジアカルチャー」への親近感を感じさせるZ世代。
その背景には、アジア各国の経済成長や、韓国のポップカルチャーの躍進などを無視することはできず、Z世代がSNSやYouTubeを見始めたときからそれらの情報が当たり前に溢れていたことも挙げられるでしょう。
身近な例としては、Netflixの日本でのランキングを韓国ドラマが上位独占していることや、中国版Instagramとも言われる「RED(小紅書)」をきっかけに、新たなメイクトレンドが話題になることも象徴的だと言えるでしょう。
音楽に目を向けると、K-POPや韓国のアイドルグループの人気はもちろん、タイや中国のHIPHOPカルチャーが話題に上る機会も増えています。
>エンタメ、美容、食。アジアカルチャーとZ世代の身近な関係性
08.
アルゴリズムや広告コンテンツに対する 鋭い審美眼
友人との何気ない日常から、インフルエンサーのバズ投稿、生活の役立ちTips、そして世界のシリアスなニュースまで、さまざまな情報をSNSで収集するZ世代にとって、アルゴリズムに基づいたレコメンド(おすすめ)は、決して避けるべき対象ではなく、共存していく対象だと言えるでしょう。
情報過多でファストな現代においては、アルゴリズムが情報のセレクトを手助けしてくれるケースも多く、そこに紐づいた広告プロモーションでさえも “正直さ” さえあればZ世代の心を掴む傾向にあります。見方を変えると、物心ついた頃からSNSに触れているためアルゴリズムリテラシーが高く、自分たちが求めるものに対してのコスパやタイパの審美眼が鋭いのも特徴的です。
また、アルゴリズムを有効に見極めて購買などをする一方、意識的に「脱アルゴリズム」を求め、SNSでは出会えない新鮮な情報に触れたり、デジタルデトックスやリアルなコミュニケーションを大切にする傾向もあります。
>目的に合わせて、アルゴリズムと共存する高いリテラシーを持つZ世代
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ミレニアルズ及びZ世代に関する調査・研究をおこなう「NEW STANDARD THINK TANK」による、世界中で今生まれている新しい基準や価値観をまとめた四半期レポートは、以下から無料でダウンロードいただけます。
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09.
ノンアル&低アルへのシフト。お酒の楽しみ方が劇的に変化
ミレニアルズに広がった「ウェルネスブーム」から、コロナ禍を経て、Z世代を中心にお酒を控える、もしくはノンアルコールや低アルコールを選択するトレンドは世界中で加速しています。飲める人にとっては「あえて飲まない」選択肢であり、飲めない人にとっては、「お酒好きな人たちと一緒に楽しめる」選択肢が広がったと言えるでしょう。
以前は、ノンアルコールや低アルコール飲料はおいしくない、バリエーションが少ないなどの課題もありましたが、ここ数年で大きく解消。このタイミングで20歳前後を迎えているZ世代にとっては、コンビニでも、居酒屋でも、「ノンアル&低アル」の幅広い選択肢がスタンダードになりつつあるのです。また、飲まない・飲めない友人がいたとしても当たり前に、みんなが楽しめるようにする、という価値観が浸透しています。飲める人も飲めない人も「一度飲んでみたい!」と思えるようなノンアル& 低アルの商品も増えており、引き続きバリエーションの多様化に注目です。
>「飲む、酔う」のスタイルにも多様な選択肢を持つZ世代
10.
キーワードは、セルフケア。自分自身の心地良さを大切に
2023年のPinterest Predictsでも注目ワードとしてピックアップされた「セルフケア」は、まさにZ世代を象徴する価値観のひとつだと言えるでしょう。半ば強制的に自分自身と向き合わざるを得なかったコロナ禍の影響もありますが、Z世代はさまざまなアプローチから自分の心や体と向き合うための方法を模索しているようです。
たとえば、美容や睡眠、部屋のコーデ、旅行、サウナ、ジャーナリングなど、誰かの手によって癒やされるセラピーだけではなく、自分自身で癒すことができる「セルフケア」が増えているのも特徴的です。
それらは恋愛観やパートナー選びの際にも重要なファクターになっており、セルフケアできる人(=つまり自分の機嫌は自分で取れる人)が求められる傾向は納得できるところでしょう。仕事でもプライベートでも、自分自身が消耗してしまう前に、適度に「セルフケア」しようと試みるのが、Z世代の特徴だと言えるでしょう。
>Z世代は、自分だけではなくパートナーや周囲のセルフケアも尊重する
11.
クレバーで、安全思考。サプライズアレルギーな傾向も
Z世代はよく「失敗したくない世代」だと言われます。多くの情報に触れられるからこそ、事前にレストランのメニューを見ておきたい、映画のレビューを読んでおきたい、コスメの口コミをチェックしておきたい、のように安全・安心を求めています。
「良かった、悪かった」がSNS上に大量にシェアされる時代なため「無駄な失敗はしたくない」と考えるのは、当然のことなのかもしれません。
また、2023年にメルカリ総合研究所が行った調査によれば、失敗だけではなくプレゼントなども含めた「想定外」の出来事にストレスを感じやすい(サプライズアレルギー=リスク回避)傾向があるそうです。安心や確実性を重視しており、できるだけ想定外のことを避けたいと考えるZ世代は全体の6割以上いるという調査結果も。
Z世代が予測不可能なサプライズを苦手とし、リスクを回避しようとする背景には、長引く不況やVUCA時代において、少しでも日々の不安を減らしたいという気持ちの現れとも言えます。
>リスク回避をするのは、VUCA時代を生きるZ世代の自己防衛スキル
12.
「こうあるべき」に縛られたくないジェンダーフルイド世代
Z世代は最も多様で多文化で、アメリカではZ世代の約20%がLGBTQを自認し、性自認や性的指向が変化するジェンダー・フルイドな世代であると言われています。デジタルやソーシャルメディア以前の生活を知らない最初の世代である彼/彼女らは、まさにオンライン中心で育った世代。そんなZ世代にとって重要なのは、「こうあるべき」というひとつのステレオタイプで自分自身を決定づけるのではなく、個々人が多様な自分自身のあり方を模索・実験し、時間の経過や自分自身の変化とともにアイデンティティを形成・変化させることです。
SNSや動画プラットフォームを通じて、政治経済におけるジェンダーの問題から、著名人のカミングアウトまで身近なトピックとなったことで、よりニュートラルな価値観がスタンダード化。映画や海外ドラマ、海外アニメにおいても多くの価値観が学びとれ、急速に浸透したと言っても良いでしょう。
>最も多様で、最も多文化な、ニュートラルさを持つZ世代
13.
効率的、サステナブル、選択肢あり。働き方の新しいスタンダードへ
とかく、上の世代にとっては「理解しがたい、共感しづらい」といった文脈で語られがちなZ世代の仕事観や働き方。しかし、さまざまなデータを読み解くことで見えて くるのは、Z世代が「効率的で、サステナブル(持続可能)で、選択肢がある働き方」を求めているということ。本来はこれらすべて、どの世代にとっても喜ばしいワークスタイルなのではないでしょうか。
就職活動や新卒時代を「オンライン中心」で経験してきた彼・彼女たちにとっては、上司や先輩との人間関係が重要であることは間違いありませんが、従来の対面コミュ ニケーションによる関係構築だけではなく、たとえリモートワークであっても丁寧にコーチング、ティーチング、メンタリングをすることで、存分に力を発揮してくれるでしょう。
また、収入アップ目的だけではなく、スキルアップや人脈形成のために「副業」を希望するZ世代が多いのも特徴のひとつだと言えます。
>Z世代は、組織でも自分らしく。ワークライフバランス2.0
14.
ゆるやかに、ほどよく。新しい「つながり思考」
Z世代のコミュニケーションについて、「対面が苦手」「SNS疲れやSNS離れが起きている」といったトピックが取り上げられることが多いですが、一方で、ミレニアルズやX世代と比べて「コロナ以降も人とのつきあい・交際費にお金を掛けたい意向」が高く、物質的な所有欲(モノ消費)よりも、他者との交流をするために必要な消費(コト消費)を重視する傾向にあると言われています。
多感な時期にコロナ禍を経験しているからこそ、リアルなコミュニケーションの価値により自覚的であり、友人との食事や、体験を起点にした時間を気心の知れた人と過ごし、思い出に残すことを大事にしています。
ただし、仕事などの関係性による半ば強制的な「つながり」への苦手意識は高く、友人関係においても、ゆるやかでほどよい「つながり」を求める傾向にあります。
また「時には、つながりから解放されたい」という「ひとり思考」も共存しているため、ソーシャルネイティブ世代ならではのバランス感覚の良さとも言えるでしょう。
>Z世代は「つながり」に敏感で自覚的な、SNSネイティブ世代
15.
アップデートする、お金の価値観。オープン、ポジティブ、メリハリ。
長引く不況のなかで成長し、豊かさやラグジュアリーについて多様な捉え方を持つZ世代。お金を浪費するだけの贅沢だけを良しとせず、低予算でも趣味を充実させ、他人と比較せずに自分らしさの追求を重視していると言えるでしょう。
自由に使えるお金が限られるなかで、さまざまな悩みを抱えながらも、ボリューム重視の飲食店や無料で楽しめるコンテンツの情報をシェアし合うなど、工夫して生活を楽しむ方法を模索しています。
そんななか、TikTokでは「#loudbudgeting」という節約や貯蓄をオープンにする投稿も増え、さらには自分自身のために消費を楽しもうとポジティブマインドを共有する潮流も生まれました。「推し消費」のように、使うときはしっかり使う、とメリハリがあるのもひとつの傾向だと言えるでしょう。
一方、SNSを通じて資産形成や投資について知識を身につけるトレンドも強く、先行きが不安だからこそ、高いリテラシーの必要性を感じているのです。
>もちろんお金は大事。でも縛られすぎずメリハリを楽しむZ世代
16.
旅に求めるのは「非日常」と「リセット」
コロナ禍にはさまざまな行動制限を余儀なくされましたが、とくにダイレクトに影響を受けたのが「旅・旅行」でしょう。20代前後という、もっとも旅からのインスピレーションを受けやすい年頃で我慢せざるを得なかったZ世代にとって、旅に「非日常」や「リセット」を求めるのは当然のことだと言えるかもしれません。SNS上では“自分以外”の誰かの非日常に手軽に接しているからこそ、実体験による解放を求めているのです。
また、Booking.comの調査によれば、約65%の旅行者が「リセットのため」に旅行をしており、とくに若年層であるほど日常のストレスを強く感じ、その解消や、気持ちの持ち方をプラスに転じさせるための手段として、旅行に行く人が多いと言われています。
旅に非日常やリセットを求めるのは、彼らの親世代やミニレアルズも同様では?と感じるかもしれませんが、修学旅行や卒業旅行、海外留学などを一度断念せざるを得なかったZ世代にとって、たとえ言葉は同じでもその意味は大きく異なるでしょう。
>Z世代は、日常と距離を置き「自分をリセット」するための旅へ
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