ミレニアルズ及びZ世代に関する調査・研究をおこなう「NEW STANDARD THINK TANK」が、いま注目するZ世代に関するキーワードを解説していく本連載。新しい価値(イミ)を象徴するキーワードの意味や事例からZ世代の価値観をわかりやすく解説します。
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Soft Saving(ソフトセービング)とは?
Soft Saving(ソフトセービング)は、Z世代に広がる現実的で柔軟な支出・貯蓄アプローチを指します。貯蓄よりも個人の成長や経験、メンタルヘルスを重視して、ストレスの少ない快適な生活を優先するのが特徴で、経済的成功やFIRE(Financial Independence, Retire Early)を目指して忙しく働き、老後の貯蓄を重視する従来の価値観とは異なります。
Soft Saving(ソフトセービング)の背景には、TikTokで流行した Soft Life(ソフトライフ)トレンドがあります。高収入だがストレスや不安を伴う仕事からは静かに離脱し、給料が低くてもワークライフバランスの良い仕事を選択して、小さな喜びで自分の日常を満たし、精神的・感情的・身体的な健康を保つ考え方が根底にあります。
@enashaolivia soft life living only🥹
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アメリカ:Z世代の半数以上は親から経済的援助を受けている
Bank of Americaが実施したアメリカのZ世代を対象とした調査によると、親や家族からの経済的援助を受けて生活する人は54%に上ります。物価高騰に対応するため、67%が生活スタイルを変更。具体的には「外食を控える」「友人との外出を減らす」「より安価な食料品店で買い物をする」などの対策を講じています。
57%は3カ月分の生活費を賄う緊急用の貯蓄がなく、毎月の給与の一部を預金口座に回せているのはわずか15%だといい、Soft Saving(ソフトセービング)がZ世代にとって現実的な選択肢になっていることがうかがえます。
中国:リベンジ消費ならぬ「リベンジ貯蓄」に励むZ世代
高度経済成長から一転、不動産バブルの崩壊など景気減速に直面する中国のZ世代も、深刻な就職難や先行き不透明感の高まりから、節約や貯蓄への関心を示しているようです。
CNBCやForbesによると、ゼロコロナ政策後の「リベンジ消費」とは真逆の「リベンジ貯蓄」が若者の間でトレンドに。SNSで毎月極端な貯蓄目標を設定し、貯蓄パートナーを見つけて、積極的に支出を削減するための方法をシェアし合うなど相互に助け合っているといいます。節約法には、高齢者を対象に手頃な価格で健康的な食事を提供する公共の地域食堂の利用なども含まれ、支出を減らす以外に選択肢がない苦しい状況が読み取れます。
参照:China’s young people are ‘revenge saving’ even as Gen Zers around the world are piling up debt(CNBC)
参照:Revenge savings: New trend among Chinese youth(Forbes)
日本:MZ世代は貯蓄率高め、Z世代は「トキ消費」「推し活」
一方、日本のMZ世代も、節約・貯蓄に励みながらも、「トキ消費」「推し活」にお金をかけているようです。消費者庁の「令和4年版消費者白書」によると、2015年以降、世帯主が34歳以下の世帯は全体平均と比較して平均消費性向が低い一方で、平均貯蓄率が増加傾向にあります。
また、「現在意識的にお金をかけているもの」を「参加型のイベント」と回答した人の割合は、全体の6.6%に対して10歳代後半が16.3%、20歳代が16.5%、さらに「有名人やキャラクター等を応援する活動」は、全体の6.6%に対して10歳代後半が32.9%、20歳代が22.2%であり、「トキ消費」「推し消費」は若者に特徴的な消費形態であるといえます。
参照:令和4年版消費者白書 第1部 第2章 第2節 (1)若者の消費行動(消費者庁)
Soft Saving(ソフトセービング)のキーポイント
・歴史的な物価高騰で支出を減らし節約する以外に選択肢がない若年層が、貯蓄に対して独自のトレンドを形成
・経済的成功やFIREを目指して老後の貯蓄を重視する価値観から静かに離脱
・将来の貯蓄よりも、現在の個人の成長や経験、メンタルヘルスを重視
What’s NEW STANDARD?
「貯蓄」
STANDARD:老後や、もしもに備える
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NEW STANDARD:将来のための貯蓄額を減らし、今の生活を充実させる
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