スマホでチェックしていたときと見比べて「思った通りきれいだな」「想像してたより微妙だな」と答え合わせをするような旅行に、ちょっと飽きていませんか?
2026年にMZ世代が求める旅は、ただ素敵な景色を眺めたり、ビーチでゆったり過ごすような休日ではなくなりつつあるようです。
体温が上がる「スリルケーション」を求めて
Pinterest predicts 2026(ピンタレストのトレンド予測)によると、「スリルケーション」が旅トレンドの注目ワードの1つに挙げられています。文字通り「スリル」と「バケーション」を合わせた造語で、心臓がバクバクし、思わず叫び出したくなるような本気のアドベンチャー体験を旅に求め始めているようです。
ここ数年の休日の過ごし方といえば、仕事や学校の疲れを抜くための「休息」や「適度な運動」が主なトレンドでした。「スリルケーション」は、その逆とも言えるでしょう。旅先であえて過剰とも言えるくらいアクティブに過ごし、自分自身の眠っていた感覚を呼び起こすことに価値を感じているのです。パソコンの前で思考モードに偏りがちな平日から一転、自分の「感覚」にフォーカスできるスリルケーションに共感できる人も多いのではないでしょうか。
「スリルケーション」ってどんなところに行くの?
綺麗な景色を眺めるだけじゃ物足りず、その景色のなかに飛び込んで、泥だらけになって、ヘトヘトになるまで遊び尽くす。そんな能動的な姿勢がスリルケーションの特徴です。たとえば、
・川でのラフティング:あえて激流に飲み込まれるラフティング体験もその1つ。スマホも持ち込めない水上で、自然と対峙しながら、一歩間違えれば……という緊張感と達成感を楽しむアクティビティです。もちろんガイドに従い、安全面を最大限考慮することは大前提です。
・つり橋:ヒヤヒヤするような傾斜のつり橋で極限の恐怖体験をあえて選ぶのもスリルケーション。日常では味わえない自分の「直感」を呼び覚ますことで、頭の中を真っ白にしてその瞬間のバケーションに集中できるのです。
なぜ、わざわざ「スリルで疲れる旅」を選ぶのか
デジタルツール上でも多くの情報に触れられる今、事前にスマホ越しに絶景を疑似体験することができ、ただそこに行くだけではあまり驚きがありません(むしろスマホで見ていた景色より微妙で、ガッカリするなんてことも多いでしょう)。でも実際に、高所で足がすくむ体験や、大自然の冷たい水に驚いたりする「身体感覚」だけは、疑似体験できない「自分だけのもの」です。
日常生活を強制的に忘れてしまうほどの衝撃やスリルで上書きすることが、フィジカルでできる最高のリフレッシュだという価値観が浸透し始めています。
つまり、快適な場所で休んで心身の疲れをリセットする「癒やしの休日」も大事ですが、刺激の中に飛び込んで思考から感覚へスイッチを切り替える「覚醒の休日」も大事、という価値観なのでしょう。
リサーチャーの視点:「スリル体験」で自分らしさを取り戻す
MZ世代がスリルを求めるのは、予定調和で予測可能な「休暇」や「余暇」の過ごし方への反動なのかもしれません。社会全体の予測可能性は下がる一方、ここ数年でウェルビーイングなどの価値観が浸透し、休暇や余暇の過ごし方が画一的な方向になっていったこともあるでしょう。
せめて、たまにの旅行くらいはテンプレート通りにするより、正解のない、自由に振る舞える「スリルケーション」のほうが人目を気にせずはしゃげて、自分らしさを取り戻すきっかけになっているのかもしれません。普段は出さないほどの大声で叫んだり、足が震えたり、見たこともない自分の姿に出会えることは、新しい意味を持った「コト消費」とも言えるでしょう。
しかしMZ世代の声を聞くと、リラックスしたり映えを求める旅行を決して辞めたわけではありません。静かに内省して自分を整えるか、あるいは激しい刺激で日常をリセットするか。プレイリストを選ぶように、その日の気分で旅の激しさを選んでいることがポイントになるでしょう。


