私たちは現在、かつてないほどに「アテンション(注意)」が飛び交う世界に生きています。スマホを開けば入ってくる他人の情報や、絶え間ない通知。デジタル体験は依然として便利なものへと進化し続けていますが、情報はいつしか日常に侵略するノイズになり、底知れぬ疲弊を感じている人も多いのではないでしょうか。
このような背景から、SHIBUYA109lab.が2026年のトレンドキーワードとして取り上げた「アテンション・デトックス」というキーワードへの注目が高まっています。
自分を取り戻す「アテンション・デトックス」。従来のデジタル・デトックスとの違いとは
「アテンション・デトックス」と聞いて、従来の「デジタル・デトックス」と何が異なるのか、と感じた方もいるでしょう。一般的にデジタル・デトックスは物理的にスマホなどデジタル機器から距離を置くことですが、「アテンション・デトックス」は、過度なアテンション(SNSの評価や視線)から離れ、意識を自分に戻す心理的なゆとりを持つ行為を指します。
たとえば、スマホなしの旅行や編み物、サウナなどはどちらの概念も兼ね備えていますが、より「自分へ」と意識を向ける「アテンション・デトックス」だと捉えることができるでしょう。
虚無感や自己嫌悪を断ち切るための「アテンション・デトックス」
日々流れてくるコンテンツを消費し続けることは一時的には心地よいものですが、後に残るのは、「あれ……今日も何も成し遂げられなかった」という虚無感や、やり場のない自己嫌悪になることも。
そんなふうに貴重な「自分の時間」を奪われることは、もはや人生の一部を奪われていることにも等しい、と感じ始めた人が多いのかもしれません。どうやら「アテンション・デトックス」の台頭には、このような「人生を自分軸で生きられていない」という不信感に理由があるようです。
スキマ時間は「自分を好きになるための時間」でもある
振り返ると、スマホが主流となった2010年代以降「いかにスキマ時間を埋めるか」という価値観に支配されました。
しかしこれからは、何もしない時間によって生まれる「心のゆとり」の価値が見直され、その時間を使って自分を磨き、好きになる。そんな時間の過ごし方にシフトしていくことが考えられます。
つい空白の時間ができると「もったいない」「何かしなきゃ」と無意識にSNSを開いていた人も、空白の時間こそ自分をととのえるための「資産」として捉え、リフレクションしたり、静かに過ごすことと向き合い始めるでしょう。
リサーチャーの視点:過度なアテンションが「自信のなさ」へ
スマホネイティブで、情報(アテンション)が溢れていることが当たり前の環境で育ったZ世代は、自分の内側から充足感を満たす経験が十分にできていないのかもしれません。
そんなバックグランドを持ちながらも、VUCA社会やパンデミック、景気の悪化などに巻き込まれ、いつしか「自信が持てない世代」になりつつありました。
「アテンション・デトックス」は、そんなZ世代にとって、強制的に自分と向き合い、自らの手で自己充足感を育んでいくためのムーブメントなのかもしれません。大局で見ると、アナログ回帰やリフレクション(内省)のトレンドも、この文脈の一環として捉えることができるのではないでしょうか。


