2022年の開発プロジェクト始動から約4年。
「既存のお酒では強すぎると思っている人」へ向けた新商品、アルコール分1%のお酒「UNI(ユニ)」がついに販売を開始(2026年3月17日よりイオン限定発売*)。これまではビールメーカーとして主に「お酒をよく飲む人」に向けた商品開発に注力してきたアサヒビールが、なぜあえてアルコール分「1%」という領域に踏み込んだのか。
* 本州・四国のイオン・イオンスタイル・イオンリカー約300店舗
本プロジェクトをリードしたアサヒビールの出口絢子さん、中山航さん、そして若年層インサイトの発掘やZ世代マーケティングの専門家としてターゲットのインサイト発掘や分析をサポートしたNEW STANDARDの白鳥秋子、藤戸志保の4名に、開発の裏側とそこに込めた想いを聞きました。
<プロフィール>


※ 肩書きや役職などはプロジェクト実施期間のものです。
格段に「顧客解像度」が上がった4年間
——ついにアルコール分1%チューハイ「UNI」のイオン限定発売が開始されました。2022年のプロジェクト発足から約4年。今の率直な心境をお聞かせください。
出口(アサヒビール):ようやく日の目を見ることができた、という感慨でいっぱいです。私はプロジェクトの途中からブランドマネージャーとして引き継いだのですが、前任者たちの多くの思いが乗った商品だと感じています。その「重み」を良い意味で受け止めながら進めてきたので、生活者の皆さんに届き、新しいお酒との付き合い方に出会っていただけたら本当に嬉しいです。
中山(アサヒビール):私は当初、研究所のRTD開発部* でUNIの中味の開発を担当していました。その後、育休を経てマーケティング本部の新顧客創造部へ異動し、今はマーケティング側として関わっています。開発からマーケティングまで一貫してこのプロジェクトの歴史を見てきたので、感慨もひとしおですね。
出口(アサヒビール): 4年前と今では、社会における「飲めない・飲まない人」への理解も進んでいますし、当社内でも調査を通して解像度が上がり、「飲めない・飲まない人」に向けた新商品開発の機運が高まってきています。そう考えますと、今このタイミングで出すことに大きな意味があると感じています。
* RTD(Ready To Drink):開栓してすぐに飲める飲料。ここでは主に缶チューハイを指す。

UNIピーチレモネード/UNIマスカットティーソーダ(ALC.1%)
2026年3月17日(火)よりイオン限定で販売を開始
* 本州・四国のイオン・イオンスタイル・イオンリカー約300店舗
お酒を「飲めない・飲まない人」は約5,000万人。自分向きのお酒が欲しいと思っている人たちへの、新たな選択肢を提案
——アサヒビールはどのようにアルコール分「1%」という、新しい度数にこだわった商品の開発を進めていったのでしょうか?
白鳥(NS): 2022年のスタート時点では、「飲めない・飲まない人に向けたお酒に意味があるのか」という声が多かったかと思います。さらに、最初からアルコール分「1%」と決まっていたわけではありません。徹底的にユーザーへのデプスインタビューを行い、「体質的にお酒に弱いとはどういうことか」を掘り下げていきました。すると、アルコール分3%でもまだ強すぎるという声が多数あったんです。
出口(アサヒビール):これまでは主に「お酒をよく飲む人」にフォーカスしていて、市場に多数存在する「飲めない・飲まない人」に向けた商品開発に、あまり注力はしていませんでした。しかし、人口減少や、若年層を中心とした「あえて飲まない(ソバーキュリアスなど)」という選択の広がりは、新たな市場や価値を生み出す大きな潮流となっていました。そこで、成人人口を13のクラスターに分類する大規模な調査を行ったところ、よく飲む層は約2,000万人に対し、飲めない・飲まない層が約5,000万人もいるということがわかりました。この約5,000万人の方々を詳しく調べたところ、「乾杯をして気分を上げたい」「自分向きのお酒があれば飲みたい」と思っている方もいらっしゃることがわかりました。そういった人たちにとっての「自分向きのお酒」を作りたいという思いから、アルコール分「1%」への挑戦を決め、まずは白鳥さんたちとの深い探索が始まりました。
——その中で、徹底的にターゲットに寄り添った開発をしたのですね。
中山(アサヒビール):はい。中味の開発では、実際にアルコール分1%と2%のサンプルを作って試飲してもらい、数時間後の状態まで追跡しました。その結果、アルコール分2%でもやはり強いと感じる方が多く、最終的に「1%」という結論に達しました。
藤戸(NS):私自身もアルコールが得意ではないので、当事者としてプランニングに参画しました。既存の低アルコール飲料は、どうしても「よく飲む人向けのドライな味」が多いんです。私には、味自体に少し抵抗感がありました。
白鳥(NS):ユーザーへのデプスインタビューで印象的だったのは、自分の体調を常に気にしたり、グラスの中身がぬるくなっていくことに引け目を感じていたりする人もいるということでした。そこで出た「自分も楽しく美味しく飲めるお酒なんてないと思っていた」という言葉が、最大のインサイトでした。
出口(アサヒビール): その言葉は私の中にもずっと残り続けています。「諦めているけれど、諦めきれていないニーズ」がそこにあると確信しました。
参照記事>
なぜ、Z世代の「インサイト発見」にデプスインタビューが不可欠なのか
覚醒ポテンシャル理論を活用。「初めて一緒に乾杯できる」価値を体現したデザイン
——パッケージデザインを検討する際の調査では、どのような点にこだわったのでしょうか?
白鳥(NS):調査では主に「飲む人目線のバイアス」を取り除き、お酒を飲めない・飲まない人に寄り添いながら、最適なデザインを目指しました。だからこそ、お酒が得意ではない当事者である藤戸や、同じくあまり強くない中山さんの感覚を「翻訳」してもらうプロセスを徹底しました。結果的にとてもインクルーシブなコンセプトやデザインに繋がったと思います。
藤戸(NS): パッケージの調査には特にこだわりました。「ジュースに見えてしまうと、みんなと同じものを飲んでいる実感が持てない」。かといって「お酒感が強すぎると、怖くて手に取ってもらえない」というバランスをどう判断するかがポイントでした。
白鳥(NS): そこで、「覚醒ポテンシャル理論*」を用いて、どのようなパッケージが受け入れられるのかをマッピングで可視化しました。新しすぎると理解が追いつかない。逆に既存のチューハイに似すぎると、飲めない・飲まない人たちが「自分向けのお酒だ」と気づかない。その「良い違和感」の境界線を探ったんです。
出口(アサヒビール):「デザインとして違和感を抱くほど突飛なものにはなっていないが、見たことがあるものでもない」という絶妙なバランスが重要でした。最終的に採用した「グラスで乾杯するシーン」のデザインは、これまでお酒の場で自分らしく楽しめていなかった人たちが初めて心から楽しんで乾杯できるという、UNIが提供したい価値そのものを体現しています。
* 覚醒ポテンシャル理論:感性設計学の第一人者である東京大学大学院の柳澤秀吉教授が研究する「適度な覚醒度が快感情を最大化する」という理論。
参照記事>
なぜ、既存の調査はイノベーションを見抜けないのか? ブランド戦略を成功に導く「コンセプトやデザインの評価手法」とは
若年層のニーズに応え、新顧客を創造するプロセス
—— 若年層のニーズに応え、“前例のない” 新顧客創造をする際に苦労したところやポイントがあれば教えてください。
中山(アサヒビール): 何より前例がないため、調査で良い数値が出ても、それが既存の商品と比べてどうなのかという判断基準がありませんでした。社内からは「飲める人にも売れないと数字にならないのでは」という声も当然ありました。
出口(アサヒビール):「既存のお客様にいかに買ってもらうかという視点」だけでなく、「新しいお客様をどう作っていくかという視点」へと社内のマインドを変えていくのが私たちの役割でした。特に若年層のニーズを捉えた新規顧客の獲得は無視できないポイントでした。また、アルコール分1%のRTDはアサヒビールにとって新しい市場への挑戦だったので、NEW STANDARDさんにインサイト発見に関するメソッドや新しい調査手法で補完してもらえたことが大きかったです。
白鳥(NS): 長期のプロジェクトでしたが、担当の方が変わっても、前任者の熱い思いがバトンとして引き継がれていく様子に、私たちも敬意を感じていました。全員がアイデアを出し切り、合意して進めていけるプロセスがあったからこそ走り抜けられたと思います。
スマドリの選択肢を広げるピースの1つ。「UNI」が未来を切り開く
—— 最後に、UNIを通じてどのような未来を創っていきたいか、一言ずつお願いします。
藤戸(NS):UNIは「やっと自分たちのほうを向いてくれた」と感じてもらえる商品だと思います。ホームパーティーでも、UNIがあることで誰もが同じ温度感で乾杯できる。そんな、社会を変える一歩になれば嬉しいです。
白鳥(NS):「自分のためのお酒が一本も見当たらない」という生活者の切実なペインに対して、まずはこの一歩を喜んでくれる人がいれば、それが何よりの成果だと感じています。
中山(アサヒビール):少量であればお酒を楽しみたいという思いはありながらも、その選択肢が無かった方にとって、UNIが新しいリラックスタイムのひとつになればいいなと思っています。いいことがあった日に「今日はUNIで晩酌しよう」と思える——そんな選択肢を増やしていきたいですね。
出口(アサヒビール): 私がアサヒビールに入社したときの想いは「飲みたいものを自由に選べる世の中にしたい」でした。その手段として、既存のアルコール商品だけでなく、ノンアルコール商品や低アルコール商品も必要になってくると考えています。その上でUNIは、アサヒビールが掲げる「スマドリ」の選択肢を広げるピースの1つなのではないかと思います。スマドリでは「誰もが自分らしい飲み方を楽しめる世界」を目指していますが、アルコール分1%のUNIは、これまでその世界を届けられていなかった人にとって必要な存在になりえるからです。これまで届かなかった方々に、お酒がある場が生み出すコミュニケーションや豊かさを届けていきたい——UNIはそのワクワクする第一歩です。
—— 今日は貴重なお話、ありがとうございました。
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