ブランドパーパスとCXコンセプトが更に必要とされる時代へ

2020/12/21
久志尚太郎

モノ消費からコト消費、そしてイミ消費の時代へと大きく変化しているなかで、今、多様な価値観や目的を持ったイミ消費が生まれています。

2020年、私たちは新しい生活様式のなかで日常生活に“必要なモノやコト”と“不要なモノやコト”に対して、とても敏感になったのではないでしょうか? 家で過ごす時間が増え、“不要なモノやコト”に対してストレスを強く感じる一方で、自身の生活に“必要なモノやコト”に対しては自覚的になり、新たな購買動機、つまり新しい「目的や意味」が私たちのなかに生まれたのです。

私自身10年ぶりに車を所有する気持ちになり、「日常生活をより自由に拡張する」ために、新しいカタチでバンライフを復活させることにしました。このような新しい目的を持った消費に関する話題は、私の周りでも多くの話を聞く機会があり、読者の皆さんも一つや二つ、“必要なモノやコト”と“不要なモノやコト”の変化に関するエピソードをお持ちだと思います。

2020年の大きな変化を経て2021年は、消費者の購買動機がさらに多様化するなかでブランドパーパスと消費者の価値観や購買動機を合致させ、LTV(顧客生涯価値)を高めるコミュニケーションが重要になると私たちは考えています。

購買動機が多様化している

クラウドファンティングサービス大手の「Makuake(マクアケ)」は、自社の取り組みをクラウドファンティングではなく「応援購入」と位置づけています。また、「Patagonia(パタゴニア)」がこれまで以上に注目されているのは、消費者が購買を通して気候変動対策に貢献したいと考えているからでしょう。

このことからも分かるように、消費者の購買動機は多様化しています。体験型消費や創造型消費、応援型消費、快楽型消費、コンディショニング型消費、機能型消費、コレクション型消費、帰属消費、社会問題解決型消費、ながら消費…といった具合に。

誰かを応援したい、社会課題を解決したい、メンタルヘルスを含めてコンディショニングしたい、単純に気持ちよくなりたい──。同じ商品を購入していても消費者にとってのイミ、つまり購買動機が異なることがあるため、多様な価値観への深い共感と理解が重要になっているのです。

アフォーダブルラグジュアリーがトレンドになっている理由

今注目されているアフォーダブルラグジュアリーのアフォーダブルは「手頃な」、ラグジュアリーは「贅沢/豊かさの象徴」という意味です。これは高級感を保ちながらも、ラグジュアリーブランドに比べると安い価格帯の商品やブランド体験を指します。

ラグジュアリーブランドの価値(≒目的)は、アスピレーション(≒大志/志望/希望)を高めること、つまり人の内側からアスピレーションを湧き上がらせることと言われています。心の底から沸々と湧き上がってくるあの感情こそが、ブランドエンゲージメントやロイヤリティに直結する大切な要素なのです。

アフォーダブルラグジュアリーはCX(顧客体験)を通じて、「自分はそのままの自分で良いと思える充足感」や「社会や環境に対しても良いことをしている肯定感」、「無理はしていないが賢い選択をしたという満足感」などの情緒価値を届けています。これはブランドパーパスやCXコンセプトが明確だからこその、提供価値とも言えるかもしれません。

企業はブランドパーパスに
自覚的にならなければいけない

多様なイミ消費が生まれるなか、CAC(顧客獲得費用)の効率化を図りブランドエンゲージメントを高めLTVを最大化するためには、広告運用の効率化やECサイトの運営、大規模なブランドイベントの開催、フラグシップショップの開設ではなく、まずブランドアイデンティティを通じてブランドパーパスや提供価値、CXコンセプトを明確にする必要があると私たちは考えています。


当社ではブランドアイデンティティを上記の図のように定義しており、様々な企業様のブランディング施策やコミュニケーション設計に役立てていますが、誰しもが知っている国内のブランドでも、ブランドアイデンティティが存在せずブランドパーパスが不明瞭な場合も少なくありません。

2021年はイミ消費の多様化が加速する新しい時代となります。

変化が激しい時代だからこそ、より自覚的になったユーザーから選ばれ愛されるブランド作りにはブランドパーパスを定義し、CXを通じてユーザーへと伝えることがとても重要になっているのです。

文 / 久志尚太郎 編集 / 小嶋正太郎

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