「顧客体験設計」を、中国に学ぶ

2020/04/28
ニュースタ!編集部

NEW STANDARDは、SDGsなどを背景にミレニアルズから生まれた、世界の新しい基準や価値観をまとめたレポート「GLOBAL CREATIVE REPORT」の企業向け販売を行なっています。毎月異なるテーマを届けるなかで、4月は「CX(Customer Experience:顧客体験)」を特集しました。
新型コロナウイルスの影響により、リアル店舗の顧客体験がオンラインを起点としたものに変化していることが象徴するように、企業のビジネスのなかに「CX」をインストールする必然性は高まっています。
同レポートの制作を担当したリサーチャーのYu-shuが、その読みドコロを語ります。

関連記事:グローバル・スタンダードと日本社会の乖離。私たちが「GLOBAL CREATIVE REPORT」をリリースした理由


ミレニアルズやZ世代にとっての、
CXとはなにか?


ミレニアルズとZ世代はモノの購入・所有にフォーカスした物質的な豊かさの追求よりも、稀有でユニークな経験に価値を求める傾向が強まっています。彼/彼女らの消費のキーワードは“ウェルネス”や“サステナブル”、“所有より経験”、そして“共有&コミュニティ”です。

販売しているプロダクトだけが「商品」ではなくなり、ソーシャルメディア上のコミュニケーションや店舗での体験、あらゆるブランドコミュニケーションの接点におけるCXの集積された価値が「商品」となります。また、AIやIoTなどのテクノロジーの進化と共にOMOが幅広い業界に浸透し始めています。
デジタルネイティブのミレニアルズとZ世代において、最も重要なタッチポイントであるオンライン上で蓄積されていくデータはCXの再構築に大きく可能性を示しています。

顧客体験を
「点」ではなく「線」で捉えよう

4月の「GLOBAL CREATIVE REPORT」では、「CX」を総力特集しました。日本企業は顧客体験を「認知」「販売」「アフターフォロー」などの「点」で捉え、分けて設計していることが多いです。そもそも、CXという考え方があまり浸透していません。今回は顧客体験を「線」で設計している海外の事例を中心に、レポートをまとめていきました。

その際に重要だったのが、「CX=商品」という視点です。この考え方をもつことで、各接点を連動させ、より大きな全体像を描くことができます。しかし、顧客体験の設計は理解しても実践が難しい。レポートには豊富な事例を掲載し、セミナー形式の勉強会とワークショップを行なうことで、企業のビジネスのなかに「CX=商品」の視点をインストールしていくことが、今回の狙いでもあります。

新型コロナウイルス影響下で
「OMO」が世界基準になる

CXを考える上で欠かせないキーワードが、「OMO(Online Merges with Offline)」です。オンラインとオフラインの融合や連動を意味する概念で、アフターデジタルの時代において重要度が増しています。
また、新型コロナウイルスの影響により休業を余儀なくされるなかで、オンラインでの顧客との接点がますます重要になっています。

Airbnbは宿泊とともに、旅先での「体験」機能を提供してきました。旅をすることが難しいなかで、現在は「オンライン体験」の機能を提供し始めています。ぞのラインナップは「僧侶と一緒に瞑想」「チェルノブイリに生きる犬たちとのふれあい」「モロッコ人家族によるクッキング教室」などのユニークなものばかり。

自宅待機で旅ができなくとも、顧客との接点をつくる。Airbnbの「オンライ体験」は、その価値をデジタルに移行した好例と言えそうです。

関連記事:自宅からの「旅」を可能にする!Airbnbが「オンライン体験」を提供開始

[事例]
金融会社発
医療プラットフォーム

レポートから紹介したいのは、金融会社から生まれた医療プラットフォーム「好医生(グッドドクター)」です。2015年にローンチされたこのアプリは、さまざまな機能をもっています。


「快速問診」:オンライン問診、病院に行くべきか、何科が良いかがわかるサービス
「探医生」:クチコミや評価によりドクターを選択できる予約サービス
「閃電購薬」:処方薬のECサービス
「健康商城」:サプリや処方不要の漢方薬のECサービス
「AIファミリードクター」:過去に蓄積した数億件の診断履歴や患者の病歴といったデータに基づき、医師の診断をサポートする機能


これらのサービスを提供することで、2019年末にはユーザー数が3億人を突破しました。アプリを提供するのは、中国・深センにある保険、銀行、投資、ネット金融サービスの4つの分類で構成される総合金融グループ「平安保険」です。保険業が中心であり、契約した後、事故や病気にならないと顧客と接点がもちにくいという課題が存在しました。デジタルが浸透する中国ではモバイルやIoTなどにより顧客接点をいかに頻繁に持てるかが重要となっており、「好医生(グッドドクター)」のローンチに至ったわけです。

このアプリは中国人の医療体験を大きく変えました。中国では医療資源分配の不均等や信用問題などによって特定の病院に人が集中しすぎています。「好医生」はオンライン医療インフラとして人々の日常生活を支えながら、平安保険にとっても顧客との大事な接点になり、ユーザーのロイヤリティを向上させると同時に集めたデータを活用しさらにカスタマイズしたサービスを提供し続けています。

最近では、新型コロナウィルス感染の拡大に合わせて開設したコロナ対策サービスと無料オンライン問診などの機能も備えており、中国社会の健康を支えるインフラとして、新しい価値を生みだし続けています。

既存ビジネスのなかには存在しなかった顧客との接点をつくり出し、それが新しいビジネスとしても成立しているのが、とても優れたポイントだと考えています。



「GLOBAL CREATIVE REPORT」は、SDGsなどを背景にミレニアルズから生まれた、世界の新しい基準や価値観を企業向けにまとめたレポートです。
国内のメディアやSNSで話題になる前の最先端のトピックを、セミナー形式の勉強会とワークショップを通じて、事業やプロジェクトですぐに活かせる知見にしてお届けします。

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