2020年代の新しい基準や価値観で従来の価値を捉え直す──。そんなテーマでスタートした本連載。第5回目では、映画上映やリトリート、働き方などの価値のアップデートを紹介しました。
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国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)策定が採択された2015年から、年を追うごとに世界の方向性を指し示すアジェンダが、日本の社会に、企業やブランドのコミュニケーションを通して私たちの暮らしまで、浸透し始めています。
また、新型コロナウイルスに伴う感染症(COVID-19)によって、私たちが生きる社会は大きな変化を迎えることになります。その世界において重要なのは、いま現在、世界中で生まれている新しい基準や価値観をまずは理解すること。そして、既にある価値を変えようとするのではなく、新しい基準や価値観で従来の価値を捉え直すフレームワークが鍵になると考えています。
今回はスニーカーからブランディングまで、2020年代の価値観を紐解いていきます。
全世界のスニーカー転売市場は前年比で20%増の20億ドル(約2100億円)を超えたと言われています。スニーカーを株のように売買できるC2Cプラットフォーム「StockX」は2019年に評価額が1000億円を超え、ユニコーン企業のひとつとなり、昨年は日本上陸を果たしました。
日本でも個人間でスニーカーの売買ができるサービス「モノカブ」や「スニーカーダンク」などがローンチされ、今後もスニーカー転売市場は大きくなることが予想されています。
こうして多くの人が取引をするようになったのは、単なる運動靴だと捉えられていたスニーカーに有名デザイナーやアーティストとのコラボレーションによる価値が加えられたことが理由のひとつでしょう。2020年代において、スニーカーはコレクションするものであり、一種の作品として認識されています。
一般の人が手を出せない価格で取引されるスニーカーはいくつもありますが、フェイク製品も多く存在すると言います。アートの世界でも真贋鑑定が大切であるように、スニーカーの世界でも安心して取引できるサービスを提供することが重要になるでしょう。
アートの市場における事例をもとにスニーカーの変化について考えるなら、今後は投資目的で購入を検討する人が今以上に増えるのかもしれません。
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京都のアートホテル「河岸ホテル(KAGANHOTEL)」では、アーティストたちが共同生活を送りながら制作活動をおこなっており、ギャラリーが併設されています。また、一般客が宿泊できる各部屋には異なる作家の作品が展示されています。コレクターやキュレーター、パトロンが作品を鑑賞でき、出会いの場所にもなっているのです。
また、東京・日本橋エリアにオープンした「BnA_WALL」では、アーティストたちが26の部屋を宿泊型アート作品として制作。宿泊費の一部はアーティストたちに還元され、新たな収益モデルをつくり出しています。
このように、日常のなかで現代アートの作品に触れられる機会が増えてきてます。これまでは所有する/しないという2択しか存在せず、現代アートはなかなか身近なものになりにくかった側面もあります。しかし、ホテルで作品の所有を擬似体験できたり、「BnA_WALL」の事例が新しいパトロンのかたちを示していたりと、その接点は多様化しています。このような「アートの民主化」の動きが進んでいけば、コレクターの人数にも変化が起きていくかもしれません。
関連リンク:河岸ホテル(KAGANHOTEL)
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多くの人がゲームに対して、ただ遊ぶものというイメージを持っているかもしれません。しかし、長年の間、多くの人から愛されている「マインクラフト」や「シムシティ」は創造性を発揮する場所としても認識されています。昨年、コロナ禍によって大学の卒業式が中止になった方々がマインクラフトで卒業式を開催したりと、人と直接会うことが難しい時代において、そこではさまざまな創造性が発揮されています。
今回注目したいのは、ユーザーが最大限にクリエイティビティを発揮できるプラットフォームであり、ゲーム版YouTubeと呼ばれる「Roblox(ロブロックス)」です。
ユーザーは3D仮想空間でオリジナルのゲーム開発が可能となっており、ユーザー同士でそれらをシェアできるサービスも提供しています。また、約3100万人のデイリーアクティブユーザーの大半を、アメリカとイギリスに暮らす小学生が占めているとのこと。
最大の特徴は「Roblox」の公式通貨「Robux」を使用し、アイテムを売れる点にあります。株のように過去に取引された値段や適正価格を見ながら、自分の所有しているアイテムを売りに出せるのです。2017年には合計で約32億円がユーザーたちに支払われたと言います。
このサービス上でのゲーム開発とアイテム売買を通して、コーディングやマーケティングなどのビジネススキルを身につけられるでしょう。売って楽しむことが当たり前になれば、ゲームは自らのスキルや創造性を発揮する場であり、それを価値に変えられるプラットフォームとも言えるかもしれません。
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アメリカの証券取引所「ナスダック」が上場企業に対して、企業の役員メンバーに性自認が女性である人物1名とアフリカ系アメリカ人、もしくはLGBTQ+であると自認する人物1名の、計2名以上を登用することを求めました。また、ドイツ政府は3名以上で構成される執行役会のある上場企業に対して、最低でも1名以上の女性役員の任命を義務づけました。
国における人種や性別の構成比と同じように、企業の役員メンバーを選ぶことが求められる時代へ──。いま、企業は経済的成長ではなく、ダイバーシティやインクルージョンを推し進めることが必要になっているのです。
ボストン コンサルティング グループの調査によれば、平均以上にダイバーシティが実現している場合は、イノベーションによる収益が高いと言います。女性やマイノリティの役員登用が当たり前になったら公平性を達成できるだけでなく、今以上に多くの企業がイノベーションを起こせるようになるのかもしれません。言い換えれば、イノベーションを起こすためにもダイバーシティは欠かせない要素のひとつと表現できるでしょう。
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個人の好みに合った味や香りをベースにしたドリンクや香水などをつくれるサービスが増えてきました。パーソナライゼーションは、これからの時代において企業やブランドにとって重要な提供価値のひとつになるでしょう。
この流れはヘッドホン・イヤホン業界にも波及しています。その具体例となるのがワイヤレスイヤホン「NuraLoop」。聴覚を自動で測定した後、それぞれの人に最適化した音を提供するのが特徴です。さらに、専用アプリで音を調節することも可能。
これまでのヘッドホン・イヤホンは特定の1点から音が出ていたとすると、パーソナライズされた音は自分の周囲から聞こえるような感覚になります。しっかりとした低音を楽しむこともできます。
質の高い音を届けるために開発が行なわれていましたが、これからは消費者の個性に最適化させるために商品が製造されるでしょう。「音のパーソナライズ」に留まらず、身近なプロダクトやサービスがもしもパーソナライズされたら提供価値はどのように変わるか?を考えることで、新しいビジネスチャンスを発見することにつながりそうです。
関連リンク:NuraLoop
インターネット上で過激な表現によるミスリードを経験したことのある方は、多いと思います。いま、誇張表現などが目立つコンテンツは支持されず、それはブランディングにも当てはまります。
企業やブランドはしっかりと消費者に向き合い、真摯にコミュニケーションをすることが求められているのではないでしょうか。その例として、欧米ではユーザーを起点としたプロダクトの開発や顧客体験の設計を行い、ファンとともにプロダクトを開発するD2C事業が登場しています。
2014年にアメリカ・ニューヨークで立ち上げられた「Casper(キャスパー)」は、マットレス市場に参入した後、顧客のデータをモニタリングしながら商品開発へと活かし、ランプの製造なども手がけています。
そのような変化を日本にも届けていくために、NEW STANDARD社は株式会社電通デジタルと資本提携し、新規ブランドの立ち上げ・既存ブランドの再創造を全体戦略から事業成長までをワンストップで支援するサービス「ブランドデジタルトランスフォーメーション(BDX)」を提供し始めました。
2020年4月1日に弊社がローンチしたコンディショニングサプリ「Tune」も、ユーザーとなり得る100名以上を対象にヒアリングを実施し、そのライフスタイルにおけるニーズを洗い出し、それらを分析したうえで開発を進めました。
これからの時代のブランディングにおいては、企業のありのままの姿をさらけ出し、独自の想いを届ける必要があります。こうしたことを実現できる企業やブランドこそ、これからの時代でも消費者からの注目を集めるのでしょう。
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