「備えない防災」の時代がやってくる?……2020年代の新しい基準で捉え直す vol.10

2021/10/15
ニュースタ!編集部

2020年代の新しい基準や価値観で従来の価値を捉え直す──。そんなテーマでスタートした本連載。第9回目では、公園や歩きスマホなどの価値のアップデートを紹介しました。

私たちの社会はいま、気候変動やパンデミックなどの様々な課題を世界規模で共有しています。従来の「当たり前」が通用しない中で、より良い社会を構築するための、新しい基準や価値観が生まれています。だからこそ、新しい基準や価値観を理解し、従来の価値を捉え直してアップデートするフレームワークが、とても重要になってくるはずだと考えています。

わたしたちNEW STANDARDは、企業のブランドやプロダクト、サービスに対して従来とは異なる意味や解釈を与えることで、消費者や社会にとって「新しいスタンダード」となりえるものを提供してきました。そのような観点を踏まえながら、今回は、防災からゲームまで、2020年代の新しい基準や価値観の変化を紐解いていきます。

<防災> 備える防災→備えない防災

日本は、地震や台風といった自然災害が比較的身近にあり、防災意識が高い国と言われています。しかしこれからの気候変動の時代には、よりいっそう「災害とともに生きる」というマインドセットが必要になってくるかもしれません。

これまで防災用品というと、普段は押入れの中にしまっていて、非常時に持ち出すものという考えが当たり前でした。しかしいざという時に電池が切れていたり、使いものにならなかったりすることも危惧されます。そういった懸念に対して、「フェーズフリー」という考え方、つまり特別な時のために備えるのではなく、日常のままに非常時も対応できるようにしておく考え方が、浸透し始めています。

例えば、千葉にある「ブルースカイランドリー」では、普通のコインランドリーが非常時も同じように使える仕様になっています。加えて、スーパーや商業施設に併設する出店戦略を活かし、非常時には炊き出しが行える設備も備えているといいます。

「百年に一度」と言われるような災害が各所で起こっている今、あらゆる場面でこうした“備え”が普及することが期待されます。とはいえ、「フェーズフリー」を前提とした店舗設計や商品開発はまだ多くありません。既存のプロダクトやサービスをこうしたフレームワークで捉え直してみると、これからの時代に必要とされるビジネスのあり方が見えてくるかもしれません。

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<VC(ベンチャーキャピタル> 産業や業界特化→気候変動など課題特化

今、気候変動などの課題に特化したVCが増加しています。パリ協定実行の年である2020年以降、世界的にESG投資の重要性がいっそう認識されており、特に気候変動問題の顕在化に伴って、環境に配慮しながら経済的・社会的発展に寄与する事業開発が強く求められているためです。

日本でも「クライメート・イノベーション」といった、温室効果ガス大幅削減に向けた革新的技術の開発と普及を目指す議論も進んでいます。これまでの経済成長は地球環境を犠牲にして行われてきたと言っても過言ではありませんが、いまや、気候変動や持続可能性を無視して経済活動を続けられない時代になってきています。

「クリーンテック」がデジタルの次なる大きな投資領域になるなかで、こうしたVCの動きを注視することは、少し先の社会の変化やを読み解くことに繋がるでしょう。投資というフィルターを通して気候変動などの課題を見つめてみると、また違った危機感や世の中のトレンドが掴めるはずです。

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<動物の感情>  ブラックボックス→感情解析が可能に

オランダ・ヴァーヘニンゲン大学の研究チームらが、顔認識AIを利用して、牛や豚といった動物の感情状態を識別するシステムを開発したと発表しました。「リラックス」「興奮中」「イライラしている」「落ち着いている」など、13種類の表情と9種類の感情を私たちに示してくれるといいます。これまで、動物の感情はブラックボックスの中でした。しかしテクノロジーの進化によって、着実に人間が解析の手がかりを得ることができるようになってきています。

すでに、地球環境への負荷以外にも、動物愛護の観点から肉を食べないことを選ぶ人もいます。今後このような技術がいっそう発展して、人間が他の動物とコミュニケーションがとれるようになったとき、私たちは「食べる」ことはできるのでしょうか? そう考えると、解析技術の発展は、食肉産業や食品産業のあり方を根本から変える可能性があります。その先にある未来のスタンダードは、食肉という行為をやめることにあるのかもしれません。

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<メンズ脱毛> コンプレックス解消→前向きな選択肢

「脱毛」と言えば、「女性が“ムダ毛”を処理するための手段」というイメージがありますよね。最近では、体毛にネガティブなイメージをもたせ、画一的な美を押し付けている、という議論も耳にします。

しかし今や脱毛は女性だけの関心事ではなく、男性の中にも積極的に脱毛を行っている人がいるようなのです。経験者にその理由を聞いてみると、意外にも、ライフスタイルにおける機能的なメリットや、セルフプロデュースの一環として脱毛を選択したという、ポジティブな回答が返ってきたといいます。

私たちの身の回りには、コンプレックス意識をもたせることでプロダクトやサービスを手に取ってもらおうとするものが少なくありません。しかし世代の新しい価値観を的確に捉え、彼/彼女らのライフスタイルにポジティブな意味や価値を付与できる存在として認知してもらえるようになるとしたらどうでしょうか。そうしたコミュニケーションのほうが、ユーザーと強いエンゲージメントを築けるかもしれません。

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<森林浴> 森へ行く→デジタル森林浴

焚き火のゆらぎある音にはリラックス効果があるとして、数年前からYouTubeで焚き火の音を流すだけの動画に人気が集まりました。同様に、森の音や緑の木々を抜ける光のゆらぎを、デジタルで再現したコンテンツが増えています。

「森林浴」とは森林を散策して樹木の香気を浴び、安らぎや爽快(そうかい)感を得ることと定義されており、デジタルではその真髄は味わえないと思ってしまいますよね。しかし、精油などを用いて森の爽やかな香気を再現することで、フィトンチッド(木々が発する成分)を浴びるような疑似体験もできそうです。コロナ禍において、外出もリフレッシュの手段も制限されてしまう中、自宅でも外の世界を体験できるようなコンテンツにニーズが高まるのも頷けます。

その他にも、インドではオンラインで礼拝にアクセスできるアプリサービスも登場しています。寺院に直接足を運ぶことが難しい今、信仰を守る方法としてデジタル礼拝が普及しているというのです。本格的なOMO時代の到来、もはやデジタルに代替不可能なものはないという視点で見渡してみると、全く新しいコンテンツやサービスの種が見つかるかもしれません。

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<ゲーム> 若者を孤独にするもの→高齢者を孤独から救うもの

「ゲーム」といえば、ゲームへの依存症や、それに伴う若者の引きこもりの原因になるとして、社会的にもしばしば問題視されてきました。しかし近年、「ゲーム」の価値が見直されようとしています。

Microsoftの「Xbox」が公開した短編ドキュメンタリーには、そのゲームの新しい価値がハートフルに描かれています。それは、祖父と孫がXboxのゲーム「Minecraft」や「Forza Motorsport」などでの協力プレイや対戦を通して、再び交流を再開し、絆を取り戻す過程を描いたもの。オンライン対戦が普及し、ゲームが交流ツールとして認識されるようになって久しいが、これから先、ますます世代を超えて繋がりを取り戻すキッカケにもなっていくのでしょう。

若者を孤独にしていたゲームが、高齢者を孤独から救う存在になる──。取り巻くオケージョンを捉え直すことで、既存のプロダクトに新しい価値(意味)を付与できた好例と言えるでしょう。

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