なぜハイブランドがSNSアカウントを削除したのか?…2020年代の新しい基準で捉え直す vol.9

2021/09/17
ニュースタ!編集部

2020年代の新しい基準や価値観で従来の価値を捉え直す──。そんなテーマでスタートした本連載。第8回目では、インフルエンサーやメディアなどの価値のアップデートを紹介しました。

私たちの社会はいま、気候変動やパンデミックなどの様々な課題を世界規模で共有しています。従来の「当たり前」が通用しない中で、より良い社会を構築するための、新しい基準や価値観が生まれています。

だからこそ、新しい基準や価値観を理解し、従来の価値を捉え直してアップデートするフレームワークが、とても重要になってくるはずだと考えています。

わたしたちNEW STANDARDは、企業のブランドやプロダクト、サービスに対して従来とは異なる意味や解釈を与えることで、消費者や社会にとって「新しいスタンダード」となりえるものを提供してきました。そのような観点を踏まえながら、今回は公園から歩きスマホまで、2020年代の新しい基準や価値観の変化を紐解いていきます。

近隣住民の憩いの場→旅の目的地

福岡市東区の国営「海の中道海浜公園」に、パーク・ツーリズムをテーマにした滞在型レクリエーション拠点が2022年3月に開業します。面積約300haの自然豊かな国営公園に球体型のテントや博多湾を一望できるヴィラなどの宿泊施設が新設され、多様なアクティビティとともに1日中楽しめる場所になるようです。

「ホテル」の滞在を楽しむことそのものが新しい旅の目的となってきたように、「公園」が旅の目的地になるようなパーク・ツーリズムを提唱している点がユニークなこの取組み。公募設置管理制度(Park-PFI)によって、公園がより魅力的な場所に生まれ変わるだけでなく、観光資源としての新しい価値を付与している事例です。

コロナ禍のその先を見据えて、旅の新しいディスティネーションを模索する動きが始まろうとしています。これまで「公園」は旅の一コンテンツにはなっても、それ自体が目的化することはなかったはず。「観光地」として捉えられてこなかったコンテンツに注目してみることで、その価値の再発見につながっていくかもしれません。

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SNS→独自プラットフォーム

イタリアのラグジュアリーブランド「ボッテガ・ヴェネタ」が、今年1月に突如、すべてのSNSアカウントを削除したことが話題になりました。Instagramだけで200万人を超えるフォロワーを抱えていた同ブランドが、ソーシャルメディアから離脱したのです。

するとその後、同ブランドは新たに独自のオンラインジャーナル『ISSUE 01』を公開。SNSについて「多様な作品が規定のフォーマットでしか表現できないという制限がある」と指摘し、「ボッテガ・ヴェネタ」らしい表現を模索してくことを表明しました。

強大なプラットフォームを活用して顧客を獲得することが当たり前のことになりすぎた今、ブランドのクリエイティビティやアイデンティティをどのように表現していくのか、考えさせられる出来事です。ブランドがSNSを辞めても、こうして発表したオンラインジャーナルを、熱心なファンが自身のSNSで話題にすることは大いにあり得るでしょう。SNSはあくまで顧客と繋がるための手段。そこで何を伝え、何をやらないのかという、確固たるブランドのアイデンティティを持つことは、今後の顧客体験(CX)を設計する上で必須となってくるでしょう。

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アメリカの「Z世代(1990年代後半以降生まれ)」と呼ばれる若い世代の間で、スタートアップへのエンジェル投資が広がり始めています。「投資家」としてみれば僅かな金額かもしれませんが、年齢を考えると決して少なくはない金額をスタートアップに投資するZ世代の投資家たち。しかし彼/彼女らはこうしたエンジェル投資を、金銭的なリターンを得る手段としては考えていないようです。

あくまで、自身の将来のためにスタートアップエコノミーに参加する“きっかけ”と考える者や、あるいは、新しい未来を作ろうとしている会社を応援し、自分がどんな未来を実現したいと思っているのかという、メッセージを発信する手段の一つとして捉えているようです。

日本においても、クラウドファンディングのような「応援購買」のあり方が広く浸透してきています。これまでも購買行動は、「投票行動」とも言われてきました。こうした動きを踏まえると、これからの時代に支持されるブランドをつくるためには、パーパスや意味を設定することがより重要になっていくでしょう。消費者から応援されるような未来への意思表示は、欠かせないものとなっていくはずです。

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親世代が飲むお酒→家族や世代をつなげるお酒

「焼酎」と聞くと、いかにも硬派で、親世代が飲むお酒、という印象がありますよね。しかし今では「焼酎の炭酸割り」も少しずつメジャーになってきており、若い世代にも馴染みのあるお酒に変わってきています。ハイボールが流行した際、ウイスキーを楽しむ世代が大幅に広がったのと同様に、焼酎も飲み方のアレンジの広がりとともに、愛飲層が拡大しているようなのです。

こうした動きに目を向けると、焼酎は「親世代が飲むお酒」という旧来の価値観から、幅広い世代が一緒に楽しめる「家族や世代をつなげるお酒」という新しい意味(価値)を見出すことができます。

ブランドにパーパスや意味が求められる時代において、時代のコンテキストに沿った新しい意味を提示することが重要になってきています。新しい価値創出(イノベーション)に取り組むうえでは、必ずしも新しいプロダクトやサービスを開発することが重要なわけではありません。古くから存在する伝統的なブランドやプロダクト、サービスに対して、現代的な「意味」の付与や解釈による変革の可能性も存在するのです。

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対面診察→オンラインのみで完結

20~30代の若年層で中等度以上のEDの悩みを抱えている人は、7人に1人と近年増加しているようですが、実際に医療機関を受診する人は少ないのが現状と言われています。セクシャルウェルネスにまつわる話は、近年どんどんオープンにされるようになっていますが、性の悩みで病院へ行くのは、多くの人にとってまだまだ気後れすることのようです。

先日ローンチされた日本初、EDのオンライン診療サービス「Oops」は、診察〜処方までの全ステップがオンラインで完結するサービス。予約時に回答した問診を元に、医師による電話診察を受け、処方された薬は郵送で自宅に居ながら受け取ることができます。

性やコンプレックスに関するオンライン診療の普及によって、徐々にではありますが、誰もが気軽に相談相手を見つけられるようになってきています。センシティブな話題ゆえにこれまで相談ができていなかったとすると、「Oops」のようなCX(顧客体験)は新しい顧客層を開拓できそうです。CXの観点から既存のサービスを分析していくと、取り残されていた層向けの新しいサービスを発想できるかもしれません。

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外部から警告→スマホで制限機能を実装

「歩きスマホ」による事故やトラブルは、一向に減る気配を見せません。東京消防庁の調べによると、平成27年から令和元年までの5年間で、歩きスマホ等による事故で211人が救急搬送されています。

そんな中Googleが開発しているのが、スマホそのものが「歩きスマホ」を感知して制限をかける機能です。Androidに搭載されている「Digital Wellbeing」の新機能で、歩行中にスマホを操作すると、画面いっぱいにアラートが表示され操作が中断されるというもの。

駅のホームや階段には、「歩きスマホ」をやめるように呼びかけるポスターが所狭しと貼られていますが、こうした外部からの警告は、もはや「歩きスマホ」をしている人の目には入っていないのかもしれません。ゆえに、テクノロジーによって行動を制限していく動きが高まるのも、やむを得ないでしょう。

しかし、歩きスマホをしている人が自ら行動を改めるのではなく、アーキテクチャの設計によってそこに介入することは、人間の自律性を損なうことにもつながります。デジタルテクノロジーによる影響が日常のあらゆるところに浸透しているからこそ、「人間の自律性を支援するテクノロジーとは何か?」を考え、今後のプロダクトやサービス開発において活かしていくことは重要になりそうです。

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