メディアの価値は「ライフスタイル提案」から「商品開発」まで拡張される──2020年代の新しい基準で捉え直す vol.8

2021/06/15
ニュースタ!編集部

2020年代の新しい基準や価値観で従来の価値を捉え直す──。そんなテーマでスタートした本連載。第7回目では、絵文字、マッチングアプリ、観光などの価値のアップデートを紹介しました。

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国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)策定が採択された2015年から、年を追うごとに世界の方向性を指し示すアジェンダが、日本の社会に、企業やブランドのコミュニケーションを通して私たちの暮らしまで、浸透し始めています。

また、新型コロナウイルスに伴う感染症(COVID-19)によって、私たちが生きる社会は大きな変化を迎えることになります。その世界において重要なのは、いま現在、世界中で生まれている新しい基準や価値観をまずは理解すること。そして、既にある価値を変えようとするのではなく、新しい基準や価値観で従来の価値を捉え直すフレームワークが鍵になると考えています。

今回はオフィスのあり方からメディアまで、2020年代の価値観を紐解いていきます。

オフィス:固定→柔軟/分散化

固定席をもたない「フリーアドレス制度」など、社内での働き方の柔軟化に取り組む企業は以前からありましたが、いま、「オフィスそのもの」を柔軟に、分散しようとする動きがみられています。

コロナ禍でリモートワークを導入する企業が増え、固定席やピークタイムを見越した会議室の確保が不要になった、という理由が大きいのは間違いありませんが、単なるオフィス縮小ではなく、WeWorkのようなサービスオフィス(コワーキングスペース)への移転が目立つのは、状況に応じて柔軟にサイズ変更ができる利便性にあると考えられます。

リモートワークが主体となり、都心から地方への移住者が増えたという話を耳にする一方で、対面で仕事をする機会を重視する企業は、改めて職住近接を推進しているともいいます。「ワークスタイリング」のようなサービスオフィスを活用すれば、従業員の住む場所の多様化に従って、分散化されたサテライトオフィスを提供可能になります。今後、従業員の働き方に対する要望はより多様化していくでしょう。その際にボトムアップでの従業員の声を人事制度の設計に反映できる企業こそが、魅力的な従業員を集められるようになるのは想像に難くありません。

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インフルエンサー:誇張→ありのまま

「ASA(英国広告基準局)」は今年、製品の効果などについてSNSに写真や動画をアップする際の加工フィルターの使用を、制限することに決めました。ことの発端は、イギリスのインフルエンサーがフィルターを用いて、化粧品の効果を誇張するような加工をした投稿でした。私たちがSNSで日頃目にする投稿にも、このような「違和感」を感じるものが少なくないのではないでしょうか。消費者を誤解させるのみならず、ブランドやインフルエンサー自身の信頼を損なう可能性のある投稿は、今後取り締まりが強化されていくでしょう。

最近では、過度なフィルターにより、画一的な美しさを強要するのをやめようという「#FILTERDROP(フィルターを外そう)」が盛り上がりをみせています。また、「#BodyPositive(ありのままの自分を愛そう)」などを筆頭に、美の基準の多様化も加速度的に高まっています。

インフルエンサーが自らの影響力をどの方向に発揮していきたいと考えているのか。その価値観は、少なくとも画一的な美を競い合うものではなくなっていくはず。彼/彼女らとパートナーシップを組むブランドやエージェンシーにも、価値基準のアップデートが求められそうです。

関連サイト:インフルエンサーのSNSでのフィルター使用を一部禁止【イギリス】(TABI LABO)

スポーツブランド:身体の健康を支援→心の健康も支援

スポーツブランドがこれまで競ってきたのは、アスリートやスポーツ愛好家のパフォーマンス向上のための「機能」や「性能」でした。しかし、これまでは運動の「副産物」として捉えられていた「心のリフレッシュ」に、スポーツブランドがフォーカスを当て始めています。

「ASICS UK」は、今年からスポーツがメンタルヘルスに与えるプラスの影響に関する画期的な研究プロジェクトに着手することを発表しました。ほかにも「#SunriseMind」のタグを用いた早朝の運動促進キャンペーンも開催。より多くの人々のメンタル・ウェルビーイングに寄与するための、長期的なパートナーシップを組んでいこうとしています。

コロナ禍の外出自粛の影響で、運動不足を感じる方が増えている一方、スポーツ庁の調べによると、週一回以上運動やスポーツをしていると答えた人は59.9%と、1979年の調査以来で過去最高になっているそうです。ウェルビーイングな生活を送るためには、心身ともに健全な状態であることが不可欠です。スポーツブランドが心の健康も支援していくことを視野に入れると、新たなサービス開発の可能性やビジネスチャンスが見えてきそうです。

関連記事:「ASICS」がメンタルウェルネスキャンペーンをスタート!(TABI LABO)

レストラン:味へのこだわり→環境への配慮

日本でもおなじみの『ミシュランガイド』。そのフランス版に2020年にはじめて登場し、2021年版の東京ガイドにも導入されたグリーンのクローバーマークを知っていますか?「ミシュラングリーンスター」と呼ばれる認証は、「地産地消を推進している」「食品廃棄の減量に取り組んでいる」「環境に配慮した調理方法を実践している」といったサステイナブルな経営をおこなっているレストランに授与されるものです。

あらゆる産業が気候変動へのアプローチを求められているなか、フードロスなどの環境問題と密接に関わる外食産業も、もちろん例外ではありません。グルメガイドの権威ともいえるミシュランがこれらの問題に取り組むレストランを積極的に表彰することで、業界全体の意識が変わり、それがスタンダードになっていくことも期待できそうです。

関連記事:知ってる?「ミシュランガイド東京2021」に新設された〝ミシュラングリーンスター〟の選考基準|(DIME)
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メディア:ライフスタイル提案→商品開発

規格住宅ブランドの「LIFE LABEL」とファッション&カルチャー誌『POPEYE』が、共同で住宅を創るコラボレーションが発表されました。独自の世界観で多くの読者を魅了してきた『POPEYE』ならではの視点でプロダクトを開発し、“シンプルな箱を自分らしくアレンジする暮らし方”を提案していくといいます。

これまでのメディアというのは、世の中の流れに目を凝らし、一歩先のライフスタイル提案を得意としてきました。しかし今では、一歩先の未来を見据えたコンテンツ制作力を商品開発や事業開発に生かし、私たちの生活により具体的な提案をもたらす事例が増えています。読者の共感を掻き立てるコンテンツによるコミュニケーションを得意とするメディアは、ユーザー起点でものごとを考えるDNVB(D2C)時代の商品開発と非常に相性が良いと考えられます。

NEW STANDARD社でも、ライフスタイルメディア『TABI LABO』や、D2Cサプリメントブランド「Tune」の開発・運営により培ってきたノウハウやケイパビリティを活かし、新規ブランドの立ち上げや既存ブランドの再構築をするサービス「BDX(ブランドデジタルトランスフォーメーション)」を提供しています。デジタルメディアだからこそ持ち得たユーザーインサイトやデータを起点に、企業のブランディング戦略を支援しています。

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