目覚まし時計、公衆トイレ、音楽ライブ……2020年代の新しい基準で捉え直す vol.12

2022/01/28
ニュースタ!編集部

2020年代の新しい基準や価値観で従来の価値を捉え直す──。そんなテーマでスタートした本連載。第11回は、オーガニック野菜や成功などの価値のアップデートを紹介しました。

私たちの社会はいま大きな変化を迎えており、気候変動やパンデミックなど、様々な課題を世界規模で共有しています。従来の「当たり前」が通用しない中、より良い世界や社会を構築するための、新しい基準や価値観が生まれています。

そんな新しい基準や価値観を理解し、従来の価値を捉え直してアップデートするフレームワークが、とても重要になっています。それは、あらゆる事象に「意味のイノベーション」をもたらし、私たちの社会や暮らしをより良いものにしてくれる最初の一歩だからです。

さらに、2020年代は「イミ消費」という消費傾向があり、単にモノを消費するのではなく、そこに含まれる「イミ・価値」に消費者は対価を払っていると言われています。今後のブランドがどのようなイミや価値を提供するのか、その価値観のアップデートも急務でしょう。

今回は、「目覚まし時計」から「音楽ライブ」まで、2020年代の新しい基準や価値観の変化を紐解いていきます。

<シューズボックス> 廃棄されるもの→環境配慮への気づきやキッカケ

不要になったものに、新しい価値を与える──「アップサイクル」という考え方には、いまの時代にフィットする思想が詰まっています。リサイクルとは異なり、廃棄されるものを原料レベルまで分解することなくそのまま再利用する点も、省エネルギーの観点から理に適っていると言えるでしょう。

「THE NORTH FACE」は、いずれ捨てられてしまうはずのシューズボックスに新しい価値を付与し、環境配慮へのキッカケへと意味を転換しました。同社は、アップサイクルをユーザーに体験してもらうべく、店舗にあるオリジナルのプレス機を通してボックスに加工を施し、ハンドバッグやカードケースといったアイテムに生まれ変わらせることを可能にしました。

必要に応じて用いていた梱包やDMに、もう一つの付加価値を付けられないか考えてみると、消費者との新しいコミュニケーションの接点が生まれてきそうです。特に今後、ECやD2Cなどの発展によって、店舗の代わりにこうしたパッケージが、顧客との重要な接点になる可能性があります。顧客とのさまざまな接点における体験をデザインしていくことが、ブランドにとって重要な時代だからこそ、パッケージを「理念や価値観を伝えるツール」として再解釈することが求められていくはずです。

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<目覚まし時計> けたたましく鳴る→質の良い眠りをサポート

目覚まし時計のアラームがけたたましく鳴る中、時計が示す数字に目をやり、仕事に向かうまでの流れをイメージしては、必要に迫られ身体を起こす……。もう少し自然に心地よく目を覚ませたら、1日の始まりがすばらしいものになるのに……と、誰もが思うところですよね。

脳と睡眠科学の観点から上質な眠りのために作られた「BRAIN SLEEP CLOCK」は、これまでの目覚まし時計とは一線を画す、革新的な時計です。なんと「時間」の表示がなく、快適な入眠と心地よい目覚めを実現するために、光と音と香りで睡眠リズムをデザインするのだそうです。

時計の意味(価値)は、これまで正確な時刻を伝えることにありました。しかしこの新しい“時計”は、脳や身体がそうしたいと思うように環境をデザインしていくことで、私たちに質の良い入眠と、目覚めのときを教えてくれます。ろうそくが単に部屋を明るくするためのものから、癒しの時間を演出するものになったように、目覚まし時計も「入眠や目覚めの体験をデザインする」といった新しい意味(価値)が求められていると考えられます。

関連サイト:「睡眠リズムをデザイン」する新しい時計・ブレインスリープクロック(BRAIN SLEEP CLOCK)(TABI LABO)

<公共トイレ> 汚くて、入りたくない→誰もが使いたい、インクルーシブ設計

2020年の夏頃から、透明トイレを中心に大きな話題になっていた「THE TOKYO TOILET」というプロジェクト。性別、年齢、障害を問わず、誰もが快適に利用できる公共トイレを渋谷区内17ヵ所に設置するというプロジェクトで、次々とユニークな公共トイレが発表されています(実際に利用可能)。

暗い、汚い、臭い、怖い……と、負のイメージが多い公共トイレ。積極的には利用したくない、と考える人も少なくないのではないでしょうか。一方で、多目的トイレやジェンダーを分けないトイレなど、少しずつアップデートされてきていることも事実です。今回のプロジェクトで、世界で活躍するトップクリエイター達とともに、明るく清潔で、ユニーク、かつ、誰にとっても使いやすいトイレが生み出されています。

これまで「怖い」という理由で公共トイレを利用できなかった人のために、明るく清潔なトイレを作ることは、「カーブカット効果」のようなものをもたらします。これは、弱い立場におかれている人のための政策が、全体の利益にもなるという考え方です。女性や子どもにとって使いやすいトイレというのは、男性やお年寄りにとっても、快適なトイレということではないでしょうか。身近な公共トイレという存在から、インクルーシブな社会が広がっていくかもしれません。

関連記事:透明トイレでも話題!渋谷区内17ヵ所の公共トイレが生まれ変わるプロジェクト(TABI LABO)
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<夏のルームウェア> 空間を冷やす→繊維の力で身体を冷やす

日本のムシムシした高湿度な夏は、どうしたってエアコンの力が必要です。近年は特に熱中症のリスクも指摘されており、我慢比べでは過ごせなくなってきました。

そんな日本の気候特性のために、「紙糸」という和紙の主原料と同様の素材を織り込んだ繊維を使って開発されたルームウェアがあります。日本では古来からふすまや障子に紙が使われ、その吸湿効果が日本の夏において重宝されてきました。紙糸の吸湿パワーで肌離れが良く、ドライ感が続き、サラッとした肌触りを感じることができる点が魅力です。

快適なドライ感を衣服によって得られれば、夏場にエアコンの設定温度をあと1度上げることも可能になります。冬には同じように、繊維の力で吸湿発熱する衣服も普及しています。温故知新のアプローチで、古い知恵を紐解きながら最新のテクノロジーを応用することで、エネルギーに頼らず暮らしを快適にする工夫ができそうです。

関連記事:日本生まれのゴールドウインがつくった、日本の夏のためのルームウエア。(TABI LABO)

<音楽ライブ> 環境配慮なし→低炭素ライブツアー

トリップ・ホップの先駆者として知られる英・ブリストル出身のバンド「Massive Attack」は、環境問題の解決のため、2019年から自身のツアーに関するさまざまなデータを発表してきました。そのデータを用いて、科学者たちが具体的なアクションをまとめたレポートを発表。音楽ライブが地球環境に対してどんな対策ができるのかについての可能性を示唆しています。

実は音楽業界において、エネルギー問題や環境配慮に関する話題は長く議論されてきました。大量の機材を持ち運ぶ全国ツアーや派手な演出など、エネルギーを多く用いる業界であることや、環境問題に関心のあるアーティストが少なくないことも関係しているでしょう。日本ではZeppグループが2003年より、同ライブハウスでの電力をグリーン電力で賄っていたり、自然エネルギーだけを用いたフェスが開催されていたりもします。

このような事例はまだ一部でしかありませんが、今後、世界レベルでこうした動きがみられるようになるでしょう。ファッション業界と同様に、環境配慮なきアーティストは支持が集めにくくなるといった事態も容易に想定されます。そもそもミュージシャンは、メッセージ性の強い側面も持ち合わせます。音楽を通じて社会批評をしたり、時代の空気をつくったりする中で、こうした取り組みを進めていくのは、必然のことのようにも思えます。

関連記事:音楽業界の低炭素ライブに関するレポートが発表(TABI LABO)

<思考のスパン> 短期思考→長期思考

いま、時代の変化は「思考のスパン」といった抽象的なものにも現れているように思います。少し前の時代までは、いかに短期間で効率よく成果を上げるかといった「短期思考」がもてはやされてきました。企業の四半期決算に代表されるような、短期間での成果を可視化しようとする動きは、ビジネスのあらゆる場面で見受けられます。

しかしいま、いかに長期的な視点を持って考えることができるかという「長期思考」の重要性に、気づき始めている人たちがいます。例えば、アメリカで新設された「ロングターム証券取引所」は、企業に長期的な視点に立った経営を促し、株主にも長期保有を促すことを掲げている証券取引所です。

こうした「長期思考」が重要な背景として、テクノロジーの進化や気候変動などによって、いまを生きる人々が亡くなった後の、将来世代まで影響及ぼすような時代を生きているということが挙げられます。長期的な目線で、地球環境やテクノロジーの功罪を考える責任が、私たちにはあると考えているのです。事業を目先の利益だけでなく、持続可能なものにしていくこと。また、株主だけでなくあらゆるステークホルダー(地球や未来の人類を含む)の利益になることを行っていこうという視点で考えたとき、いまの消費社会や資本主義のあり方の見直しが進んでいくはずです。

関連記事:米国で新設された「ロングターム証券取引所」が掲げる理念(Forbes)
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