TABILABOからNEW STANDARDへ。今回のコーポレートリブランディングは、クリエイティブの力を経営戦略に昇華し、事業成長につなげるべく、自社内のメンバーにより実施しました。社名変更と合わせて、そのリブランディングの全貌を公開していきます。第一弾では、リブランディングの経緯と実施したことを代表の久志 尚太郎が語りました。
創業5年、ぶつかった壁
TABILABOの創業から5年が経ち、事業を拡大していくなかで、何度も自分たちの立ち位置を見失い、事業や組織に関する意識にズレが生じてきた。改めて自分たちの想いと向き合い、目指すべき姿を定義する必要があった。そして、これから更に未来へと進むために、想いをVISIONとして指し示し、社会にインパクトのある事業成長と企業成長を実現する。そんなアイデンティティを必要としていた。
三回目の資金調達に併せて、会社のアイデンティを再定義することにした。会社のあり方を、あるべき姿を、自分たちの手で創っていきたかったからだ。
2019年の年明け、僕は家で独り新しい社名を考え、『NEW STANDARD』と打ち立てた。そして2019年2月社内にプロジェクトチームを立ち上げ、業務資本提携を結んだパートナーをアドバイザーとして迎え、リブランディングプロジェクトがスタートした。
メディアからムーブメントを起こす会社へ
まず、考えたこと。それは、メディア事業や広告事業の本質的な意義や意味だった。僕たちにとってメディアはPVを伸ばしていくことが目的ではないし、広告はかっこいいものをつくることが目的ではない。何を成し遂げるために今まで数々の事業を創ってきたのか?そして本当にやりたいことは一体何であるのか?
この問いに対し、自分たちが実現したい世界や未来をホワイトボードに描き、眺めながら何度も議論を重ねた。そして、最も大切にしている価値観を再確認した。それは「社会の可能性」と「人間の可能性」を強く信じること。既成概念やどこかの誰かに決められたものではなく、もっともっとその先にある、想像もつかないような可能性を信じることだった。
世の中にムーブメントを起こし、新しいスタンダードを創る──。これこそが僕たちの使命であり、メディア事業や広告事業の本質的な意味だと定義した。
スマートフォンの普及によりデジタルコンテンツの影響力が広がり、メディアや広告はそのかたちを急速に変化することを求められてきた。2014年創業以来、ずっとその答えを模索し続けてきた。メディア企業でも、クリエイティブブティックでも、広告代理店でもない。僕たちは、世の中にアジェンダを投げかけ、ムーブメントを起こすことで、新しいスタンダードを創る企業「ムーブメントカンパニー」だ。
CI=MI+VI+BI。そして、幾多のプロジェクト
僕たちはコーポレートアイデンティティを次のように定義している。
CI(Corporate Identity)=MI(Mind Identity)+VI(Visual Identity)+BI(Behavior Identity)
つまり、組織の存在とは、理念、視覚、行動が組み合わさったものである。
これまで培ってきた核と上記の定義を軸に、MI→VI→BIの順番でカタチにしていった。リブランディングを会社のロゴを変えるようなことだけで終わらせないように、より大きな未来を描く事業計画の設計や、創業以来、急成長してきたなかで複雑に入り組んでしまった会議体・組織形態の見直し、新たな人事評価制度の導入まで。幾多にも及ぶプロジェクトを三ヶ月で同時に推し進めることにした。
通常1年以上かけて行うようなプロジェクトをこのスピード感で行うことに関しては、社内外からハレーションが生まれることは容易に想像ができた。しかし、社内のリソースを集約し目先の利益を捨てるからには、そう長く時間をかけられなかったのも事実だ。今まで積み重ねてきたものを上位概念として再定義することで昇華し、さらなる事業成長と企業成長につなげるCIを創るために、このプロジェクトを進めることを決めた。
VISIONやMISSIONの形式にはこだわらない
最初に手がけたのは、MI(Mind Identiry:理念)だ。VISIONやMISSIONに落とし込むための既存のフレームワークは使わずに、僕たちが最も大事にしている価値観──「社会と人間の可能性を強く信じる」ことを、どのように理念に反映させるかを考えていった。僕たちの素直な気持ちや社会に対する想いを削ぎ落とさずに、よりエモーショナルに伝えたかったからだ。
『EXPANDING』可能性と広がりを、生み出すVI
次にVI(Visual Identity:視覚)。当社には創業当初からデザインチームがあり、社内のDNAを共に育んできたデザイナーと常に多くのプロジェクトを進めてきた。彼らを中心に、デザイン・シンキングのプロセスを取り入れ、抽象化と具現化を往き来し、デザイナーの言語化しずらいプロセスを共有。多くの議論を踏まえ、VIは生み出された。
ロゴタイプの文字が一部隠れている部分は「まだ見ぬ世界」があることを表現し、社会の可能性と力強さを示そうとしている。
デザインチームは、これまで事業を共に創ってきた仲間だ。だからこそ、理解度が高い状態でプロジェクトを進めることができたし、経営戦略を策定する過程で、当社の価値を最大化するデザインとはなにか?についても議論を重ねることができた。これはスタートアップが自社にデザインチームをおく価値だと確信できた。
傍観者になるな、当事者であれ
最後にBI(Behavior Identity:行動)。当社の過去そして未来を最も理解している、創業メンバーを中心に制作し、「OUR VALUES(『NO SPECTATOR』と『OUR RULES』」と「HOW TO MAKE」の2つで構成した。
アメリカ・ネバダ州で毎年開催されている伝説のフェスティバル「バーニングマン」へのリスペクトを込めて、そのコンセプトである『NO SPECTATOR(傍観者になるな、当事者であれ)』という言葉を、BIにもオマージュとして使わせてもらった。
CIは誰のもの?
今回のリブランディングは、自社でチームをつくり、自分たちでアイデンティティを創りあげることにこだわった。
『WE CREATE WHAT WE WANT -自分たちが欲しいものや未来は自分たちの手で創り上げる- 』これは創業時から培ってきた企業文化の中心にある考え方だ。自分たちの能力を最大限発揮し、やるべき仕事、あるべき組織の姿をデザインする。このプロジェクトを自社のチームでやり遂げることは、大きなチャレンジであり、集大成だった。
とはいえ、自社でリブランディングを行うことは、そう簡単ではなかった。プロジェクトに紐づくタスクの量、リアルタイムで社内に共有する難しさ、そしてリブランディングにリソースを割くことで目先の利益を捨てることなど。同じ言葉を使い、お互いがわかっているつもりが全くわかっていなかった、なんてことも頻繁に起きた。何度も何度も失敗を重ね、今なおプロセスの途中として、自社の制度や仕組みを見直し、発展させている最中だ。
CIを本気でここまで考えたのは、創業以来初めてのこと。具体と抽象を行き来し、言語化を重ねることはとても困難な作業だが、自分たちの理解を高めるにはとても有効だった。会社のあらゆる側面に目を向け、アップデートできたことが、最大の価値だ。
CIが企業成長に不可欠なことは言うまでもないと思う。ただし、その意味や意義を細部まで浸透させ、使いこなすのは本当に難しい。だからこそ、デザインやクリエイティブの力を会社経営や事業成長に昇華させることができる、チームや文化を育てていくのは、これからの時代において物凄く重要になると思っている。CIは企業価値の源泉であり、企業と関わりのあるすべての人のものだから。
>>vol.2:MI<<
立場や役職に関係なく”同じ景色”を見るための
企業アイデンティティのつくりかた
>>vol.3:BI<<
企業で働くクリエイターをどう評価する?
VALUESと評価制度が連動する組織デザイン
>>vol.4:VI<<
「感覚的に判断させない」NEW STANDARD社、
ビジュアルアイデンティティ刷新のプロセス公開