企業で働くクリエイターを評価するための組織デザイン

2019/09/06
ニュースタ!編集部

2019年8月1日、NEW STANDARDは株式会社TABILABOから正式に社名を変更し、コーポレートリブランディングの全貌を公開しています。
第三弾では、BI(Behavior Identity:行動)が生まれた経緯と、それを評価制度と結びつけるための組織の再設計について解説します。今回は、代表の久志尚太郎、創業メンバーで取締役の安井透、組織づくりにアドバイザーとして関わってくれている株式会社ナガオ考務店の長尾彰さんに聞きました。(聞き手:ニュースタ編集部)

久志:今回新たに掲げたBIは、日々の業務の中での私たちの規範であり、指針です。当社のメンバーがBIを見れば、日々どのようにクリエイティブワークに取り組むべきか理解でき、私たちの行動(Behavior)に関する、すべての価値観がつまったものです。

組織におけるBIの位置づけを久志はこのように定義します。BIをNEW STANDARDという組織の制度に落とし込むにあたり、次の3つを同時に策定しました。

本プロジェクトにおいて、久志は経営者としてCIの重要な要素であるBIを考え、安井はHR統括として人事評価制度を担当。それぞれの役割と視点を掛け合わせながら、BIと評価制度の設計を同時並行で進め、2つを連動させることが重要でした。

2年前の失敗から
一歩踏み出すために

NEW STANDARDでは2年前に一度、社員主導で行動指針の策定を行いました。時間をかけ全社員を巻き込みながらつくったものの、ある課題が発生します。それは「行動指針が評価制度や日々のコミュニケーション、事業執行につながらない」ことでした。

久志:つくった行動指針は非常に良いものだと思うのですが、個々のメンバーの行動まで落とし込めなかったんです。クリエイティブとして浮いてしまっている状態でした。前回の行動指針で言いたかったことを引き継ぎつつ、NEW STANDARDのための新しい“言葉”に昇華する。そして日々の行動に落とすために評価制度に結びつく組織改革も同時にやりきる。BI策定は、そんな意識で挑みました。

強いカルチャーがある会社だからこそ、組織開発の正しい方向へ客観的に導いてくれる方に相談したい──。久志のそんな思いから最初に相談したのが、長尾彰さんでした。当時、長尾さんはNEW STANDARDの組織開発に関わりはじめた頃で、ファシリテーター兼コンサルタントとして主に執行役員のMTGに参加していました。

長尾:最初に話を聞いた時、評価制度や組織設計がここまで何もないのに会社が成長し、アウトプットし続けていることに驚きました(笑)。ただこの会社には創業当初から大事にしているカルチャーが強く根付いていましたし、記事をつくるとか、広告をつくるとか、組織や個人がどんな仕事をしているかは明確だったんです。あとは社員一人ひとりの「なぜそれをするのか」という目的や、「組織が個人にどんな行動を求めるか」という行動指針を明確にすること。まず、そこから整理することにしたんです。

長尾さんはサイモン・シネックが提唱したゴールデンサークル──Why、How、Whatで構成されるコミュニケーションスタイルを参考にしながら、このように語ります。

バーニングマンに
影響を受けた
新しいVALUES

BIの策定は、企業として最も大切にしている価値観を反映させたMI(Mind Identity)を参照することから始めました。

久志:ムーブメントを生み出し、新しいスタンダードをつくるという会社の目指すべき姿や、大切な価値観をエモーションに伝えるために物語に落とし込んだのがMIでした。それを誰もが立ち返り、行動に落とせるようにプロセス化したのがHOW TO MAKEです。僕たちが培ってきたムーブメントの起こし方をベースに、まずこの7つのステップを決めました。

次に、個々のメンバーの指針として策定したのがOUR VALUESでした。2年前に作った行動指針を、今回のMIに向けて昇華したNO SPECTATORと、やらないことだけを定めたOUR RULEの2つで構成されています。
創業メンバーで当社の役員である石川を加え久志、安井、石川の3人で、創業期から今までのことを振り返りながら、丁寧に議論を重ねていきました。「実は行動指針をつくりたくなかったんですよね」と久志は振り返ります。

久志:クリエイターって自分の行動を規定してほしくない生き物だと思うんです。できるだけ自由にして可能性を広げ続けたい。だから行動指針ではなくコンセプトとしてNO SPECTATOR──傍観者ではなく当事者になれ、という言葉を選びました。これは自分が敬愛してやまないフェスバーニングマン」のものをオマージュしています。OUR RULEも音楽フェスティバルで「ゴミを捨てるな」というシンプルなルールがあるように、楽しむために最低限のものだけを定めました。ルールは浸透したら、なくしていきたいですね。


クリエイターを
どう評価すればいいのか?

BIを構成するHOW TO MAKEとOUR VALUESをどのようにして評価制度とひも付けたのか。その設計思想には、クリエイターを評価することの難しさが関わってきます。

安井:「クリエイターに対するあるべきマネジメント」が定義できておらず、マネージャー自身がなにをすれば良いかわからない状態が続いていました。クリエイターと管理職の2つをどう評価し、それぞれの社員の適正に合った形でキャリアパスを描くのかが最も難しいチャレンジでした。一般的な制度設計では専門職とマネージャーのルートを分けることが多いですが、いまのNEW STANDARDの組織にチューニングするためにはそれを完璧に分けたくなかった。いかにグラデーションにするかが重要だったんです。

もうひとつのチャレンジは、メディア、ブランドスタジオ、イベントスペース&カフェ、D2Cなどのさまざまな事業を手がけるなかで、それぞれにグレード人事評価を当て込んでいくことでした。

具体的な制度設計に落とし込む際、スキルという縦軸と、チーム貢献度という組織開発の横軸の掛け合わせで評価を行なうことにしました。スキルであれば、「指示された仕事ができる」「自律的に行動できる」「業界に影響を与えている」などの大きな基準を定めつつ、部署や職種によって細かな制度設計を行いました。

安井:グレード人事評価はまだBIを反映しきれていない部分もあります。全体の査定に占める割合は決して大きくないですが、周囲のメンバーに5段階で評価してもらう「360°評価」では、OUR VALUESで定めている項目を基準として制度のなかに落とし込みました。

BIを
メンバーの行動に
結びつけていくために

BIを策定し、それを評価制度と結びつけたからといって、プロジェクトは終わりではありません。いかに個々人のメンバーの行動として定着させるかに取り組む必要があります。

これら3つの取り組みを行なっていく予定です。ムーブキャンプとは、個人としてのWhy、How、Whatを考えるワークです。現在、執行役員がムーブキャンプを終え、ゆくゆくはメンバー全員が取り組みます。

長尾:会社のBIやMIを踏まえ、自分のWhy、How、Whatを言語化していくと、その差分が見てくるはずです。個人のMIとBIをつくる、というとわかりやすいでしょうか。違いをどのように埋め、学んでいけばいいかを考えるのが「Move Camp」というワークショップです。

2年前の失敗を経て、今回のBI策定は評価制度と連動させ、組織に浸透させていくプロセスまで同時に設計しました。まだ試行錯誤を重ね発展させている途中で、特に「クリエイターをいかに評価するか?」は難しくも取り組み続けたいテーマだと考えています。自分たちの可能性を最大限広げながら、ムーブメントを起こし新しいスタンダードをつくる当事者として、どういう立ち振る舞いをするべきか、これからも私たちは向き合い続けなければなりません。

※新しいCIはこちらのページからご覧いただけます。

<続編>CIリブランディング記事は随時公開予定!

>>vol.1:全貌<<
メディア企業からムーブメントカンパニーへ。
CI策定の全貌公開!
>>vol.2:MI<<
立場や役職に関係なく“同じ景色”を見るための
企業アイデンティティのつくりかた

>>vol.3:BI<<
企業で働くクリエイターをどう評価する?
VALUESと評価制度が連動する組織デザイン

>>vol.4:VI<<
「感覚的に判断させない」NEW STANDARD社、
ビジュアルアイデンティティ刷新のプロセス公開

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