ヘルスケア産業における「パーソナライズ」の先進事例

2020/05/25
ニュースタ!編集部

NEW STANDARDは、SDGsなどを背景にミレニアルズから生まれた、世界の新しい基準や価値観をまとめたレポート「GLOBAL CREATIVE REPORT」の企業向け販売を行なっています。毎月異なるテーマを届けるなかで、5月は「ヘルスケア」を特集しました。

新型コロナウイルスの影響を受け、自宅でのフィットネスやウェルネス意識が高まるなかで、 いま改めて「ヘルスケア」が見つめ直されており、企業は参入できる領域やチャンスを見出そうとしています。同レポートの制作を担当したリサーチャーのYan Yushuが、その読みドコロを語ります。

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ミレニアルズやZ世代にとっての
「ヘルスケア」とはどういうものか?


ストレス社会や慢性的な生活習慣病が増えているという背景において、ミレニアルズやZ世代にとって「健康でいる」ことは、単に「病気にかからない」ことを意味するのではなく、ウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態)であり続けることを意味します。

また、欲しい情報を瞬時に得られる環境で育ったデジタルネイティブであり、多様なライフスタイルと価値観を持つミレニアルズとZ世代は、「バーティカル」と「個」にフォーカスした消費者ニーズにシフトしています。

大量消費時代から、コストも手間もかかるカスタマイズへのシフトはテクノロジーの進化により実現し、「セルフケア」や「パーソナライズ」に特化したサービスは従来のビジネスモデルを代替し主流となっていくでしょう。さらに「コト消費」を好む彼らにはヘルスケアの分野においても、ライフスタイルに溶け込むようなシームレスなCX(顧客体験)を求めています。


Yan Yushu:5月の「GLOBAL CREATIVE REPORT」は「ヘルスケア」を総力特集しました。上述の通り「ヘルスケア」は単に健康について考えることではなく、ウェルビーイングの追求を行なう概念として拡張されはじめています。

今回わたしが注目したキーワードは「パーソナライズ」でした。大量生産に対してパーソナライズという行為はコストも手間もかかると思われてきましたが、テクノロジーの進化がその敷居を下げてくれています。

パーソナライズ化を象徴する事例に、サブスクリプション型にてサプリメントを提供する「Care/of」があります。創業者のアカーシュ・シャー氏は「ヘルスケア分野こそパーソナライズが必要」という信念でブランドを立ち上げ、ハーバード大学やタフツ大学などトップクラスの医学専門家、栄養士をアドバイザーとして迎え、ユーザーアンケートに基づく細かい個人のニーズに対応する100%カスタマイズ可能なサプリメントを提供しています。

これからの時代において、企業は大きな市場やマスをとりにいくという発想ではなく、バーティカルな市場を狙っていく必要があると、たびたび指摘されてきました。ヘルスケア産業には、その事業転換を進めるためのヒントが眠っています。

そして「ヘルスケア」が単に健康を志向するものではなく、人間のウェルビーイング追求に貢献するものだとすれば、ライフスタイルや食などの周辺産業において、ヘルスケアのパーソナライズ化やバーティカルな市場に対する商品のつくり方は、参考になるのではないかと考えています。


[事例]
「フィットネス界のNetflix」
こと 「Peloton」

Yan Yushu:レポートから紹介するのは、「フィットネス界のNetflix」と呼ばれている「Peloton」です。アメリカのトレーニングジム会員の登録率は過去11年間で67%も増加しており、平均的な運動時間も50%ほど伸びているなど、フィットネス市場は急成長を迎えています。

2012年に創業し、在宅フィットネス市場に参入した「Peloton」はコンテンツとコミュニティへの注力でフィットネス業界のユニコーンへと成長しました。ハードウェアとそれを使用する継続コンテンツの両方を販売する斬新なビジネスモデル「SaaS + a Box」を取り入れ、家庭用エアロバイク(約24万円)、もしくはランニングマシーン(約46万円)と、月額4千円のオンラインレッスンのサブスクリプションサービスをセットで提供しています。

カリスマトレーナーによるライブレッスンは全米からアクセスでき、数千人が同時に受講。ディスプレイにはリアルタイムで参加者のランキングなどが反映され、まさに「Peloton(マラソンや自転車などで集団で励ましあって競争すること)」の擬似体験の提供に成功しました。

「フィットネス界のNetflix」と創業者も胸を張る7,000時間以上のコンテンツ以外にも、NYスタジオからの12時間ライブ放送やエクササイズ中の音楽提供までフィットネス体験にまつわるあらゆるコンテンツに工夫をした結果、ミレニアル世代を含め有料会員数が88万人越えと驚異の人気をみせています。


彼らが特徴的なのは、新しいビジネスモデルを確立したことです。それはハードウェアを売ると同時にオンラインレッスンのサブスクリプションというビジネスモデルです。これまではハードウェアを購入して終わりだったのが、購入時点がスタートであり、そこから継続的な顧客接点が生まれていきます。当然、顧客ごとのライフタイムバリューも高くなるわけです。



「GLOBAL CREATIVE REPORT」は、SDGsなどを背景にミレニアルズから生まれた、世界の新しい基準や価値観を企業向けにまとめたレポートです。
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