交通機関の予約から決済まで一括化したMaaSサービスで、社会はどう変わるのか?

2021/02/15
ニュースタ!編集部

NEW STANDARDは、SDGsなどを背景にミレニアルズから生まれた、世界の新しい基準や価値観をまとめたレポート「GLOBAL CREATIVE REPORT」の企業向け販売を行なっています。毎月異なるテーマを届けるGCRの最終回では「モビリティ」を特集しました。

2020年11月、Hondaが自動運転レベル3に求められる国土交通省の型式指定を取得したことにより、日本企業が世界をリードしていく兆しがみえてきました。高速道路渋滞時など、一定の条件下であれば自動運転システムがドライバーに代わって車を操作できるのです。

また、新型コロナウイルスに伴う感染症の拡大により、3蜜を避けなければいけないとして移動のあり方も変化しています。モビリティはこれからどのように進化していくのでしょうか?

同レポートの制作を担当したリサーチャーYan Yushuが、その読みドコロを語ります。

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ミレニアルズやZ世代にとっての
「モビリティ」とはなにか?


都市人口の急増、自家用車の普及による交通渋滞や環境破壊、人口高齢化といった社会問題に直面し、人々は「移動」へのイノベーションを求めています。

AIやIoT、5Gなど革新的なテクノロジーの実用化によって、交通移動の可能性が広がっています。人が移動する手段や、社会の交通システムと情報コミュニケーションを最適化するモビリティ・マネジメントが期待されています。

ミレニアルズやZ世代を筆頭に加速するシェアリング・エコノミーは「所有」から「共有」へのシフトをあらゆる領域へと広げ、インターネットとモバイル端末といったソーシャル・インフラを基盤とする新しいモビリティサービスが登場し、従来の産業構造を変えていきます。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、交通インフラや移動手段もより安全、安心な「ニューノーマル」に変わりつつあります。

Yushu Yan:1月の「GLOBAL CREATIVE REPORT」は「モビリティ」を総力特集しました。今回わたしが注目したのは「アメリカと中国におけるイノベーションの起き方の違い」です。両国の体制の違いが影響しているのですが、これを知っておくことで他のイノベーション事例を調査する際にも役立つかもしれません。

Yushu Yan:アメリカはテクノロジーを起点としたイノベーションが頻繁に起きています。壮大なビジョンを実現するために巨額の資金を投じて、研究や開発を進めています。対して、中国は政府のバックアップが厚く、社会実装実験のなかで試行錯誤が繰り返され、イノベーションが起きる傾向にあります。

たとえば、アルファベット傘下の自動運転車開発企業「ウェイモ」は彼らのビジョンに沿ったテクノロジーを開発し、商用化をしようとしています。中国で検索エンジンを提供する「バイドゥ」は、政府がつくった実験エリアを活用し、わずか3年で世界最高峰の技術を保有するまでに成長しました。

Yushu Yan:正直、これらのモビリティ企業の真似をするのは現実的ではないかもしれません。しかし、彼らの進化を詳細に分析すると、3つの重要なキーワードを抽出できます。「テクノロジー」「サステイナビリティ」「シームレスなCX」です。

ミレニアル世代やZ世代はデジタルネイティブであるため、「テクノロジー」を使用することに抵抗がないため、受け入れられやすいと言えます。また、彼/彼女らは環境保護や高い社会貢献意識があり、「サステイナビリティ」を気にかけていることは支持される理由のひとつになるでしょう。

そして「シームレスなCX」を実現することは、これからの時代において、サービスの根幹にあるべきものとなるはず。もし提供できなければ、優れたサービスを求めるユーザーの声に応えられず、淘汰されていってしまうかもしれません。

[事例:MaaS]

世界初のMaaSプラットフォーム

Yushu Yan:レポートから紹介するのは、先の3つのキーワード「テクノロジー」「サステイナビリティ」「シームレスなCX」を全て満たしているMaaSプラットフォーム「Whim」です。彼らはモビリティ業界において、シームレスなCXをはじめて提供した企業としても注目されています。

彼らのサービスはスマートシティのインフラづくりやサステイナブルな都市づくりにも有効と言えるでしょう。

自動車や自転車、バス、電車などの移動手段を利用する場合は、各サービスの事業者へと、予約や料金の支払いをしなければなりませんでした。それらをひとつの大きなサービスとしてとらえ、検索から支払いまでをシームレスに利用できるようにする考え方を「MaaS」と呼び、ヨーロッパではフィンランドを起点に広がりをみせています。

同国を拠点にする「Whim」は「MaaS」を初めて都市交通に導入。2016年にヘルシンキの交通当局と実証実験をしたのち、正式にサービスが開始されました。

毎月定額もしくはその都度お金を払ってポイントに換え、ポイントを利用することで、いくつかの交通手段から最適な移動ルートを自動検索し、目的地へと運んでくれます。予約から 決済まで一括して行えるのが最大のメリットでしょう。

利用できる交通手段は、電車やバスのほか、タクシー、バイクシェアなど。ユーザーがスマホアプリを提示するだけで、交通手段を利用できるようになっています。

ヘルシンキのWhimユーザーの交通利用状況は、サービス開始前には公共交通が48%、自家用車が40%、自転車が9%の状況でしたが、2016年のサービス開始後は、公共交通が74%と大きく伸びたほか、タクシーの利用が5%に増加した一方で、自家用車は20%に減少したと言います。

NEW STANDARD社が発行してきたGCRは今回のモビリティ編で最終回を迎えます。「NEW STANDARDリサーチ」という名称で内容をアップデートし、新たなるレポートを発行予定ですので、乞うご期待ください!

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