ミレニアルズ及びZ世代に関する調査・研究をおこなう「NEW STANDARD THINK TANK」が、いま注目するZ世代に関するキーワードを解説していく本連載。新しい価値(イミ)を象徴するキーワードの意味や事例からZ世代の価値観をわかりやすく解説します。
▶️ 【ニュースタンダード キーワード!!】一覧はこちら
BANI(バニ)とは?
BANI(バニ)とは、Brittle(もろい)、Anxious(不安)、Non-Linear(非線形)、Incomprehensible(不可解)の4つの形容詞の頭字語で、アメリカのシンクタンクIFTF(Institute For The Future)の未来学者Jamais Cascio氏によって、VUCAを超えて現代社会が直面しているより深刻な混沌状態を理解し、未来に取り組むためのフレームワークとして提唱されました。
参照:Jamais Cascio(IFTF)
参照:BANI – Living in the Age of Chaos
VUCAが当たり前になってしまった世界の現状を理解するために
VUCA(ブーカ)は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭字語で、1980年代にアメリカ陸軍の研究から生まれた、変化を理解するためのフレームワークです。2000年代初頭にはビジネス戦略にも活用され、不確実性が高く将来の予測が困難な状況を表す言葉として、一般にも知られるようになりました。
テクノロジーの普及と発展がもたらしたVUCAの時代の複雑さに適応するために開発された未来思考や戦略シナリオ、シュミレーションなどの手法やツールは、数十年に渡って有益なフレームワークとして機能してきましたが、長年、予測とシナリオ開発の分野で活動してきたCascio氏は、2016年から2017年頃にはもはや世界にとってVUCAはデフォルトであると感じていたと言います。
BANIは、VUCAが世界システムの混乱を理解する方法として不十分になっていたなかで、不安定なだけでなく混沌としている状況、結果が予測しにくいだけでなく予測不可能な状況を理解するためのフレームワークとして2018年に提唱され、コロナ禍の2020年4月にCascio氏のエッセイでその定義が発表されたことで広く知られるようになりました。
Cascio氏によると、BANIはカオスな世界を描写するだけでなく、カオスな世界で生きる人間の感情を表すものだと言います。
参照:It’s a “BANI” World: Brittle, Anxious, Non-linear, Incomprehensible w/ Jamais Cascio(The Stoa)
カオス化する現代社会への対応
もろさ(Brittleness)
「もろさ」は、一見強固に見えるシステムが、小さなきっかけで崩壊してしまうことを指します。効率性を追求し、余剰を排除することで、システムは脆くなります。効率化は生産性を高めますが、同時に、外部からのショックに対する耐性を低下させる可能性があるのです。かつてないほど複雑に相互依存し合った世界では、気候変動やパンデミックといった事態は一国の問題ではなく、グローバルな危機を引き起こす可能性があります。
不安(Anxiety)
「不安」は、現代社会において多くの人が抱えている感情です。情報過多や不安を煽るような情報、不確実な未来に対する恐れ、そして自分自身の無力感などが、不安感や焦燥感を増幅させます。特に、社会の変化が加速する現代では、将来に対する予測が難しく、人々はより強い不安を感じます。
非線形(Nonlinearity)
「非線形」は、原因と結果が単純な比例関係にないことを指します。ある要因が少し変化したときに、結果が比例して変化するのではなく、全く異なる結果が生まれる可能性があるということです。非線形な世界では、過去のデータに基づいた予測が必ずしも的中するとは限らず、非線形なシステムは、複雑な相互作用によって成り立っています。そのため全体像を把握することが難しく、部分的な最適化が全体最適とは限らないという特徴があります。
不可解さ(Incomprehensibility)
「不可解さ」は、複雑なシステムや現象を理解できない状態を指します。現代社会は、複雑化の一途を辿っており、多くの現象が私たちの理解を超えています。特に、人工知能や機械学習の分野ではブラックボックス化が進み、その仕組みが理解しにくくなっています。複雑なシステムは、人間の直感や常識を超えて動作するため、予測不可能な結果を生み出すことがあります。
BANIの世界を生き抜くために
BANIの世界におけるこれらの要素を理解し、適切な対応策を講じることで変化を恐れずに未来を切り開くことができるとCascio氏は述べています。
・もろさに対しては、回復力と余裕を備える必要があります。システムに多様性を持たせ、外部からのショックに備えることが重要です。
・不安に対しては、共感と意識を大切にすることが大切です。他者とのつながりを深め、自分自身の心の状態に意識を向けることで、不安を軽減できます。
・非線形性に対しては、文脈を理解し、柔軟性を持つことが求められます。複雑な状況を全体として捉え、変化に対応できる能力を養いましょう。
・不可解さに対しては、透明性を確保し、直感を大切にしましょう。複雑なシステムも、透明性を高めることで理解を深めることができます。また、直感的な判断力も重要です。
参照:自分自身の弱さ「ヴァルネラビリティ」を受け入れることが自信に繋がる?(ニュースタ)
BANI(バニ)のキーポイント
・VUCAからBANIへのシフト
・共感(エンパシー)とマインドフルネスの重要性
・透明性と直感の重要度の高まり
What’s NEW STANDARD?
「フレームワーク」
STANDARD:客観的な状況把握を重視するVUCA
↓
NEW STANDARD:人間の心情や感覚を重視するBANI
***
ミレニアルズ及びZ世代に関する調査・研究をおこなう「NEW STANDARD THINK TANK」による、世界中で今生まれている新しい基準や価値観をまとめた四半期レポートは、以下から無料でダウンロードいただけます。
***