「新しい基準や価値観で社会を捉え直す」ために日々やっていること

2021/02/26
久志尚太郎

働き方やオフィスのあり方など、2020年は様々なコトやモノに対する価値観の変化が起こりました。言うまでもなく新型コロナウイルス感染症の拡大も影響していますが、人々のサスティナビリティ意識やジェンダーに対する考え方の変化など、ほかにも多くの価値観が変わろうとしています。

そんな社会の変化に合わせて、ブランドやプロダクト、サービスも変化を求められます。NEW STANDARD社では、目の前にあるものを変えるのではなく、その捉え方を変える──新しい基準や価値観で従来の価値を捉え直す独自のフレームワークを開発しています。それを活用することで、プロダクトやサービスを時代の価値観に沿うかたちでリブランディングしたり、新たなるムーブメントとして広げていったり……そんな活動をしています。

このフレームワークを活用するうえで、僕は「具体と抽象を行き来する思考法」を大切にしています。

2020年代の新しい基準で捉え直した
「ラグジュアリー」と「購買活動」

まず、時代の価値観の変化について見ていきましょう。たとえば、「時代の豊かさを象徴する◯◯」を表現する際に使用されるラグジュアリーという言葉は、少し前までは高級品や豪華な家、貴族的なイベントがその対象でした。

しかし、自分に見えないコトや手に届かないモノがラグジュアリーだとするなら、現在は単なる金銭的な豊かさではなく、精神的な豊かさこそが当てはまるのではないでしょうか。たとえば、長野県・野沢温泉村で、村に暮らす人と一緒に野菜を収穫し料理をする自給自足キャンプを提供する「LIFE FARMING CAMP in NOZAWA-ONSEN」は、ラグジュアリーだと言えるでしょう。

購買活動も単なる消費活動ではありません。消費者はそれを通して何を表現したいのか。購買活動は事業者への応援であり、投票行為の色が強くなっているのです。クラウドファンディングサービス大手の「Makuake(マクアケ)」が、自社の取り組みをクラウドファンティングではなく「応援購入」と位置づけているは、この変化を表す事例のひとつでしょう。

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日常的に具体と抽象を行き来し
対象の捉え方を変え続ける

新しい基準や価値観でこれまであったモノ・コトを捉え直すには、そのモノ・コトの本質的な価値について考えたり、内包している価値を因数分解したりすることが求められると思っています。

「住居」というものには、さまざな機能があります。「寝る」「リラックスする」「ご飯を食べる」「娯楽を楽しむ」……最近では仕事をする場所とも言えそうです。もしくは平日は仕事をする場所、休日は遊ぶ場所といった分解の仕方もできますよね。僕は自宅である世田谷ベース、車中泊が可能なハイエースであるモバイルベース、大きめのテントである野営ベースの3つに「住居」を分散化させました。「平日に仕事をする場としての自宅」と、「休日に娯楽を楽しむ場としてのモバイルベース、野営ベース」と、それぞれの機能ごとに特化した場をつくりました。

コロナ禍でそれまでオフィスにあった機能が自宅やカフェに分散化していったように、これまでひとつの場所はひとつの提供価値に縛られていたれど、価値を分解していくことで、その空間の別の使い方、代替案による置き換えなども可能になりそうです。

また、「地方」を捉える際に、その構成要素として山、森、海、祭り、地元の食材などが考えられると思います。その構成要素を提供する場としては、「地方」ではなく自然のなかで開催される「フェス」でも代替ができそうです。そうすると、音楽だけではなく自然をより楽しむことにフォーカスしたフェスティバルのあり方というのが検討できるかもしれません。

当社では、BPMというイベント&カフェスペースを運営しています。カフェとして社内外のさまざまな方に開放したコミュニティスペース的な事業でしたが、カフェ内で社内外のイベントなどを開催し大きな反響があったこともあり、カフェという空間が持つ価値を、空間(デザイン)、ファシリティ(機能)、ロケーション(位置)に分解し、イベントスペースとしてのレンタル事業をスタートさせました。このレンタル事業が現在BPMの売上の7割近くを占める主力事業にまで成長しています。

旅に出なくても
世界を広げていくために

具体と抽象を行き来する思考法を実践すると、普段とは異なる視点や目線で世の中を捉えられます。新しい発見や気づきを得られるという意味では、この思考法を取り入れるだけで、旅をする以上に自分の知見を広げられるのではないかと思っています。

NEW STANDARD社では、MI(マインドアイデンティティ)として「この世界は、もっと広いはずだ」というメッセージを掲げているのですが、世界が広いと気づくためのアプローチは旅だけではありません。旅に出なくても日常の物事の捉え方を変えるだけで、この世界は広いと気づけるはず。これを体現するために、具体と抽象を行き来する思考法を日常生活から実践しているわけです。

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